第2話:予言的中
翌日早朝、
慶の部屋では目覚まし時計がけたたましい音を立てながらかれこれ3分程鳴りまくり続けている。
「朝、か・・グハッ!?」
目覚まし時計を切り、起き上がろうとした瞬間全身を激痛が走った。
「き、筋肉痛か・・」
人助けとはいえ門限破りに変わりはなく、鉄拳の変わりに親父にしごかれにしごかれまくった慶の体は全身筋肉痛になり少し動いただけでも激痛が走るような状態だ。
「クソ、親父にはしごかれるし、助けたホームレスには死ぬとか言われるし昨日は散々だぜ」
慶が制服に着替えようと床をはいつくばりながら移動ていると部屋のドアが勢いよく開かれ、にこやかな笑顔でありながらそれとは正反対の怒気に満ちた母親が慶の目の前に立ちはだかった。
「何をやっているの慶?あなたただでさえ出席日数足りなくて留年しそうなんだから早く行きなさい!!」
爽やかな秋晴れの朝から母親に怒鳴り散らされ、朝飯も食わずに家を叩き出された慶は重度の筋肉痛と闘いながら同じ学校の生徒が登校する中を親の文句を垂れながら歩いていた。
「ぜってぇ倒すあのクソ両親ども、帰ったらボコす・・」
そんな乱暴な言葉を吐きながらも相手は現役空手師範に母親は母親でかつては女三四郎と呼ばれた程の猛者である。
「いつか倒す、いつか・・」
考えただけで弱気になってしまった慶の眼の前に昨日の公園が見え始めた。
『明日オマエは死ぬ!!』
まるで気にしてなかった老人の言葉が頭の中をぐるぐると回り始める。
「見てくか」
慶の足はいつもの通学路ではなく公園へと向かっていった。
昨日老人がいた場所、公園の中を少し見て回ったが当たり前に姿は見当たらなかった。
(何ナーバスになってんだか、気にする必要もないか)
学校へと向かい始めた慶だが老人の戯言に振り回され、自分自身に呆れる一方で、この頃から心に引っ掛かる何か黒い不安が取れない感じが何とも気持ち悪かった。
その日の学校も実に平和だった。
いつも通り平穏に最後の授業も終わり、平穏に時間は流れる。
「おい、どうしたんだよ慶?今日いつもより調子悪くない?」
クラスメートの一人に声をかけられた慶の顔は青ざめ気味になっていた。
理由をあえて言葉にするなら、『感』としか言いようはないが確かな気配を感じる。動物が災害を事前に察知して逃げ出すように、慶は何かがくるのを察知している。
そして昨日の老人の言葉。
慶は思う。
(オレに近づいて来ているのは『死』だ。)と、
家に、自分の部屋に帰ろうと思い、全校生徒の中で一番早く学校をでた。
いつもの道を通り、あの公園を通り、家はすぐそこにある。
(着いたか、)
その時、耳を裂くようなブレーキ音を聞いて慶の意識はいったん途切れた。
次のシーン。
気がつくと眼の前には地獄絵図が広がっていた。
数台の車がひしゃげて折り重なりあい、人々が苦しみの声を上げている。
(何だコレ・・)
そしてあることに気付く。
(何も感じない)
不自然な程何も感じなかった。下をふと見たことにより謎は解ける。
自分の下に自分が転がっていた。血を流してボロボロになりながら。
一瞬で全てを理解した。
「う、うぁぁぁぁぁぁ!!!」生者の世界で誰にも聞こえない叫び声を上げた哀れな魂は一陣の風に吹かれて跡形もなく消え去った。