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Re:Set  作者: SIM
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Re:ストーリー

 景人は走る。そして奔る。さらにハシル。そうしないと死んでしまうからだ。大した生きる理由もなく、ただ生きたいと願うゆえ、生きるために走っていた。

「…………ッ!」

 言葉を発することなく、ひたすらに走り回る。無駄な呼吸は肺への負担が大きい。極力静かに、されど全力で走る。

 ただでさえ死への恐怖に怯え、精神は疲弊している。無駄な疲労を残さぬよう頭を回転させる。

 景人は走る。生き残るために。

 この鬼ごっこを。

 どこのリアルな鬼ごっこだと言わんばかりのデスゲームに負けぬよう。

 あと少し。あと少しでこのゲームは終わる。さあ、走れ。

 背後から迫り来る鬼の気配を感じながら、走ったせいだけではない汗が背中を這いずり回る。

 後ろにばかり気を取られたせいか、足元の注意を怠り躓く。身体が傾き、地に手をつく。

 マズい……ッ!?

 鬼は容赦なく、その手に握られた棘が沢山の金棒を振り上げ、そして──


 ビイイィィィィィィィィィィィイイイイイイイイィィィィ────


 鬼の動きが止まり、その影が薄くなってゆく。そして、その気配が完全に消えた。

 景人は地べたに大の字に寝転がり、明け方の黒と白が入り混じった空を見上げる。

 ──生き残った。

 今なら、同じ苗字の翼くんの気持ちが分かる。

「……生きてるって、素晴らすぃぃー……」

 "リセットゲーム"第一ステージ《ファンタジー鬼ごっこ》終了。


  * * *


 《カミサマ》が告げた最初のゲーム内容、鬼ごっこ。本物の鬼を使えば良いと言い放った見た目は少女のそいつは、空想上にしか存在しないはずの鬼を召喚して見せた。角が生え、手には大きな鉄の棒を持った三メートルほどの巨人を……ステージの前、景人達の目の前に。


『今はまだあなた方を襲いません』


 それは本当で、景人達が悲鳴を挙げようと、鬼は身じろぎ一つ見せなかった。この場にいないのではないかと思わせるほど、その挙動は静かだった。


『では、鬼ごっこを始めましょう。皆さん、体育館の外にお逃げください。鬼ごっこ開始は一時間後。それまで遠くに逃げてくださいね?』


 一時間。それだけあればかなり遠くへ逃げられる。……はずなのだが、体育館の外がどうなっているのか。それを把握出来ていないため、一万人の約半数が体育館の外を見に動いた。そこには、見慣れた日本特有のビル群が。

 誰かがポツリと漏らした。


「ここ、《一斉神隠し》で消えた一万人の住んでた街だ……」


 細い少女の声だったが、はっきりと全員に聞こえた。

 ここで《一斉神隠し》という言葉を聞くとは思わなかった景人はなんとなく察する。

 俺が犯人の容疑にかけられたのと、この不可思議な状況は無関係じゃない。

 なんとなく。あくまでただの勘。

 《一斉神隠し》で消えた人数。一万人。

 今ここにいる人の数。少女の言葉を信じるならば、一万人。

 そして、その消えた一万人の住んでいた街が、目の前に存在している。

 これは何かの偶然か?

 まだ確証はないが……。

 と、そこで


「逃げなくていいんですか?まあ、まだ時間はありますけど」


 との言葉を受け、景人達は思い出したように行動を開始する。

 疑問は残るが、まずはこのふざけたゲームとやらを終わらせてからだ。

 と考え、景人も行動を開始しようとするが──


「ちょっと待てよ。細かいルールが何一つ決まってねえじゃねえか」


 ──まさか鬼ごっこのルールを知らない奴などいないだろう。

 だが、今回の場合勝手が違う。

 いつまであのゴツい鬼から逃げていればいいのか。

 鬼に捕まったら……予想はつくが、どうなってしまうのか。

 等のことが、何一つ宣託されていないのだ。


『ああ、そうでしたね。正直細かいルール決めとか苦手なんですけど……命懸けてんですし、ルール追及は当然か』


『それじゃ、ルールその一。鬼ごっこの時間は一時間。その間逃げ切れる事ができれば、第一ステージクリア』


『ルールその二。この街のどこへ逃げてもOK。どれだけ遠くへ逃げても、クリアすれば私がここまで戻しますんで、どぞ、どんどん遠くへお逃げください。……そのまま逃げようなんて思わない方が良いですよ?無駄ですから』


