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Destiny Gate  作者: エア
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第16話:スリ兼オオカミ少年


「ホントに心配したんだからね!」


「すんません!!」


潤んだ眼をしたリーシャに慶は鹿威しのようにただただ頭を下げ続けていた。


ここはアリアとアイスナルキス山脈の丁度中間点にある街、クレージュタウン。


慶が飛行船から落ちた後、折れてなくなっている手摺りを見てすぐさま状況を読み込んだリーシャは、パニクったまま飛行船を止めようと機関室に侵入したりそのまま飛び降りようとしたり、ついには補給地点であるこの街で強制下船。


アイスナルキス山脈に単身乗り込もうとした時、下山して来た慶に偶然出会わなければ、ケータイもないこの世界。


一生会うこともなかったかもしれない。



「まぁ機嫌なおしてさ、街見物と行こうぜ」


「知らない!慶一人で行けば!?人がこんなに心配してたのに私の苦労を聞いて笑うなんてヒドい!」


機関室で大騒ぎに加え、強制途中下船なんて聞いた日には腹筋がよじ切れる程笑った事を若干後悔していた慶。


「さ〜よってらっしゃい見てらっしゃい!世にも珍しい喋るネコだよ〜」


妙な呼び込みにいまだ腹を立てているリーシャを連れて見に行って見ると、一匹の黒猫が鳥籠に入れられ怯えた表情で周りに群がる人々を威嚇している。


「さぁこの黒猫、ただのネコじゃない!なんと魔物でもないのに人の言葉を喋るんだ!」


「ホントなのかよ〜!?」


誰が言ったかわからないヤジにネコの持ち主の商人は待ってましたと言わんばかりのニヤケ顔で籠に手を突っ込むと、嫌がるネコを捕まえ強制的にその目を見開かせる。


「これが証拠だ。どっちの目も変色していないだろ〜?」



それを見ていてリーシャは突然振り向くと慶の袖を引っ張って群集を抜け、目的もないのに歩きだした。


去り際、そのネコがかすれ声で一言、タスケテと言ったのが妙に頭に残った。


「どうしたんだよリーシャ?」


質問にリーシャは静かな怒りを込めて答える。


「あれ、獣化病の人だよ」


「獣化病?」




獣化病


ルーンによる病気の一つと考えられているが原因は全く不明。

発症すると全身が毛に覆われ、尻尾、耳、顔、体の各部位の順番で次々と獣化し始め、最短2ヶ月で完全な獣になってしまい、それに伴い知能も獣じみてくる大病だ。


「あのネコ、目が変色してオッドアイになってなかった。つまり、獣化病でネコになっちゃった人。それなのにあんな見せ物みたいにして、耐えられないの」


「ならあんな商人ボコッて止めさせればいいじゃん」


「獣化病患者は大概奴隷登録を受けてるから助けても無駄なの。すぐに見つけられて持ち主に返されちゃう」



リーシャの赤らんだ頬に、涙ぐんだ目、慶とのケンカでそうなっているのか、さっきのネコでそうなっているのか、



改めて辺りを見渡して見る。


華やかなメインストリートに、それを飾る多種多様な屋台。レンガ造りのオシャレな家が立ち並ぶ賑やかな街だが、所々でホームレスのような人々を見る。

しかも、子供から大人、老人まで分け隔てなく。


しばらく歩いて高い場所から見ると一目瞭然だった。


繁栄しているのはメインストリートに、それに隣接する数カ所だけ。それ以外は黒く色分けされたような雰囲気に包まれている。


「ここも前は大きくないけどいい街だったのにな…」


移り行く物に思いを馳せ、過ぎ去った過去を懐かしむ。




そんな慶達の耳にまた妙な物が聞こえてきた。


「大変だ〜ウェアウルフの大群が向かって来てるぞ〜!」


その少年は同じ事を何回も叫びながら街中を走り回っていた。

「ウェアウルフ!?」


「どうしたんだよリーシャ?」


「あの子が言ってる事がホントなら大変な事になる…。数によるけどウェアウルフは集団で行動する魔物で、かなり頭がいいから大群に襲われたらかなり危険だわ」


だが、周りの人間達の反応は冷ややかの一言。


チラッと見るのはまだいい方。大多数の人々が街の危機に見もせず、無視。

少年だけがその場で浮いていた。


「なんだここのヤツらは?自分達の街が危険だって言うのに反応なしかよ」


「うわ〜ん」

走り抜けてきた少年は慶に抱きつくと目を潤ませ、誰もが助けたくなるような全開の顔で助けを請うてきた。


「旅の人、僕等の街を助けて!このままじゃ、このままじゃこの街は…うわ〜ん」


「わかったボウズ任せとけ!オレ達が助けてやるからボウズは街中走り回ってこの事を伝えるんだいいな?」


「うん、わかった!」


走っていく少年を見送り、気合い充填走り出そうとする慶達を呼び止める声がする。

「アンタ達、持ち物改めた方がいいよ」


その青年風の男は意味ありげに笑っている。


「今そんな事してる暇は…、あ〜!!」


答えながら腰の辺りを弄って異変に気づいた。

腰のベルトに挿した大切なSGが無くなっているのだ。

「慶君まさか何処かにおとしたんじゃ」


顔が青ざめる慶に男は続けてこう告げた。

「違うよ、さっきいたろ?ウェアウルフがどうとか叫んでたガキが。アイツがスってったのさ」


「そんな、何故!?」


「アイツの名前はルチアーナ。ここら辺で有名なスリ兼狼少年さ」

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