序章
深夜。
人が賑わう繁華街。
その裏路地に柄の悪い男が三人、少年と少女を囲んでいた。
男達は髪を染め、いかついアクセサリーを付け、目付きを鋭くし、少年を睨む。
睨まれた少年と、その少年の背中に隠れるようにして男達の様子を窺う少女。
もしこの場を第三者が目撃すれば、不良かヤクザに絡まれたかわいそうな少年、少女。
と、いったところだろうか。
しかし、よく見ると少年は両腕をポケットにつっこみ、少女は脅えるどころか男たちなどいないかの様な装いで、少年の背に体を預け、幸せそうにしている。
一方男達はというと、三人とも額に汗を浮かべ、歯を喰い縛り、何かに耐える様な仕草をしていた。
「なあ、お兄さん達。俺たち急いでるから、そこをどいてくれるか?」
『…………』
少年の言葉に男達は何の反応もしない。
違う。できないのだ。
男達はもはや目の前の少年の雰囲気に呑まれていた。
「はあー。じゃ、通してもらうぞ」
少年はそういうと、後ろにいる少女を背中から引っぺがし歩き始める。
「あっ! まっ――」
「ちょ、ちょっと待てよッ!」
少女が少年を追いかけようとしたところで、男達のリーダー格が少年の肩を掴んだ。
おそらくはこの男のちっぽけなプライドが年下の少年にビビッた。という事実を認めたくなかったのであろう。
傍目から見てもそれは、無理をしているように見えた。それでも男は少年に襲い掛かったのだ。
男の拳はまっすぐに少年の顔面に向かい、しかし、その拳が届く事はなかった。
少年は左手で男の拳を掴み、右手で男の鳩尾にゆっくりと触れる。
次の瞬間、男は吹き飛ばされていた。
路地裏の汚い地面に転がり、それでも止まらず、男は建物の壁にぶつかり、やっとその動きを止める。
『…………』
残された男二人はその光景を見て固まる事しか出来なかった。
「おい」
そんな男たちに少年は言う。
「そこに転がっているヤツ連れて帰ってあげて」
そういうと、少年は今度こそ路地裏の奥に進んでいく。
『 』
もはや聞いてるのか、意識があるのかも判らない男達に少女は最後頭を下げ、その少年を追っていくのだった。
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