『ルールその三。鬼は……そうですね。最初は三匹で、一人捕まる度に鬼を一匹増やして行くことにしましょうか』


『質問はありますか?』


『──では、仕切り直して、今から一時間後にスタートさせていただきますね』


『名付けて、《ファンタジー鬼ごっこ》オープン!』


「「「パクりだ!?」」」


 そして一万人が街に足を踏み入れ……一時間後、鬼ごっこは始まった。


  * * *


 沢山の人間が死んだ。


 鬼の走る速さは、日本人の平均速度の少し上ほど。大して速くもない鬼が数多の人を死に追いやった原因は、恐怖心。

 異形の怪物に追われてみればわかる。その威圧感が。

 そのプレッシャーの前では、人類の如何に小さきか。

 その重圧の前に潰れる人が増え、同時に鬼も増えて行く。

 全ては悪い方へと傾き、街に鬼は溢れ……。

 街が広かったのが幸いした。所狭しと鬼が居座ることはなく、隙間が出来る程度の余裕はあった。

 だが、人間の心は追い詰められると、実際持てるはずの五割も余裕を持てない。

 さながら、猫と鼠。蛇と蛙。

 人類の天敵は、多すぎる……。

 鬼ごっこが終了し、体育館に戻された景人達。

 生存者数がアナウンスされた。


『第一ステージクリア人数、二千三人』


 八千人……それほどの数の人間が、たった一日で死んだ。

 本当に死んだのか?


『死にました』


 どこかから見てるんじゃないのか?


『天国か地獄から見てるんじゃないですか?』


 ……ふざけんなッ!


『大真面目ですよ?』


 などという不毛なやり取りなんかもした。

 本当に、八千人が一日で死んでしまった。

 ……なんだこれは。

 リセットゲーム?何がゲームだ。

 こんなの、ただの殺戮でしかない。

 わけもわからないまま放り込まれた大事件。その渦中にいる景人。

 このまま終わらせて良いのか。

 せめて……


「──なぁ、《カミサマ》」


『なんですか?』


「俺たちは、このゲームとやらを生き残ったら、なんでもリセットさせて貰えるんだよな?」


『はい、そうです』


「それは、俺達が送ったメールに書かれてあることなんだよな?」


『?まあ、そうなりますね』


「それを。そのリセットしたいモノ。……変更することって、出来るか?」


『…………何が望みです?』


 景人は主人公なんかではない。

 平凡な日々の中に生き、平凡な死を迎えるはずだった。

 それが、突然災害レベルの事件の犯人にされ、人殺しのゲームに参加させられ。

 わけがわからん。

 そうだよ、無かったことにすれば良いんだ。


「──このゲームの存在を、リセットする……ッ!!」


「そして、死んだ人達を生き返らせる!!」


 景人は主人公ではない。

 だが、平和を愛する、世界ゲームのエキストラではあった。


 ──目の前で幾つもの命が殺されて、自分だけのうのうと平凡に生きて行けるはずがねえだろ。

 エキストラは、主演がいてこそだ──ッ!!


 景人は決めた。

 取り戻すと。

 今日死んでしまった、八千人もの主役を。


 そして、自らの平和を。


 そのためにまずは、自分が主人公となる。


 それだけだ。

この物語の主人公は景人ではありません。

それは変わらないことです。

あくまでエキストラとして、しばらくの間、主人公不在の舞台で注目を集める役に務めるだけ。


はい、意味のわからないこと言ってますが、要するに景人は主人公じゃないけどしばらく主人公っぽいことやるってことです。

拙い文章力ながら、主人公っぽい景人を書けるよう精進致します。

……語彙力欲しー。


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