第5話:魔
日も暮れ始めた頃、村外れの丘で慶は一人落ち込んでいた。
「オレ、才能ねぇなぁ・・」
あの後すぐにSGに挑戦した慶だったが補助用のリングを装着してもSGのエネルギー源であるルーンを集束することすらできなかった。
「そうか集束できなかったか」
「はい」
教会の一室でオーシャンは茶菓子を食べながらリーシャの話を聞いていた。
「教主さま、SGも知らない何て彼は本当にただの普通の旅人なんですか?」
「あぁそうだ。カズーの森で遭難している所をアクヲに発見されたただの旅人だ」
ごまかそうとするオーシャンだが違和感たっぷりの顔にリーシャが騙されるはずがなかった。
「でも慶君は自分は異世界から来たと言っていましたよ」
「な、あのバカ者簡単に自分の素性を話よって」
「教主さまは彼の言っている事は本当だと思いますか?」
オーシャンは本棚から一冊の古い本を取り出した。表紙には何も書かれていないが背表紙に小さく
「シュトラー」と、書かれている。
「リーシャも知っているだろう。これはこの世界で最高の預言書と言われるシュトラーの書記だ」
「え!?でも・・シュトラーの書記は世界立図書館に保管してあるはず。どうしてここに?」
「それはどうでもいいことだろ?本題はその書記の最後の方に書かれている少年の話しだ」
リーシャがパラパラとめくっていくと確かに少年についての記述がある。そこに書かれた内容はまさに慶ことであった。
「信じるしかあるまい。」
その時、村の方で突然、爆発音が響いた。
「なんだ!?」
リーシャ達が窓から村を見ると二体の魔獣の姿が見える。
「私行ってきます!」
オーシャンが止めるのも聞かずSGを持ってリーシャが向かったのと同じ頃、まだ丘で落ち込んでいた慶が村の方を見ると、日も完全に落ち沢山の星が瞬く夜空を照らすようにあちこちから火の手が上がっている
「何が起こったんだ!?」
慶が村に戻ると村人達が我先に慶が今来た丘の方へと避難していく。
村の中央にある噴水にたどり着いた慶は自分の眼を疑った。
これがオーシャンの言っていた魔なのかと理解した。