べったりにゃんこ
ソノラは僕が幼い頃から飼っている猫だ。
子猫の頃、外に捨てられていたところを僕が拾ったところからの付き合いだ。
いつだって僕にベッタリとしていて、家に居れば朝起きてから夜寝る時まで僕の体にまとわりつく。
勉強をしていても、ゲームをしていても、はたまた友達と遊んでいてぞんざいな扱いをしていても……。
小学校を卒業しても、中学校を卒業しても、高校生を卒業しても、大学を卒業して社会人になってからも……。
そして僕とソノラが出会ってから30年が経っても、この猫は僕の隣でベッタリとしている。
「お前。本当に長生きだよなぁ」
いつからか口癖のようにソノラに言う言葉。
今日呟いても、今日言われても、ソノラは「にゃあ」と一言鳴いて返すだけ。
*
そんなある日。
僕はふと実家の古くなったの物置に入る機会があった。
ほとんど物置と化しているこの場所に入るのは本当に久しぶりだった。
そして、そこで僕はあるものを見つけた。
「なるほどね」
僕は意外なほどあっさりとその真実を受け入れられた。
「死の前に姿を消すっていうもんなぁ」
呟いて僕は見慣れた首輪をつけた動物の骨をそっと抱きしめる。
大切に葬ってやろう。
そう心に決めて。
*
物置の入り口でソノラは僕を待っていた。
僕が抱える大切なものを気にした様子もなく、普段通りに一声鳴いた。
見るまでもなく、その首にかけられている首輪が自分の腕の中にあるものと同じだと理解する。
幽霊ってのは何で身にまとったものも一緒に出てくるのだろう。
そんなことを考えながら僕は「おいで」と一声かけて一緒に歩く。
ソノラはいつものように僕の後をついてくる。
一緒にそれを埋葬する。
消えてしまうと思ったけれどソノラはいつものように、退屈そうに僕の隣で行われることを見つめるばかりで全部が終わっても消えることはなかった。
自室に戻り床に座り込む。
僕の足にソノラは乗って欠伸を一つして目を閉じてしまった。
いつもと同じだ。
そう思いながら大切なものの背中を撫で。
「お前なぁ」
思わず吹き出して話しかけた。
「どれだけ俺のことが好きなんだよ」
足の上で大きな欠伸。
だけど、それ以上の反応は見せない。
消えることもない。
したがって、胸の締め付け付けられるような別れも訪れない。
少なくとも、今はまだ。
「まったく」
いつものように背中を撫でながら僕は呟いた。
「猫なのに狸寝入りか」
愛猫は「にゃあ」と一言鳴くばかりだ。




