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上目遣いは反則です

外は快晴、あれだけ吹き荒れていた砂嵐は綺麗に過ぎ去っており2人は洞窟から出るとクラウンの荷台に地図を広げていた。


「あいつらの気配もありませんしこのままベルクまで…と思っていましたが、一度アースレイに戻ってリンの荷物を取りに行きましょう」

「そういえば私、荷物を置きっぱなしです…」


支度が済んだ2人はこれからどうするかを話合っていた。ルカはわかりやすいように指差しで経由を説明する。どうやらルカは一度アースレイに寄りそのままリンを目的地まで送ってくれようとしているらしい。


(ルカは戻ってくれると言ってくれているけど…今アースレイに戻るのは危険じゃないかな…)


難しい顔をして考えこんだリンにルカは首を傾げた。


「リン?」

「……あの、ルカ。やっぱりこっちの近い街まで送って頂ければ大丈夫です。」


リンが指差した場所はここから数時間クラウンで走れば着く小さな別の街だった。


「……何故です?」

「その…今アースレイに戻るのはやっぱり危険じゃないかなって…気配が無いとはいえルカはこのまま別の街まで逃げた方がいいと思います。

それに…ベルクまで行くとなるとかなりの距離もありますよね…?そこまではさすがに申し訳ないです」


幸いにもコアはリンがいれば手の持ちの分だけになるが満タンにしてあげることも出来る。大きな町に行けばコアが売っている場所があることを考えたらアースレイに戻るよりもこのまま先へ進む方がずっと安全でいいはずだ。

そう考えたリンがルカを見れば、何故か眉間に皺を寄せて考え込んでいる。


「あの、ルカ…?」

「…僕は、まだ貴方のボディーガードです」

「え?」

「こうなってしまったのも僕のせいですし…せめて荷物を取りに行くのは同行させてください」

「で、でも…私の都合でルカが危険な目にあうのは…」


申し訳なさそうにするリンに「本当に貴方と言う人は…」と困ったようにルカは笑う。

少し考えたあとにリンの顔を覗き込んだ。


「僕のせいでこうなったんですから、最後まで貴女を守らせてください」

「で、でも…」

「それに先手は打ちましたから暫くは大丈夫なはずです」

「え?」

「だから……リン、お願いです」


しゅんとした犬耳が見える。


「…っう…」


母性をくすぐられるのか…どうやらリンはこの顔に弱いらしい、一瞬言葉に詰まるもその期待の籠った瞳に見つめられて渋々と頷いた。


それを見たルカは安心するように笑う、どことなくご機嫌な彼に首を傾げた。


「何だかルカ、ご機嫌ですね?」


リンの問いにキョトンとし、何かを考える素振りをするとルカは困ったように笑った。


「…そう、ですね。嬉しいみたいです」

「?」

「いえ、何でもないですよ。リンは気にしなくていいんです」


変なルカ、と思いながらもそれ以上はルカも何も言わなかったので気にしないようにした。





________




クラウンのエンジンをかけると重低音が響き渡る。ルカはそこへ跨り半キャップ型のヘルメットとゴーグルを装着した。


「さぁリン、行きましょう」

「……」


どうぞ後ろに、と目で合図を送るルカにリンはゴクリと生唾を飲んだ。

よくよく考えたらこれから乗るのはあの荒い運転をするクラウン、そう考えると足が竦む。


(……わ、私生きてつけるかな)


そんなリンの不安を感じ取ったのか、苦笑いをするとルカは自分と同じ型のヘルメットを手渡した。


「大丈夫です。さすがにずっと手荒い運転はしませんよ」

「!」

「普段は安全運転ですから安心してください」


その言葉に安堵したリンはキャップを被るとゆっくりと後ろに跨った。


「えっと……」


(どこに捕まろう……)


昨日は荒い運転にパニックになっていたこともありルカの腰に無我夢中で掴まっていたが、改めて乗ればまた掴まっていいのだろうか?いやもしかしたら運転しずらいかもしれない…リンはどうしようと戸惑いながら手をさ迷わせた。

そんな様子を見ていたルカはキョトンとすると、ポリポリ…と頬をかいた後ゆっくりとリンの手を取り自分の腰に回した。


「!わっ…」

「慣れるまでは僕のここに掴まっていてください」

「…運転、しずらくないですか…?」


申し訳なさげに上目遣いで聞いてくるリンに、彼は一瞬身体を揺らすと頷いた後に小さくため息を吐いた。心なしか彼の顔が赤い。

何故ため息を吐かれたかわからないリンは首を傾げながらもルカの腰に手を回した。

するとルカはコホンっと咳払いをしてからアクセルを回す。


「大丈夫です。むしろ掴まっていてくれた方が僕も安心して走れるので。」

「は、はい……っ!」


しっかりと掴まったリンを確認すれば、では行きます。と掛け声と共にゆっくり走り出した。

やはり昨日のことをまだ身体が覚えているのか、リンは恐怖から目をぎゅっと瞑りルカの腰に回している手に力を入れる。

それに気付いたルカはふっと笑うとエンジン音に負けない声量でリンに話かけた。


「大丈夫!怖くないですから、ゆっくり目を開けてください!」

「っ……」


そろっ……とゆっくりと目を開けば、緩やかなスピードで移りゆく綺麗な景色。それは初めてみる光景だった。


「っわぁ…!」

「ねっ、綺麗でしょう?」


昨日は景色を見る余裕なんてなかったが改めてクラウンから見る景色はとても気持ちのいいものだった。爽やかな風を切り何処までも行けそうだとリン目を輝かせた。


「ル、ルカ!凄いですね!凄く綺麗です!」

「ふふ、でしょう?クラウンでしか味わえない景色です」

「はい!クラウン、すっごく素敵な乗り物ですね!」


その言葉にルカは目を細めた。


「貴方ならそう言うだろうなと思いました」

「?何か言いましたかルカ!」

「いえ!こちらの話です!」


何処か嬉しそうな顔をしたルカはそのまま安全運転でクラウンを進めるのだった。


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