君との出会い
最後まで書けるかわかりませんがお付き合いください…。
「やっとついた…!」
ここは長閑な田舎、アースレイ。今し方ここに大きめのショルダーバッグを持った1人の女性がやって来た。
彼女の名前はリン。整った顔立ちに長い髪を揺らした彼女は今日の宿を探しに街中を物珍しそうに見ながら歩いていた。
好奇心を抑えられないと言ったようなキラキラした瞳を見るからに余程この街の景色が珍しいようだ。
「あのすみません…!」
「おや、お嬢さん見かけない子だね」
探索したい気持ちを抑え、まずは今日の宿を探しにいかなければと意気込むとリンは街ですれ違った優しそうな老人に声をかけた。
「私旅に出たばかりで…宿屋を探しているんですがどこにありますか?」
「おや、女の子1人で旅なんて珍しいね」
「宿屋はここを真っ直ぐ行った右手にあるよ」と指差して丁寧に教えてくれた。
「ありがとうございます!」
「旅人さんなら宿屋前にギルドに行くといいよ。」
「…ギルド…ですか?」
聞き馴染みのないその単語にリンは首を傾げた。
「なんだ、お嬢さん旅人なのにギルドも知らないのかい?」
「えっと…ギルドって…?」
「旅人の大体がギルドに加入して役職につくのが一般的だろう。あの稀代の天才魔術師様が立ち上げたギルドを知らないってお嬢さん一体どんな田舎から来たんだい?」
「あ、あはは…ちょっと説明しずらい場所からで…えっとそのありがとうございました…!!」
リンは慌ててお辞儀をすると宿屋に向かって走り出した。
「またここでも稀代の天才魔術師か…どこの街でもこの名前聞くからこの世界じゃ相当有名人なんだろうな…」
(それにしても危なかった……)
ふぅと一息つくと先程のおじさんは見えなくなっていた。
(異世界から来ました…なんて口が裂けても言えないもんね…危ない危ない)
そう、何を隠そうリン…又の名を宮下凛はこことは違う異世界から急に飛ばされこの世界にやって来た言わば異世界人なのである。
そんな普通の世界から来たリンからしたらこの街が珍しい訳ではなく、この世界自体が珍しいのだ。
(アルベールさんには異世界人だって絶対口外するなって言われてるから気をつけなくちゃ…)
アルベールとはリンを拾ってくれた言わば恩人。
ヒゲがトレードマークのイケオジだ。
優しい人であるのは間違いないのだが結構適当な人物だったため「この世界を知りたいなら俺に聞くんじゃなく見てこい」とあしらわれ…ではなく背中を押されてこの世界について詳しくないまま旅にでたのである。
今考えれば割と無謀だがリン自身もじっと待っていると色々と考えてしまいそうだったし何より好奇心には勝てず今に至っていた。
そして旅にでて現在わかっていること…
それはこの世界には魔術や精霊、モンスターなんかも居るらしくリンの世界で言うとこのファンタジーな世界だったと言う事。ギルドと言う新しい単語も出できた辺りまだまだ知らないことは沢山ありそうだ。
(せめてモンスターがいるって言うのは言ってくれれば…本当にびっくりした)
アルベールに持たされた護符と言われる身を守ってくれる紙(アルベール談)のおかげで難を逃れたが初めてモンスターと対峙した時は死ぬかと思った。まさか本当にこの紙切れのような物が自分を守ってくれると思っておらずリンは唖然とした。
いやしかし、モンスターとばったり会った時のことは今思い出しても血の気が引く。この世界の人はどうやら魔術が基本的に使えるらしいのでモンスターに出会ったとしても自分で対処出来るのだが異世界から来たせいかリンは魔術が使えずに完全なる丸腰だった。だからこそアルベールは護符を持たせたのだが。
(まさかこんなに早く役立つなんて…アルベールさんありがとう…)
異世界に来るだなんて何か凄い力が使えるのかもしれないと最初こそリンは期待していたが特にそれと言った力も備わっておらず唯一、手から淡い温かい光の様なものが出るだけだった。アルベールはそれを見てびっくりしたあと神妙な面持ちでブツブツ何かを言っていたが、次の瞬間には「スープを温めるくらいしか出来ない力だ」と言われ、ガックリ来たのは言うまでもない。
(…異世界に来てスープを温める力って…)
落胆したようにそんな甘くないかと直面した現実にリンは苦笑いをした。
「…あ、ここもだ…」
そんなことを思い出していれば、リンの視線の先には看板と一緒に魔術陣が表示された料理屋や出店がちらほら見受けられる。どうやらこの世界での魔術は、戦いをするためだけではなく日常使いでも使うらしい。瞬間移動したり買い物も出来るようで、ご飯を注文したり作ったりするにも魔術を使うと言うのだ。
刻印されている魔法陣に自身の魔術を送り込めば簡単に魔術が発動し色々出来る、と言う流れらしい。
この魔術陣の構造が複雑になればなるほど高度な魔術だとリンはアルベールに教わった。
(…まぁどっちにしても私は魔術使えないからなぁ…どうしても自炊になっちゃう)
魔術で簡単に出てくる出来立ての料理を堪能する人達を横目に羨ましそうに見ながらリンはお店を通り過ぎた。
魔術を使えないのは異端だとアルベールも言っていたこともあり誰かに相談出来る内容じゃない。あまり知られてもいい反応をされないだろうと言われたため、1人で何とかするしかないのだ。
(いやいやでも!スープを温める力だって無いよりはマシだよね!)
ポジティブに行こう!と人知れず心の中で自分を褒めた。
元の世界では魔術なんて便利な物は元からないし、自炊生活は前の世界とほぼかわりはない。それを考えれば温める力凄い。と前向きに身も心も歩き出した。
「宿屋…あ、ここかな?」
看板を見つけたリンは恐る恐る扉を開ける。
(この世界の文字読めて本当に良かった…)
見た事のない文字だが何故かちゃんと日本語で訳されて見える。リンはホッとしながらドアを開けた。ベルがカランコロンとなればその音に気付いた店主らしき元気の良さそうおばさんが声をかけてきた。
「いらっしゃい!珍しいね、女の子1人だなんて」
「こんにちは、利用したいんですが…大丈夫でしょうか?」
「お嬢さんついてるね、最後の一部屋空いてるよ」
おばさんはカラカラと笑いながら外を指差した。
「今日の夜あたりからここら辺で有名な砂嵐が来るからね、こんな田舎でもこの時期は大繁盛なんだ」
「砂嵐?」
「ああ、お嬢さんみたいな細っこいのが歩いてたら飛ばされちまうくらいにはでかい嵐さ」
「…っそ、そうなんですね」
(あ、危なかった…)
魔術すら使えないリンが砂嵐の中野宿は死にに行くようなもの。宿が取れてホッと息をついた。
そんなこんなで店主に渡された宿泊リストに名前を記入しようとペンを走らせた時だった。
リンが来た時と同じように扉のベルが鳴る。
すると、ボロボロのマントフードを被りその下にはキャスケット帽子を目ぶかに被った見るからに怪しい男性が入って来た。
世界観の説明って難しいですよね…
読みづらかったらすみません…。
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