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Destiny Gate  作者: エア
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第3話:Destiny Gate

突然、電灯をつけたような眩しさに眼が覚めた。


見回すと、そこは際限なく続くクリーム色一色に染まる空間だった。


自分もクリーム色の椅子に座っている。天井も壁も無く、あると確実に分かるのは床だけであった。

「オレは、死んだのか・・?」

今いる場所が自分が予想していた死後の世界とあまりにも違うので自分がどうなったのか、本当に死んだのかわからなくなっている。

「アナタは死んだのですよ」


急に真後ろから声がしたので、驚き振り返ると、一人の60代位の老人が立っていた。

グレーがかった長い白髪を後で束ね、同じくグレーの髭を蓄えた老人。

この全てがクリーム色一色の空間に彼だけは黒いスーツを着ていた。


「神谷慶様ですね。私はプフといいます。早速ですが後がつかえておりますので決めて頂きたいと思います。」


「何を、ですか?」


いつの間にか椅子と慶の体がプフの方へと移動していた。


「決まっているではありませんか。アナタは死人だ。死人が選ぶことが出来るのはこれからのアナタの逝き先だけ、でごさいますよ」


椅子に座ったまま慶は下を俯いている。

「どうかなさいましたか?」


「いや、何でもないです・・」

慶の脳裏にあったのは自分をかばって死んだ幼なじみの姿だった。

(結局アイツにもらった命たいして生きる前に失くしちまったな)


パチンッ


プフの指を鳴らした音が少し児玉してから、地面がカタカタと徐々に揺れ始め最高潮に達した時、地面から巨大な二枚のそれぞれ黒と白の扉が現れた。


目の前に突如現れた二枚の巨大な扉ビビって椅子からずり落ちた慶にプフが真剣な眼をしながら話し始める。

「さぁ、この二枚の扉がそれぞれ白が天国、黒が地国につながっており天国では次の肉体に宿るべく何不自由なくくらせ、地国では魂の管理者になるべく厳しい修業を経て死神となることができます。す。どちらを選択なさいますか?」


プフの話しの間慶はある一つのことを考え込んでいた。

「生き返るってことは出来ないんですか・・?」


「無理ですな。あなたの体はすでにこの世から消えております。魂が無事でも体が無ければ生き返るなど到底不可能でございます」


「頼みますよ!オレは、オレは死ぬわけにはいかないんだよ!!」


興奮して掴みかかってきた慶をプフは冷ややかな眼で見下ろしていた。

「見苦しいですな・・」


一撃、どうやったのかは不明だが慶でも見切れないスピードで腹を穿たれ、体はクリーム色の床へと倒れ込んだ。

「早めに決めて下さいませ、神谷慶様」


内臓に受けたダメージに慶は悶絶していた。頭と違い、内臓へのダメージは意識がハッキリとしている分その痛みを直に噛み締めなければならない。


「はっ、、ハッ・・ハッ」


呼吸することすら困難な倒れ込んだ慶の視線の先に通常サイズの古ぼけた一枚の扉が見えた。(なんだ・・アレ?)

その扉が薄く開き、中から一人の少年が顔を出し慶を見ながらゆっくりと口を動かした。


「待ってるゼ?少年」


確かにそう呟いたように見えた。

少年はニヤリと笑うと扉の向こうへと戻っていった。


「あの扉が見えるのですか?」プフが驚いた顔で慶を見ている。

返事は困難なので軽く頷いた。プフは失敬と一言いうと慶の胸ポケットを探り始め、慶の身に覚えのない一本の鍵を取り出した。

「雌雄同体の龍のマークが入ったカギ、アナタはスカウトにあったのですね。ならあの扉が見えるのも道理。」


プフが片手を慶にかざすと先程までの内臓の痛みがとれ、同時に体が浮き、元の立ちの体勢へと直してくれた。

「早速説明いたしましょうかあの扉のことを」

またプフの指を鳴らす音が児玉したかと思うと慶とプフはいつの間にかその古ぼけた扉の前へと移動していた。

もしかしたら移動したのは扉の方かもしれないがそれはわからないことだ。

「この扉の名前はDestiny Gateと、そう呼ばれております。この扉はアナタのようにカギを持つ者のみが使用可能で、もし扉の先にある異世界でその雌雄同体の龍の紋章が入ったカギで開けられる扉を見つけることができたなら願いが一つ叶うというものです」


「本当ですか!?」

自然に慶のテンションも上がる。願いが一つ叶うという事は生き返ることも叶うということだ。

「ただし、扉の先にどのような世界が広がっているかはまるでわかりません。獣ばかりの世界や荒廃した何もない世界等、様々でございます」


「それでも、行きます。オレは死ぬわけにはいかないから」


(決意は固い、ようですな。それに、久しい。このようは覇気をもつ魂は)

プフの顔から自然に笑みが零れた。年甲斐もなく胸が高鳴る自分が可笑しかったのだ。


慶のカギを指差してプフは言った。

「そのカギで扉を開けるのです。そうすれば向こうの世界へと逝けます」


慶が扉を開けると、その先は闇だった。何もない闇だけ。

「神谷様、これをお持ち下さい」

プフから渡されたのは独特の狼のような紋章が入ったカギだ。

「これは・・?」


「そのうち、時が来たらお教えいたします。では、よい旅を」

プフが一礼すると慶の体は扉へと飲み込まれるように吸い込まれ、扉はバタンッと勢いよく閉まった。


「非常に興味深い少年ですな。ローゼン様」

いつの間にかプフの横にたっているローゼンと呼ばれているのはあの公園で慶に助けてもらった謎の老人だ。

「まぁな、久しぶりにワシの眼にかなった奴だからな」


「しかし、Destiny Gateはどんな世界であろうと過酷、前にこの扉から人が帰ってきたのは二百年程前ですか、その前はさらに二百年。はたしてあの少年はどうなるか・・」


「見物だろ?」

ローゼンは楽しそうに笑う。

その時ローゼンからブーブーとバイブの音がして携帯電話を取り出した。

「これはまたハイテクな物を持っておりますな」


「あぁ、便利なんじゃがどこに居てもすぐに捕まっちまう。休む暇もありゃせんよ」


「また呼び出しですか?」


「ちょっくら行ってくる」


「全神にはよろしく言っておいて下さい」

ローゼンは苦笑いするとスッと跡形もなく消えた。

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