煉獄山へ
一年が経った。
なかなか憧れてたニート生活を抜けだせずに、トスカーナ村でゴロゴロしていた。
いや、ただずっとゴロゴロしていたわけじゃない。
いちおこの世界の事について勉強していたのだ。
だって旅に出るならそれ相応の準備ってもんがいるじゃない。それだよ。
まぁうだうだ言って一年も過ごしてしまったので、ようやく重い腰を上げて煉獄山へと向かう事にした。
この世界には魔獣と呼ばれる好戦的な動物がいる。
魔法を使える動物を魔獣と呼び、魔法は使えないが肉体的にすげーやつが魔物と呼ばれている。
そして今目の前に、ラットラビットが5匹いる。村を出て5分で出会ってしまった。
まぁ見かけはネズミとウサギの合成獣みたいな感じで、
こいつらは単体ではそれほど強くないものの、スリープという相手を眠らせる魔法を使える。
スリープで敵が寝ているスキに食っちゃうのだ。サイズはウサギ程度だが噛まれればもちろん痛い。
こんなすげーエンカウント率だとは思っていなかったので、少しビックリした。
「ファイアアロー!!」
俺が唯一使える攻撃魔法の「ファイアアロー」をぶっ放した。
弓の矢の形をした火の玉が飛ぶ魔法だ。
ラットラビットが奇声を上げると同時に燃え上がった。
周りのラットラビットは恐れをなしてか逃げ出していく。
ラットラビットは最初は好戦的だが、敵が強いとすぐに逃げる臆病者だ。
「クソ。覚えてろこのブスハゲが!!」
ぐぅ。
正確すぎて反論ができないままラットラビットは逃げていった。
「俺様の美しい剣技でぶっ殺してやったものを惜しいことをした。」
髪を掻き上げるものの、そこには空間しかなかった。
やるべき事を思い出す。大罪を清めるんだったなと。
煉獄山へは、大体歩いて3日程度の距離だと聞いている。
名前からは想像できないが、煉獄山は煉獄地域で一番でかい街で、
なんでも7つの層からできている山の周りに街を作っちゃったそうだ。
大罪毎に層が分かれているのは、言われずとも想像がついた。
その全部の層を僕は行くんでしょ。知ってますよ。
だって僕全部コンプリートしてるんだもん♪
出だしとは裏腹に魔獣や魔物に出会わずに煉獄山へついた。
最初のエンカウント率の高さはなんだったんだろうと思う。
見上げれば雲まで届く高さを誇る煉獄山がある。
でけぇ。これはでかすぎる。初めてみたGカップ程の衝撃を受けた。
早速煉獄山と言われる街に入ってみる。
「あっそこのブスさん。ブスの罪はこちらですよ。」
綺麗なお姉さんが声をかけてきた。
ブスだの、ハゲだの言われてきた俺にとっては、
特に気にも留めないレベルのあいさつと言える。
「あっはい。ブスの罪を清めにきました。」
「ええ。見ればわかるわ。なかなかのブスの大罪をお持ちね。
煉獄山へは初めてですか?」
「ええ。今まで罪を清めた事がなかったので初めてです。」
「ではまずはギルド登録をお願いします。」
「えっ!?ギルド?」
「はい。大罪を清めるにはまずはギルド登録をして頂いてます。
そしてギルドから出ているクエストをクリアして頂き、大僧侶様にて大罪を清めてもらいます。」
あーそんな面倒な感じなんだ。
まぁ巡礼みたいなもんの延長的な感じで受け止めておけばいいのかな。
「わかりました。ではギルド登録をお願いします。」
「はい。ではあちらに建物にあるギルドブスにて登録をお願いしますね。」
「わ、わかりました。ギルドに行って登録してきます。」
ここでできねーのかよ。めんどくせーな。
ギルドの看板にはでかでかと『ギルドブス』と書かれている。
ここに入るのはなかなか恥ずかしいと思いながらも、来ているやつはみんなブスなんだしいっかと思い、
ギルドの扉を開けた。
やはりと言うべきか、周りには世界中のブスがいた。
それも色んな種族のブスだ。特に獣族のブスは醜い。
人族のブスはまだマシだと思えたが、向こうもそう思っているかもしれないな。ここは何も言うまい。
受付っぽい人は、恐らくあの女の人だろう。
一際その美しさを醸しだしている。いや、周りがブス過ぎて普通の人がそう思えるのかもしれないな。
「あの〜ブスの大罪を清めにきました。まずはギルド登録が必要と聞いたのですが。」
「あっではこちらに、必要事項の記入をお願いします。
記入後にブスレベルを計らせてもらいますね。」
ブスレベル?そんなレベルがあったのか。
昔からブスブス言われてきたからどんなレベルか知るのが怖いな。。。
必要事項を書き終えたので、もう一度美人だと思うお姉さんに話しかける。
「あの、記入終わりました。」
「ありがとうございます。では、ブスレベルチェックを行いますね。」
そう言うと、見たこともない機械を俺の顔に向ける。
パシャ。という音の後に、紙が出てくる。
「えーと、ダンテさんのブスレベルはlv5ですね。」
「lv5ですか。で、どうしたらいいんですか?」
「lv5ですと、初級クエストで十分ですので、あちらにある掲示板から好きなクエストを選んでください。
クエストが完了すればもう一度ギルドに来てください。報酬とある一定値まで行けば大罪を清める事ができます。」
あれか。クエストをある一定までクリアしたらランクが上がる要領で大罪を清めるイベントに進めるって事だな。
なんとなくわかるぜその辺は。
「わかりました。説明ありがとうございました。」
お礼を言い終わると早速掲示板を見る。
lv5のブス用のクエストはいくつかあるみたいだ。
・lv1:猫の捜索
・lv3:害虫退治(酒場)
・lv5:スネークワームの討伐
地道にlv1のクエストを5回繰り返してもいいし、いきなりlv5のクエストをクリアしてもいいのか。
まどろっこしいのも嫌なので、lv5のクエストで行くか。