最終章 開催、天陽顕現祭
魔神テリュスは手に握った魔剣ラ・ヴィクターを一振りする。
振られた魔剣ラ・ヴィクターは地面に切り傷を残した。
「・・・」
魔神テリュスと梨音は見つめ合う。
魔剣ラ・ヴィクターを握った魔神テリュスは梨音に向かって飛ぶ。
梨音は魔神テリュスを見て最上大業物日炎を構えた。
「どりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
魔神テリュスは叫びながら魔剣ラ・ヴィクターを振る。
梨音は最上大業物日炎を振り、的確に魔剣ラ・ヴィクターに当てた。
その瞬間、金切り音と重低音が混じった異音が轟き、魔剣ラ・ヴィクターが砕けて魔神化が解除された香澄が吹き飛んだ。
香澄は地面に転がる。
「・・・」
最上大業物日炎を握った梨音は香澄を見た。
「ど、どうして・・・」
香澄は多量の鼻血を垂らし、苦しそうに言った。
「これが気気滅却法だよ」
最上大業物日炎を握った梨音は香澄を見てそう言った。
「どうしてお前ばっかり!!どうしてお前ばっかり認められる!!」
香澄は叫びながら紅い稲妻を放ち、魔神テリュスになった。
魔神テリュスは魔剣ラ・ヴィクターを握って梨音に飛びかかる。
「私だけじゃない。姉様だって六合様に認められているじゃないか」
梨音はそう言うと、最上大業物日炎を振って的確に魔剣ラ・ヴィクターに当てた。
すると、金切り音と重低音が混じった異音が轟き、魔剣ラ・ヴィクターが砕けて香澄が吹き飛んだ。
香澄は地面に転がる。
「黙れ・・・お前ばっかりだよ!!私は見られない!!私は認められない!!」
香澄が息を荒げながらそう怒鳴ると、青い光の粒が香澄から放たれ始めた。
(欲しい・・・もっと力が!!)
青い光を放つ香澄は生成され、宙に浮いた青く輝く刀を握り込んだ。
香澄の眼帯が取れ、崩れた王の瞳が姿を見せる。
青い光を放つ香澄は梨音に向かって歩み出すと、梨音の傍まで瞬間移動した。
梨音は瞬間移動に動じることなく香澄の胸ぐらを掴んで投げ飛ばし、最上大業物日炎を上に向かって振った。
振られた最上大業物日炎は橙色の炎を放ち、降って来た黄金の隕石を破断した。
投げ飛ばされた香澄から制裁の大権が抜け出て宙に浮いた。
「・・・」
青い光を纏う香澄は梨音を見た。
「待ってたよ。フンケルン」
最上大業物日炎を握った梨音はゆっくりと降りてくるフンケルンを見てそう言った。
「天日の大君が不在の今、お前は無力同然だ」
テリュスと名付けられた権能を引き寄せたフンケルンは梨音を見てそう言った。
「そう言う割には遅い登場だね。震えが中々収まらなかった?死ぬのは怖いもんね」
「人間の癖に生意気な・・・」
空中で止まったフンケルンはそう言いながら紅い稲妻を生成した。
「止まらないでよ」
梨音はそう言うと、最上大業物日炎を担ぐように構える。
「墜とさなきゃいけなくなるんだから・・・」
最上大業物日炎を担ぐように構えた梨音はそう言うと、橙色の炎を放った。
香澄は橙色の炎に当たってうずくまった。
「天道、隼炎獄道!!」
最上大業物日炎を担ぐように構えた梨音はそう言うと、最上大業物日炎を振った。
すると、最上大業物日炎から出た橙色の炎が隼になり、フンケルンに向かって飛んだ。
「ッ!?」
フンケルンは近づく隼炎獄道を見て驚いた。
「クソ!!」
炎によって紅い雷を打ち破られたフンケルンは落下しながら言った。
その時、落下するフンケルンの真上を隼炎獄道が通り過ぎる。
「うわぁぁぁぁ!!!!」
橙色の炎に焼かれたフンケルンは悲鳴を上げた。
「鎮魂の大権、解放!」
フンケルンはそう言いながら鎮魂の大権を発動して空中で止まった。
「天道、暗天晴らす陽矛」
梨音はそう言いながら陽光の矛を生成して握り、陽光の矛を向かってフンケルンに投擲した。
陽光の矛は銀の冷気を破壊した。
炎を纏った梨音は飛び上がり、フンケルンに接近する。
「天道、灼華炎冠」
最上大業物日炎を握った梨音はそう言うと、縦に一回転した。
最上大業物日炎から炎が放たれ、炎が円形に広がる。
「断罪の大権、解放!」
