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白井家大集合!

 一体どうなっているのだろうか?

どのように見ても、ここは、森だった。

右を見ても、左を見ても、大自然万歳である。


「そうか……地球が本気を出して、草木が一気に芽吹いたのか」


 地球凄い!


「なんでそうなるんじゃい!」


「痛い!」


義父の容赦ない突っ込みが、俺の頭を刺激した。

痛みがあるということは、夢ではないようだ。


「こ、これは、アレだ!先ほどの魔法によって、時空移動を果たしたのだふははがっげほっうぇっっっっ!」


「大丈夫ですかい」


どうやら興奮しすぎた所為で、咽こんだ義父の背中を優しくさすってやる。


 とはいえ、どうしたものか。


ここは、我が家の近所では断じてない。バイトに向かおうとして、原付の鍵を持ったのに、モノがなければ意味はない。いや、そんなの問題じゃあなかった。


「携帯は圏外か」


困った時の110番通報など繋がらなければ無意味なものだ。

繋がったところで、外がジャングルです、助けて!

うん、意味がわからんね。

 

「おお、おお、おおおおーーーー」

ドタバタドタバタと、慌しい足音と、あ行5が家の中から聞こえてくる。


「お義兄様!お義兄ちゃん!お義兄ちゃまーーーーー!」


背後から、騒々しい気配を感じ取り、俺は振り返りながら、義父を盾にした。

某格闘ゲームのお相撲さんの技よろしく、頭からダイブしてくる何かを目にとどめる。

 

「おごふぅぅ!」


「うわぁ」


 男の大事な勲章がいかれちまったようだ。義父は股間を支えながら、白目を剥いて崩れ落ちた。


「どうして避けるのよ!私たち一生の愛を誓った二人でしょ!」


 目に涙をためて、上目遣い。肩をふるふると震わせて、唇を噛み締める。両手を顎の下に乗せて、ぶりっ子なポージング。


「真央……そのポーズは狙いすぎだと思うぞ。後、誰が愛を誓っただよ」

てへぺろ、などと、あっけらかんに言い放つは、俺の家族である義妹こと白井真央であった。


「部屋でテレビ見てたら地震がきて、揺れているコップにお茶を注いで零さないようにできるかを挑戦してたの」


「いや、避難しろよ」


現状整理のため、俺と真央と義父は、リビングにて家族会議の真っ最中である。


「地震が収まった後、何気なくテレビを見てたら、何か変な番組が始まっててさ」


「変な番組?」


「そうそう」

 

 真央は、液晶テレビに向けて、リモコンをかざす。

ノイズが画面に薄く走り、徐々に鮮明な映像へと変わる。


『本日の迷宮情報、ラビーラビーラビリンスのお時間でーす!』

  

ウサ耳バニーガールの格好をした金髪の女性が、迷宮情報なるものを語り始めている。

 

「うーん、なんだこの変な番組」


「バニーって年齢じゃないよね。ナースならありか」

 

「真央は少し黙ろうか」

おっさんの思考回路である。本当に14歳だろうか。

 

「で、電気や電波は繋がっているということであれば、空間移動の類なのだろうか……」


「会話できるくらい回復してよかったよ」  


そういえば、ジャングルの中なのに、リビングの蛍光灯は見事に煌々と明かりを放っている。


 電気は切れていない。ためしに、冷蔵庫を覗いてみる。バイトから帰ってきて食べようと思っていたプリンがなかった。三個で一つ安価なものであるが、しっかりと俺の名前を書いておいたはずであった。全部ない。


 白井家のルール、自分のものには名前を書いておくこと。


「おい誰だ俺のプリ―――」


「今はそういう場合じゃないでしょう!」

 ぴしゃりと、強い口調で真央が言う。

 

「空間移動だか時空移動だかわかんないけど、兎に角、今は、この場所の情報を集めることが先決なんじゃあないのかな!」


「そうだぞ真央の言うとおりだ!」

 

「こいつら……」


 確かに、情報を得ることが先決であると思うが、こんな時ばかり協力しやがって。


「冷蔵庫の食べ物も冷えてるし、電気は切れてないみたいだ……、手分けして変わったことがないか調べてみようか」


「らじゃー!」


「良かろう!」


 意気揚々と家捜しよろしく、散っていく二人。


 『迷宮には、沢山のアイテムや装備品などが落ちています。

  でも、過信は禁物です。数々の罠や凶悪な魔物は蔓延る危険もあるのですから……』


 金髪バニーなお姉さんは、一礼して、続いてはーと繋げる中、異変は起こった。

ぶつり。と、テレビ画面は消えて、電気も消える。


「うわー停電ー!」

 

「ううううろたえるなかれ!懐中電灯どこだーーー!」


「皆、ちょっと落ち着け、今、明かり点け―――」


 携帯のライトをONにする。リビングの扉へ向けて、光を当てると、そこには、ゆらりと女性が立っていた。


「ぎゃああああああ!」


「五月蝿い」


ごつんっっと、小気味の良い音が頭に響く。ものすごく痛い。


「ブレーカーあげてきなさい」


「あ、朱莉義姉さん、居たんだ」


ところどころ乱雑にはねている長髪をぐしゃぐしゃ掻きながら、白井家最後の一人、白井朱莉は、不機嫌な様子で俺に命令した。




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