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失恋の万年筆

作者: 古家  雅

チューリップの花言葉は「愛の告白」、そして黄色いチューリップは「望みのない恋」らしいです。

ロマンチックですね。

「なんていい万年筆なの。」彼女は万年筆を眺めつぶやく。


「はぁ…なんで私人間に恋なんてしてしまったのでしょう。」そんな事を言うと万年筆を箱に戻し自分のベッドに飛び込む。


魔女と聞かれてあなたはなにを思い浮かばせる?長い爪にキツいメイク、「可愛い」なんて言葉は似合わないいひひと笑う怖い顔?


でも知っている?


もしその恐ろしくてたまらない魔女の正体がこの可愛い恋する女の子と言ったら信じる?彼女はかれこれ半年間雑貨屋の彼に一目惚れしてから毎週通っていた。「ペンが壊れたから」「新しい消しゴムがほしいから」なんて嘘の理由を付けて。

でもある日彼女は見てしまった。大好きな彼が愛おしそうに誰かを見つめていたことを。


「憎たらしい。憎たらしいわ。」彼女はそうぶつぶつと言い始めたら止まらない。


「この魔女である私があんな小娘に負けたなんて…」彼女の中には自分が彼の隣りにいるビジョンがはっきりとあったらしい。


でも彼女は涙を流すばかりでなにも行動を起こさなかった。彼女は魔女であった。やろうと思えば相手の子を殺すことも好きな人の思いを変えることもできるのに。


「魔法なんて一瞬。自分の願いを魔法で叶えようなんて…あってはならない。あってはならないのよ。」彼女は自分に言い聞かせた。そうでもしないと彼女は正気を保てなかったからだ。

目に溜まった涙は落ちることしか知らない。その日彼女はワンワン泣いた。



次の日彼女は強がって雑貨屋に行った。雑貨屋には幸せそうな顔をした指輪をつけた彼がいた。「あぁ、もしその顔の理由が私なら」なんて思ったけれど悲しくなるために雑貨屋に来たわけでわない。


「いらっしゃいませ。何をお探しでしょうか?昨日お買い上げになった万年筆はどうですか?」


「昨日買った万年筆はすごく良かったわ。長持ちしそう。そして、今日は何も探してないわ。…風が噂してたの。あなたが結婚したって。」


「え…。」彼は少し驚いた顔を見せた。彼女は泣きそうになった顔をこらえてこういった。


「私の職業しらないでしょ?私マジシャンをやっているの。そしてあなたの結婚を祝うため、一つ魔法をあげるわ。」そういい、彼女は魔法のステッキを出して自分の手に当てた。


「ワン、ツー、スリー!」その瞬間、彼女の手の中には花束があった。ひらひらと花びらが落ちる中、彼女は花束を彼に渡した。


「おめでとう常連として嬉しいわ。」常連というのを強調して彼女はいった。


「すごいや…種も仕掛けも暴けないよ。ありがとう。奥さんが喜ぶ。」そう言うと照れくさそうにしていた。きっと最愛の人を奥さんというのがてれくさかったのだろう。


「何も買わなくてごめんなさいね。それでは。」彼女はそういい、種も仕掛けも存在しない魔法を彼に見せたあとその場をあとにした。必死に涙をこらえ、家に帰ったらまた泣き出した。


最初、彼女は花束で思いを伝えようとした。でもそれがかえって彼を困らせるだけとわかっていた。それでもエゴを通すか彼のことを思うか最後まで悩んだ。けれども彼女はさとった。大好きな雑貨屋の彼にはチューリップは似合わない。祝福の花のほうが似合うと。チューリップは私にしか似合わない。少なくとも今は。万年筆は今、チューリップの香りがする。


きっと彼女は万年筆を見るたび使うたびこのことを思い出しては微笑むのだろう。


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