Re:チュートリアル①
────ゲームスタート
どこからかそんな声が聞こえ、少年は目を覚ました。
「……え、何、なになに、何が起きたの?」
真っ暗で何も見えない。上も下も判別がつかない空間に、少年──佐藤景人はいた。
何も見えない。何も聞こえない。ならば取り敢えずは、記憶の整理から始めよう。
少年は案外冷静で落ち着き払っていた。
さて、思い返してみようか、俺。
例のメールが届いた後、俺は返信し、その五分後にまた返信が届いた。確かそれは……。
差出人
宛先 佐藤 景人
件名 Re:Game Invetate
本文
"《一斉神隠し》に関する全てをリセットしたい"
承りました。あなたをゲームに招待します。
そう、こんなのだったはず。
それを見た直後からの記憶が抜け落ちている。とすれば、あのメールが原因で景人は妙なことに巻き込まれたということになる。
……何、この主人公みたいな展開。
思わず愚痴ってしまう。正直景人はそんなものは望んでいない。あくまで平和な暮らしを望んでいたのだ。
それがなんだ。急に大事件の犯人容疑をかけられ、変なメールが届き返信してみれば……そこで景人は気付く。
この状況に陥ったの、返信した俺が原因じゃね?
はい、その通りです。
「嘘だろぉぉ……?」
その事実に気づきゴロンと寝転がる。あ、床冷たくて気持ちいいな。とか呑気なこと考えてていいの?少年。
「ってか、床あるんだな」
視界がない中でそんなことを思う少年。やはりどこか呑気と言うか抜けてると言うか。単に冷静ってわけでもない気がする。
────ピリリリリッ……
「んぉ……?」
ふと、真っ暗な空間のどこかから電子音が響き渡る。
途端、真っ暗で何も見えなかった空間に光が宿る。
────ここからは私の出番だ。
* * *
『みなさん初めまして御機嫌ようさようなら』
「いきなり別れの挨拶かよ!?」
おっと失礼。
『では改めまして御機嫌よう。"リセットゲーム"ゲームマスター《カミサマ》です。あなた方は本日、とあるゲームの参加者としてここへ集められました』
出だしは順調。
と、次の句を紡ごうとしたところで
「おい、あなた方、って?」
例の少年から質問が来る。
ほほう、なるほど。人の話に耳を傾ける能力、及第点。
『目は慣れたのでは?もう明かりはついています。周りを見渡してみてはいかがでしょう』
私に言われてキョロキョロと首を振る少年……そして、「ひぇあっ!?」などという素っ頓狂な声を挙げる。
まあ、周りに沢山の人間がいたらそりゃあ、うん。
『一万人』
「へっ?」
『一万人。それが、この体育館に集められた人の数です』
「は、はぁ……」
現実味が湧かないのだろう。少年は言葉少なに唖然としている。
そして私は感嘆としている。
なぜって……他の約一万人が、未だ状況を把握出来ず呆然としている中、こうして言葉を発し、自らの疑問をぶつけてきたのだから。この少年は。
やはり、何か違う。
面白い。退屈しなさそうだ。
『あなた方の下に送られたゲームへの招待状。それに返信した者がここに集められています。この世の全てに生きる希望を見失った者……どうしようもない現実をどうにかすべく、リセットを願った者達のための最後のチャンス。それが"リセットゲーム"』
ここまで台本通り。本音が出そうでヒヤヒヤしちゃうよまったく。
さて、決め台詞を一つばっと──
『さあ──神様の居場所で足掻いてみせて?』
────チュートリアルスタート