フンケルンはそう言いながら黄金風を発動した。
「天道、灼輪煌斬」
最上大業物日炎を握った梨音はそう言うと、最上大業物日炎を振り下ろした。
黄色の風を打ち破られたフンケルンは焦りながら審判の大権を発動した。
「天道、陽炎一閃」
最上大業物日炎を握った梨音はそう言うと、途轍もない速度で最上大業物日炎を振った。
「ウオォォォォ!!!!」
翠色の水を打ち破られたフンケルンは酷く焦り、冷や汗をかきながら叫んだ。
冷や汗を垂らすフンケルンは浄化の大権を発動した。
「天道、日炎」
最上大業物日炎を担ぐように構えた梨音は青白い炎を纏うフンケルンを見てそう言うと、フンケルンに向かって激しい炎を纏った最上大業物日炎を振る。
轟音を立てて炎が広がり、地上に衝撃波が到達する。
土煙が舞い上がり、古びた配管などが破損した。
「・・・」
うずくまっていた香澄は空に広がる炎を見た。
その時、叫ぶフンケルンが地上に落ちた。
「こんなことをして・・・天日の大君様と六合様が黙ってると思うなよ・・・!?」
至る所が焦げたフンケルンはゆっくりと着地した梨音を見て苦しそうに言った。
「天日の大君様も六合様も、裏切り者を庇うような馬鹿じゃないよ」
最上大業物日炎を握った梨音はフンケルンに向かって歩みを進めながら言った。
「・・・天日の大君様にふさわしいのはこの私だ!!」
怒筋を浮かべたフンケルンは梨音を見て怒鳴りながら起き上がった。
「この私が新たなる六合になる!!」
フンケルンは両手を広げてそう言うと、六つの神力を解放した。
「それが辿り着いた正義か・・・」
最上大業物日炎を握った梨音は六つの光を見てそう言うと、最上大業物日炎を黒鞘に納めた。
「私からも聞きたいことがある・・・」
香澄は起き上がりながらそう言った。
「うん」
梨音はそう言うと、星形の首飾りを外した。
「どうして島を攻撃した。犠牲になった島民だっているんだぞ」
香澄は梨音を見てそう言った。
「何の犠牲もなしに島民を守って、島を守りたいと私も思っていた」
梨音は空に輝く星のような光を見てそう言った。
「でも、そんなこと理想でしかなかった」
梨音は悲しそうに言うと、香澄を見た。
「理想では誰も救えないし、理想では何も守れない。だから、私は現実に向き合うことにした」
梨音は香澄を見てそう言った。
「この地獄のような現実に・・・」
梨音そう言いながらは星形の首飾りを握り締めた。
「・・・島を元に戻すように努力する。みんなに謝罪もする。もう伝統も否定しない。だから、許してほしい」
眉を顰めた香澄は梨音を見てそう言った。
「・・・もっと早く気付くべきだった・・・どうしてそうも遅いんだ・・・姉様は・・・」
梨音はうつむいてそう言った。
「姉さんが天陽神様の力を使ったことで天陽神様の力が乱れ、この俗世にできた地獄の門が開いたんだ・・・」
梨音は酷く落ち込みながらそう言った。
「テルメスがこの俗世に来れたのも、宿幼が何も恐れることなくこの俗世に滞在できるのも、全て姉様が天陽神様の力を使ったからなんだ・・・」
梨音は涙をこらえながらそう言った。
「・・・私が何とかする」
「よく言うよ・・・私に勝てないのに・・・」
梨音は笑いながらそう言った。
「絶対何とかする!」
香澄は大声でそう言った。
「テルメスは六合様の力を持ってしても力の抑制すらできない!!宿幼の力を抑制するだけ精一杯だ!!制裁の大権や太陰の気でどうにかできるなら全部解決してる!!」
梨音は香澄を見て怒鳴った。
「・・・」
香澄は冷や汗をかいて黙った。
地上に降って来る神気塊を見た香澄は焦る。
「・・・姉様・・・何とかする方法、あるよ」
髪と服が靡く梨音は香澄を見てそう言った。
「教えて!」
髪と服が靡く香澄は梨音を見てそう言った。
「ここに夜を降臨させ、俗世を改変する。姉様を最初から居なかったことにすれば、何とかなる」
「・・・居なかったことに・・・」
香澄は冷や汗をかいてそう言った。
「待ってよ!もっと!もっと他に方法が!!」
冷や汗を垂らす香澄は梨音を見て大声でそう言った。
「島民のために、世界のために・・・消えてよ、姉様」
