なんだかとってもジャングル
(旧題ダンジョンウォーカー)
※以前に、投稿していた小説を改稿しながら、投稿していきたいと思います。
幼い頃に両親は他界し、回りまわって、親戚連中の中でも変わり者とされる家に引き取られた。
その家は、魔法を研究しているおっさんが居た。
科学の発展した現代にまさかなファンタジー。
しかし、まだ幼い子供だった俺は、おっさんの世話になるしかなかった。
そもそも、それが、間違いの始まりだったのではないかと思うわけだ。
いつか知れない現代のどこか。
「定夫よ。この魔方陣の中心に立ってくれ」
「俺、これからバイト」
くるくると指の先で、原付の鍵を回す。
急いでいることをアピールしてのことであるが、声の主は、気にも解してはいなかった。
「ええい!早く立て!」
怒りの声だ。というか、いつも怒っているような気さえする。
兎に角、目の前の存在は、変人だった。むしろ、病人ではないだろうか。
その双眸はやせすぎて、骸骨のように不気味、ぎらぎらとした目つきで俺を睨みつけてくるが、どうにもこうにも、恐怖感はない。なぜならば、残念なことに身内であるからだ。
義父である白井克は、何故か、医者でもないのに白衣を身にまとい、片手には無駄に真っ黒な装丁の本を手に持っている。職業、無職。自称、魔法使いとか言っちゃってるが、頭がちょっと逝っちゃってるから、仕方がないね。でも、わりと嫌いではない。
正し、年甲斐もなく、足を踏み鳴らして地団駄するのはやめてほしいところだ。
「わかったよ」
俺は言われたとおりに、変な模様の魔方陣に乗った。
「よし!では、呪文を唱えるぞ!」
何度となく繰り返されたやりとりである。結局、現代には魔法なんてものはない。
「祖は、古き神々の祖となりし者、祖は聖身となり数多を統べる者……」
ぶつぶつぶつぶつ。と、義父は、呪文を諳んじる。
中二病レベルなんてものがあったのならば、限界まで突破しているんじゃあないかって思う。
「はぁ、そろそろいいか――うわっ!」
「ぶつぶつぶつぶつぶつ」
地面が揺れる。というよりも、建物が揺れている。
まさか、本当に魔法が!!!!???
義父は全く動じては居ない。これが魔法であるのだといわないばかりに、呪文を唱え続ける。
「開け、時空の扉!」
俺の携帯から緊急地震速報の警告が鳴り響く。ちょっと遅いんじゃあないだろうか。
地震の揺れは、徐々に緩やかになり、やがておさまった。
「…………もういいかな」
「うん、いってらっしゃい」
がくりと、肩を落とした義父に見送られて、俺は、玄関の扉を開けた。
「は?」
鬱蒼と茂る森の中、空は青く澄んで、雲は自由に形をかえて、綺麗だなあ。
「は?」
地面には、名もなき草花が生い茂る。遠くからぎゃあぎゃあと、鳥獣の鳴き声が響いていたりいして、なんだかとってもジャングル。
「はあああああああああああああああ!?」
とりあえず、叫ぶ他はなかったという。