Re:セーブ
広ーい広ーい、何もない空間で。だけど、何でもある空間で──
差出人
宛先 佐藤 景人
件名 Re:Game Invetate
本文
"《一斉神隠し》に関する全てをリセットしたい"
承りました。あなたをゲームに招待します。
差出人
宛先 小林 稚流
件名 Re:Game Invetate
本文
"今日、病院で起きた事をリセットしたい"
承りました。あなたをゲームに招待します。
このようなメールが、一人、また一人と送信されていく。
それを送っているのは、誰だろうか?
『少女』だった。
百五十センチメートルほどの小柄な身長。肩にかかるくらいの髪を手で払い、『少女』は笑う。
「皆面白いね……己の中で一番の絶望を与えられて、それをリセットしようとする。無かったことにしたいと考える。……最高。今回も退屈しなさそう」
例えば、佐藤景人。
彼は、目の前の平穏と自らの平凡さが崩れることを最も恐れている。──崩した。
例えば、小林稚流。
彼女は、自己犠牲によって成し得た願いと、友人が奪われることを最も恐れている。──奪った。
そうして絶望の淵に叩き込んで、そこから救い出すかのようなメールを送る。さながら、地獄からカンダタを救い出そうとする蜘蛛の糸の如く。
その糸に釣られて己の願いを打ち込んだ、ゲーム参加資格を持つ者たちに向かって、『少女』は言葉を投げかける。まだ届かないけれど。
「私の居場所で、足掻いてみせて?」
退屈しのぎに始めたこのゲーム……さあ、まずは何をして遊ぶ?
────ゲームスタート