髪と服が靡く梨音はそう言いながら星形の首飾りを掲げた。
すると、星形の首飾りが夜空色に輝いた。
空に夜色の光が波のように広がり、アヴァンヘスク島の上空に美しい星空が広がる。
香澄は美しい夜空に見とれていたその時、広がった星空が激しく移動するようにぼやけた。
その瞬間、フンケルンの神力が全て強制解除されて落下した。
フンケルンは呻き、苦しみながら星空を見る。
「ば、バカな・・・六合に匹敵する力だぞ・・・!!」
目を見開いたフンケルンは星空を見て冷や汗を垂らしながら言った。
「ま、まさか夜見がここにッ!!」
中央から離れ、桟橋に向かう真白は星空を見て怯えながらそう言った。
「こりゃ暗黒神共がビビり散らかすわけだ・・・」
星形の首飾りを持った梨音は星空を見てそう言った。
次の瞬間、異常なまでの静寂が訪れた。
恐怖、驚き、焦りの感情が布に垂らした色水のように広がる。
「・・・」
香澄はぼやけた星空に滲み出る黒いシミを見て冷や汗を垂らす。
その時、強烈な斬烈音が轟き、ぼやけた夜空に漆黒の異空間、"界"がはっきりと現れた。
「・・・」
黒眼、黒髪ロングヘア。黒いワンピースで身を包んだミステリアスながら可愛い少女が界から現れる。
「全然かわいいッ!!」
梨音は黒眼、黒髪ロングヘア。黒いワンピースで身を包んだミステリアスながら可愛い少女を見て驚きながらそう言った。
「・・・」
六合と青月は船に乗った。
「本当に梨々香様を見なくてよろしいのですか?」
青月は六合を見てそう言った。
「構いません。すぐに会えますから」
六合は笑みながらそう言うと、振り向いた。
(あれだ・・・あれこそ僕に必要な器だ。あの器があれば、天照や夜見にも勝てる)
木の上に座った真白は六合と見つめ合った。
「夜光」
黒眼、黒髪ロングヘア。黒いワンピースで身を包んだミステリアスながら可愛い少女がそう言うと、黄金の天楼の中央部が薄紫色の光に包まれた。
「神力、六種・・・」
フンケルンが六つの神力を解放しようとしたその時、黄金の天楼の中央部を包む薄紫色の光が徐々に黒くなり、大爆発を起こした。
黒色の靄が消えると、黄金の天楼の中央部がなくなっていた。
香澄は崩れ墜ちる黄金天楼を見て冷や汗を垂らした。
「・・・何なんだ・・・こいつは・・・」
冷や汗を垂らす香澄は黒眼、黒髪ロングヘア。黒いワンピースで身を包んだミステリアスながら可愛い少女を見てそう言った。
「行け!!」
冷や汗を垂らすフンケルンが大声でそう言うと、大量の白陽姫が黒眼、黒髪ロングヘア。黒いワンピースで身を包んだミステリアスながら可愛い少女に向かった。
黒眼、黒髪ロングヘア。黒いワンピースで身を包んだミステリアスながら可愛い少女に向かう白陽姫は辺りに漂う夜空色の神気に触れるだけで消滅する。
黒眼、黒髪ロングヘア。黒いワンピースで身を包んだミステリアスながら可愛い少女が夜空の大翼をゆっくりと広げ始めると共に耳鳴りが発生した。
天理照赫第一眷属神、天星。
天理照赫、六合に次ぐ三番目の大神。
界より降臨し、天を星で染め上げる。
耳鳴りは大きくなり続ける。
香澄とフンケルンは強烈な耳鳴りに襲われる。
「アァァァァァァァァ!!!!」
目を見開いた香澄は両耳を押さえて悲鳴を上げた。
「はぁ・・・はぁ・・・」
冷や汗を垂らすフンケルンは夜空の大翼を広げた天星を見て息を荒げ、目を見開いた。
「夜光」
夜空の大翼を広げた天星がそう言うと、香澄とフンケルンが紫色の光に包まれた。
「避けろ!!」
フンケルンはそう言うと、紫色の光から逃げた。
香澄もフンケルンと同時に紫色の光から逃げる。
紫色の光は一気に中心が黒くなり、輝かしい音と共に爆発を起こした。
フンケルンは梨音を見た。
「・・・小娘ッ!!」
目を見開き、怒筋を浮かべたフンケルンは梨音に怒鳴った。
「・・・」
梨音はフンケルンを見た。
フンケルンは梨音に接近し、拳を振る。
しかし、フンケルンの拳は防護壁に防がれた。
「この防護壁・・・まさか・・・」
フンケルンが驚きながらそう言った瞬間、天星の神封じの神技が発動した。
「フギャァァァァァァァァ!!!!
