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さざなみの後で

作者: fukulou

窓から海が見え私は電車を降りました。

大きな窓から見た海は誰かが描いた絵画みたいで値段なんてつかない自然の芸術のように思えました。

電車を降りてすぐ磯の香り私を歓迎してくれるかようで少し嬉しかったですが、冬というだけあって磯の香りよりも冷たい北風の方が強く吹き荒れておりとても寒かったです。

こんな冬に海へ来ようとした私は無謀だったのでしょうか。

目線を下げると錆びた標識が目に止まりました。

何年も何年も年月をかけてこびりついたサビはどうにも取れる気配がありませんでした。

海まではまだしばらく離れているのにと何だか自然の力を思い知らされたような気がします。

辺りは人の気配がなく、しばらく歩いてみましたが聞こえてくるのはコツコツと響いた自分の乾いた足音だけでした。

それは何というかどうにも不気味で私には居心地が悪かったです。

何だか世界に自分一人だけが取り残されたようで気がして、私はすぐさまここを出ようと決め、改札口へと向かいました。

切符を通した改札の機械音はまるで静寂を切り裂くようで、鮮明に私の耳に残りました。


駅から出ると遠くに海が見えました。

踏み切りの先の一本道を抜けると大海原が広がっていて、その水平線の先までも果てしなく続いているようでとても大きく感じました。

海には雲ひとつない青空が反射していてそれは大きな鏡のようにも思えました。

その鏡に映った空はどこまでも高く広がっていて私は海の様だと感じました。

さらに少し歩くと砂浜につきました。

さっき嗅いだ匂いとは比にならないくらい純粋で鮮明な磯の香りがマフラー越しにさえ伝わってきました。

マフラーをして海に来ている自分は少し場違いのようで、少し恥ずかしく思いました。

それでもせっかく海に来たのだから、足だけでも海に浸けてみようと私は近くの大きな岩に座りました。

靴下を脱ぎ大きく息を吸って私は足を入れました。

思っていたよりもゆるく、私はその感触をただぼんやりと感じていました

ゆったりと浜へと流れるさざ波の下には砂や貝殻が積もっていて、底に足をつけるとスノードームのように砂が舞い上がり、ふわふわと落ちていきました。

足を上げるとそこには琥珀色の模様の入った貝殻ありました。

自分はそれを踏んでいることにも知らずにただぼぉーとしていたことが貝に申し訳なく思っていましたが、たちまちそれは波に流されどこかに消えてしまいました。

私はこの貝殻は目的もなくただ波に身を任せここまで辿り着いたのだろうかと考えます。

自分にはそれが不条理で恐ろしく感じましたが、ただ風という波に身を任せ、目的もなく海をさまよう私は海岸に打ち上げられた貝殻とそう変わらない存在のように思いました。

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