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第7話 ギルドの異変

主人公の部下である十柱の名前を変更しました。

 かつての世界「創世アクシス・ムンディ・オンライン」の中でも空間異動の能力は存在し、A地点を始点としB地点を終点とするゲートを作り出す魔法の一つであり、ワープポータルと呼ばれていた。ゲート開放時間は決められており、その時間内であれば複数名が移動できる能力だったが、問題点がいくつかあり、術者が一度行った場所でありかつ、座標を記録したポイントであること。また、術者が覚えられる目的地はレベル依存で最大5つまでしか記録できないという欠点があった。



 かつて世界が「創世アクシス・ムンディ・オンライン」というゲームであった頃にも、徒歩や動物、乗り物で移動する以外に空間移動を行う手段があった。

 それは魔法の一つであり、特定の始点と終点の空間を接続して、一定時間という条件がつくものの、移動できる通路を造り出すものだった。これを使用することにより、通常の移動手段だと何日もかかるような行程を一瞬で、しかもモンスターと出会うことなく安全に移動することができた。ただし、移動できるのは術者が行ったことのある場所という制限があり、ポータル(入り口)を作るためには、その移動距離に応じて、ジェムと呼ばれる店売りアイテムを消費しなければならなかった。更に魔法であることから使える職が決まっている事から、魔法職以外の者は通称:ポタ屋にお金を支払って

移動させて貰う形を取るしかなく、好きな時に何処にでも行けるという便利さは皆無だった。

 中には「闇ポタ屋」といわれる者もいて、新参のプレイヤーを高難度ダンジョンへのポータルを通常の街への移動ポータルと詐称し、PKモドキを行うこともあったことを思い出した。


 今、レイフェルが使用した空間移動能力は、そういった移動条件や使用アイテムなど関係なく、任意の場所へと移動できるテレポートに近い能力だった。方法としては、まずは視点を俯瞰モードに切替え、遥か上空からの視点に切り替えた後、行きたい場所を念じればそこへと移動できるという便利なものだった。


 とはいえ、今回の空間移動は、ゲームで経験した転移よりずいぶんと時間がかかったように感じた。


 はて、気のせいだろうか……? 



 そんな疑念はともかく、今、千数百メートルの高さで浮遊している。地平はなだらかな曲線を描き、続いているのが分かる。


 「創世アクシス・ムンディ・オンライン」には、プレイヤーに飛行能力は与えられていない。気球や飛行船といった乗り物を使うか、鳥や竜系統のモンスターをてなづけて飛ぶしかなかった。もちろん、初期キャラクター設定画面で飛行能力を持つ種族を選択すれば自らの羽根で飛ぶことができたのではあるけれども。 


 ギルド城から半径50キロのエリアについては飛行禁止の制限がかけられているため、鳥一羽すら飛んでいない。本来なら、いかなる生物も、もちろんギルドメンバーですら上空を飛ぶことができないのだが、造物主の力を得たせいか、その制限は全く効果を発揮していない。


 眼下には巨大なギルド城が見える。そして、その三方には広大な平原と深い森林が広がり、残り一方は急峻な山が存している。

 確かギルド領土は2000平方キロほどあったはずで、わかりやすくいえば大阪府程度の面積だと聞いている。領土は10のブロックに分割され、ギルド配下となる守護者とそれに属する種族達が管理運営をしつつ生活をしている。


「見た限り、異常は無さそうだな」

 空中での浮遊感を楽しみつつ、そして領土の状況を確認した彼は満足そうに頷いた。そして状況を確認するために連絡をとる。

「さて……ギャリソン」


「はっ……レイフェル様」

 少し間があったが、頭の中に声が聞こえてくる感覚。音声伝達では無く、直接、脳に語りかけてこられている感覚だ。……いわゆる念話。テレパシーといったたぐいの能力だ。世界に通信器具が無いわけではない。プレイヤー達はメールや音声チャットで連絡は取り合えるようになっている。しかし、NPCキャラクターや配下の生物たちとの交信についての機械は存在しない。よって、能力がある者については、テレパシーによる通信。それができない者へは直接もしくは使者を通じて連絡するしかない。

 ギャリソンは能力においてはプレイヤーに近いレベルであることから、テレパシーにより遠距離通信が可能となっているのだった。


「どうした? みんな集まったか? 」

 と、質問する。


「いえ、そのですね」

 彼の回答はいつもの彼らしくなく、要領を得ないものだった。言うべきか言わざるべきかを煩慮しているようにさえ思える。


「ギャリソン」

 レイフェルは失跡するような口調になる。

「お前の役目をきちんと認識するんだ。……お前は僕にありのままを伝えればいい。何か気にかかることがあるのかもしれないが、得られた情報は全て僕に伝えてくれ。それが執事たるお前の責務だろう? 問題であるかどうかの判断は僕に任せてくれればいい」


「は! 失礼しました。余計な事を考えてしまい申し訳ありません」

 姿は見えないが、恐らく深々と頭を下げている執事の姿が思い浮かぶ。


「分かってくれればいい。では、ギャリソン、状況を伝えてくれ」


「かしこまりました。先ほど十柱の方々に集合の連絡をするために城内を回ったのですが……リリウム様とシャプシュ様、そしてシバルバー様のお姿は確認できたのですが、残りの7名のお姿はどこにもありませんでした。エリアリストも確認しましたが、城内および領地内には見あたりません」


「なんだと? 」

 驚愕がレイフェルに走る。彼らのギルドの守護者として配備している十柱と呼ばれる面々は常にギルド城の防衛を最優先とし、その合間に領土内のそれぞれ与えたエリアを運営するように設定されていた。つまり、ギルドメンバーよりの指示がなければギルドエリアから出ることはできないはずであり、そもそもそういった事を考える筈がないのである。

 それに、彼ら、全員女性なので彼女らとなるけれど、は、それぞれギルドとの契約を結んでいるわけであり、ギルドによる拘束が為されている。その繋がりがあるかぎり、仮にゲーム世界終了による世界の激変により、自分の意志を持ったとしても、その契約により自由に行動はできないはずなのだ。

 しかし、今、彼らは居るべき場所にいない。

「そんなことがありえるのか? 」

 レイフェルは慌ててメニュー画面を起動し、自身以外の名前が暗く表示されたギルドメンバーリストの別シートにある守護者たちのページを表示させる。


 そこには、ギルド守護者の名前があるものの名前がアクティブ化しているのは、10人の名前が表示されているものリリウムとシャプシュそしてシバルバーの三名の名前だけが光っており、残り7人については、名前がギルドメンバーのように暗く表示されているだけだ。

 ギルドメンバーの表示については、サーバにログインしていない状態を示すのであるが、NPCについては、探索エリア内には不在ということになる。

 名前が無くなっているわけではないから、死んだりキャラクターそのものが消失しているわけではないので少し安心した。


 彼らは様々なレイドクエストにより獲得した貴重なキャラクター達であり、ギルドメンバー達との思い出と同義の存在であった。それが何らかの自由で消失したなんて事があったら、みんなに申し訳ない。そんな思いが強かった。


「確かに、いなくなっているな」


「一体、何が起こったのでしょうか。私にはまるで想像がつきません」

 動揺を隠せないギャリソン。


「……落ち着け。今はお互いが知り得た情報を共有することが大事だ。僕は今から城に戻る。お前も十柱の三人を連れて玉座の間に集まってくれ」

 レイフェルは指示を伝えると一気に降下する。


 世界に何が起こっているのか。


 ギルドに何が起こっているのか。


 NPC達はどうなったのか。


 様々な疑問が彼の脳裏を駆けめぐるのであった。


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