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Re:Set  作者: SIM
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Re:ロード①

 イジメられっ子とイジメっ子というのはいつ、どの時代でも世に蔓延はびこるものである。

 弱いモノが存在れば強いモノが存在り、その逆もまた然り。

 だが、いつでも強いモノがイジメる側な訳ではない。

 強いモノが孤立し、団結した弱いモノ達に叩かれることもあるのだ。というか、そちらの場合の方がほとんどだろう。

 出る杭は打たれる。突出した才能の持ち主、努力の天才、そのようなモノ達は皆、少なからず周りに煙たがられたことがあるのではないだろうか。

 私も、まあ、その一人だった。

 いわゆる天才と呼ばれる人種に分類された私は、学校ではいつも孤立していた。そこまではいい。一人は慣れている。

 だが、邪魔されるのは慣れないな。

 人生というマラソンに数多の障害は付きものだ。だが、私のコースには障害が多すぎる。まともに走れないではないか。

 天才だから他の人と進むペースは変わらない。だが幾ら何でも億劫だ。邪魔だ邪魔だ。どけ。もっと先を走らせろ。

 だが、嫉妬に狂う愚民共はそれを許さない。一つ障害を越えるごとに新たな障害を生み出す。苛立たしい。人のコースに茶々入れるくらいならもっと努力して自分のコースを走れ。人にちょっかい出してる場合か。お前達は劣ってるんだよ。私などの天才に比べたら。なら劣ってる分頑張れよ。

 まったく。これだから愚か者なんだ。

 ボヤきながら私はひたすら自分の道を進む。他の人になど目もくれず、己の前に出現する障害を淡々と越えていく。

 すると、そんな私の飄々とした態度が気に入らないのか愚民共は障害の発生率を上げていく。……うっとい!

 私は障害を越えるなどというまどろっこしい真似はやめて、強行突破に出ることにした。

 つまり、障害を発生させている元を絶つ。

 そして──


「何してくれるのよ、人の息子に!!」


 ──私は『天才』の名前を欲しいがままにしていた神童から、『悪名』を欲しいままにする問題児となった。


  * * *


 問題児な私は、肉親にさえ煙たがられた。

 元を絶つ。ただそれだけのことをしただけで私の居場所は、呆気なく消え去った。

 何がいけないんだ?何がダメだったんだ?

 いくら考えても同じ疑問が堂々巡りを続けるだけだ。何も変わらない。

 めんどくさ……。


 自身でも気付かない内に、私は『走る』ことをやめていた。


  * * *


 はい、これが私の小学生時代。あまり楽しくはなかったなー。なんて感傷に浸ってみる。……特に思うことはなかった。残念。

 中学二年となった私は、いつも通りの時間に起床し、部屋のカーテンを開け、寝覚めの悪い身体に照りつける太陽を見ておはよう。

 止め忘れた目覚ましを止め、朝食を取りに一階に降りる。


 さあ、今日という長い道のりを乗り越えに行こう。


  * * *


 私の通う中学校には、二つの小学校の卒業生が入学する。中には遠くに引っ越す人もいるが、基本は新入生の半分が顔見知りである。

 そんな中に孤立している私の心を染めるのは憂鬱?いいえ、退屈です。

 小学校の時に問題児のレッテルを貼られた私は、今でもその座に居座っている。

 授業態度は普通。他人との会話の頻度も普通の、至って何処にでもいる、イジメられる要素ゼロのザ・普通少女のはずなんだけどなー。小学生時代の、被害者面する者達はそれを認めない。

 子どもの悪戯じゃろうて……あ、今の言葉遣いかっこ良いかも。って、なんかこの思考回路中二臭いな。

 それはさておき、さあ、退屈だ。

 進級してから四ヶ月が経つ真夏日。窓の外を覗くと陽炎が立ち揺らめく。

 数年間地面に潜りっぱなしだった蝉が、ここぞとばかりに五月蝿く鳴く。蝉なのか蝿なのかはっきりしなさいよ。って、やかましいわ私。

 家に帰れば、両親に冷たい目を向けられ。

 学校に来れば、小学生時代の被害者の会のせいで孤立する。

「…………暇だなぁ」

 そんな私が抱く感情は、何でもない、ただの退屈。

 それが私の日常でした……なんちゃって。

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