フンケルンは目を見開き、苦しみながら結晶化した。
「・・・」
香澄は天星を見て冷や汗を垂らしながら青い光を纏った。
「これより、君を抹消する」
香澄を見る天星は香澄に手をかざした。
その瞬間、静寂が訪れて香澄の髪と服が強く靡き、結んでいた髪が解けた。
「瞳が・・・」
「逆さの王冠・・・」
「この瞳は王の瞳だ!」
従者たちは生まれたばかりの香澄を見て驚きながらそう言った。
誰も私を見てくれない。
誰も私に興味を持ってくれない。
島民たちは私に首を垂れてたわけじゃない。
天陽神と同じ力を宿す王の瞳に首を垂れてた。
私を見てくれたのは、照香お婆様だけだった。
領民は私を最高の領主だと言った。
でも、そう話す領民が見ているのは王の瞳だった。
領民は天陽神を理由に戦い、天陽神を理由に理不尽に耐える。
戦況が劣勢になり徐々に不正が世に出てくると、領民から不平不満が出てきた。
そんな時、前線の兵士から梨音の話が立華領の民に出回った。
かつて、天陽神に認められ、最上大業物日炎を授かった勇者が立華家に居た。
その勇者は三柱の大神と同じ耳であり、太陽のような強く美しい瞳だった。
その勇者は伝統を大切にしていて島民の話をよく聞いていた。
立華家はその勇者を島から追い出した。そんな話が風のような速度で領地に広がった。
その日から地獄のような日々が始まった。
領民から蔑まれ、敵視される。
その一方で、梨音はこの状況を変えられる唯一の存在だと言われる。
領民は勇者の象徴である最上大業物日炎ではなく、梨音を見た。
王の瞳だけを見て、私をのことなんて見なかった領民が梨音という人物を見た。
この話が他の領地にも伝わり、私は責め立てられた。
味方は誰もいない。王の瞳のことなんてもう誰も見ない。
私は責め立てられる日々から逃げた。
悪いのは梨音だ。私を見ずに梨音を見た領民だ。
私は悪くない。
「・・・」
闇の中を飛ぶ香澄の魂を暗黒の霧を纏う白い手が掴んだ。
地下に居る島民たちは身を寄せ合って暖を取っていた。
「・・・」
子供たちが退屈そうに焚火を見ていたその時、ドンドンと二回太鼓の音が聞こえた。
太鼓の音を聞いた島民たちは嬉々として外に出る。
「始まった!始まった!!」
島民たちは提灯と灯篭で明るくなった島を見て嬉しそうに言った。
「・・・」
子供たちは酒と煙草を配る巫女たちを見て笑んだ。
「お前らにはまだ早いぞ!」
ユキュアは子供たちの頭を雑に撫でて笑みながらながら言った。
「えぇ~」
子供たちはユキュアを見て不服そうに言った。
「燦水天狐島からのお客さんだ!」
子供たちは燦水天狐族の民たちを見て笑みながら言った。
「よっ!有紗!」
ユキュアは有紗を見て笑みながら言った。
「久しぶりだね」
アンは有紗を見て笑みながら言った。
「久しぶり。日菜さんの出番は三日後だって」
有紗はユキュアとアンを見て笑みながら言った。
「じゃあ、とりあえずお祈りからだな」
ユキュアはアンと有紗を見て笑みながら言った。
「今回は燦水天狐島からのお客さんがたくさん来るみたいだよ」
歩みを進める有紗は煙草に火をつけて吸うユキュアとアンを見て笑みながら言った。
「だから燦水灯篭が多いのか」
煙を吹いたユキュアは有紗を見て笑みながら言った。
「・・・」
天星は空から天陽顕現祭を見る。
立華 香澄が歴史から抹消されたことでアヴァンヘスク島は大きく変わった。
聖地発電所化計画は最初からなかったことになり、七華族の関係も良好なままだ。
人工四季が誕生しなかったことで地上は発展せず、地下での生活が続いている。
地下で生活する島民は夕陽を見て過去という懐かしさに浸り、日の出を見て明るい未来を夢見る。
この感性がアヴァンヘスク島の文化を広げていくだろう。
「せーの!!」
神里 菊葉が大声でそう言うと、大槌を持った巫女たちが結晶化したフンケルンに大槌を振り下ろした。
「これで不安な要素は消えたか?」
桜は透明な水晶になる結晶片を見てそう言った。
「えぇ・・・」
菊葉は透明な水晶を見てそう言った。
誰もいなくなった大社に入った邪眼、赫灰色髪縦ロール。奇妙な金属製の装飾品がついた黒色のミニコルセットドレスを着た乙女は歩みを進める。
歩く度に手入れされていない床板が軋み、ギギギギッとやや高い音を立てる。
邪眼、赫灰色髪縦ロール。奇妙な金属製の装飾品がついた黒色のミニコルセットドレスを着た乙女は歩みを止めると、スカートを裏腿に巻き込んでゆっくりとしゃがんだ。
「・・・」
邪眼、赫灰色髪縦ロール。奇妙な金属製の装飾品がついた黒色のミニコルセットドレスを着た乙女は水晶片を手に取って見つめる。




