君が喜ぶと思って
「わぁ〜!綺麗な泉ですね…!」
「ここら辺では有名な泉のようですよ」
クラウンを走らせること2時間程、アースレイへと戻っている最中で休憩がてら寄り道した大きな泉。日本では見ないくらいの透き通ったキラキラした水面にリンは嬉しそうにはしゃいでいた。
「見てください!泳いでる魚も見えますよ…!」
「ふふ、そうですね」
見るからに喜ぶその姿に目を細めたルカも楽しそうに笑った。
「寄ってくださってありがとうございますルカ!」
「いえ、喜んでくれたようで僕も嬉しいです」
転移魔術も使えない、乗り物も乗れない…と言うかこの世界に免許の概念があるかはわからないが、元いた世界でも免許のなかったリンにとったらバイク旅自体が楽しいのである。
ルカがクラウンで旅をしている理由もわかる気がする。爽やかな風が吹いてリンの長い髪を攫う。
「クラウンがあれば何処まででも行けそうですね!」
一瞬驚いたアイスブルーの瞳とぶつかる。リンが首を傾げれば、何処か懐かしむようにルカは微笑んだ。
「ルカ?」
「…いえ、昔に…同じ事を言われたな、と…これを譲ってくださった方に」
クラウンを撫でたルカの手付きがあまりにも優しくて、どれだけ大切にしている物なのかが見て取れる。
少し目を伏せると彼は何故か悲しそうに笑った。
(どうしてそんな顔するんだろうか?)
ルカの過去は知らないし、詮索するつもりもないがきっとこのクラウンには楽しい思い出も…悲しい思い出も沢山詰まっているんだろう。彼にとってこのクラウンと言う物はアルバムのような物なのかも知れない。
「…クラウンを譲ってくれた方は、きっとルカのことが大好きなんですね」
その言葉にルカはキョトンとした顔をした。
「…何故ですか?」
「私がクラウンの持ち主だったとして、こんなに素敵な思い出をくれるクラウンを譲るなら大好きな人がいいですから!」
目を見開いたルカ。すると彼はポツリと嘆く。
「……そう、か…そんな考え方もあったのか」
「?」
少し放心状態な彼にリンは首を傾げた。何かまずいことを言ってしまっただろうかと不安になれば、それに気が付いたルカがふっと笑う。
「すみません、大丈夫です。自分では辿りつかなかった考えに驚いただけですから、気にしないで」
どことなく、ルカの表情がスッキリとしたような気がして。嫌な思いをした訳じゃないのならいっか、とリンは自分を納得させた。
*
そろそろ出発しようと2人とも準備をしていた時だった。
《_______けて、》
「っ!ぇ…」
「リン?どうしましたか」
突然声をあげたリンは辺りをキョロキョロと見回す。ルカは不思議そうに首を傾げた。
「…い、今何か声のようなものが聞こえて…」
「……声?」
《___た、___けて、おね……い》
「!ほらまた、少し高めの幼い子供みたいな…」
「…いえ、聞こえませんが」
(私にしか聞こえてない?)
リンにしか聞き取れないその声は頭の中で直接響くような感覚だった。それは何処か苦しそうに聞こて…不安そうに辺りを見回すがやはり2人以外には誰の気配もない。
そんなリンの様子に只事ではないと察したルカは空を見上げると魔術陣を発動させ「周囲探知」と口にした。
魔法陣が現れると周囲を覆う。
「…やっぱりこの周りには誰もいないですリン」
「…っで、でも…」
《___助けて、お願い…》
「!った、助けてって言ってます…!」
一際強く聞こえた助けを呼ぶ声に焦るリン。
「…リンにしか聞こえていない…?と言う事は魔術ではないのか…別の何か、…声の方向はわかりますか?」
「……えっと、多分あの道の先からだと思います」
指差す方向は泉の真横にある森に続く道だった。ルカは地図を広げる。
「この道の先には何もないはずですが…」
その間にもリンの頭の中だけに聞こえる苦しそうな声にいても立ってもいられなくなった。
「っルカ…私この声の人を助けに行かなくちゃっ…!」
「わかりました、大丈夫です。落ち着いて」
今にも駆け出しそうになっているリンの腕を掴むと彼はリンを落ち着かせるように静かな声で言葉を紡ぐ。
「…僕も一緒に行きます」
こっち久しぶりの更新です…




