一 果たし合い
朝霧の立ちこめる、城下外れの馬場。
一人の侍が敵を待っている。
やがて、その敵が姿を現した。
敵もまた、一人の侍。
待っていた侍が叫ぶ。
「貴様が尿漏れ侍か!」
尿漏れ侍、と呼ばれた侍が不敵に笑う。
「いかにも。それがしが尿漏れ侍だ」
刀が抜き放たれる。
「約束通り、勝負してもらうぞ」
「よかろう」
尿漏れ侍も刀を抜く。
「イヤアアアアアアア!」
「キエエエエエエエエ!」
気合と気合がぶつかり合う。そして、
「貴様、今、ぶるりと震えたな?」
「いかにも。これは武者震いでござる」
「貴様……」
侍が尿漏れ侍の股間に視線を飛ばす。
「袴の股にしみができているぞ」
「不覚! 今の武者震いで尿漏れしてしまったか!」
「果し合いの際中に尿漏れとは……尿漏れ侍は噂に違わぬ尿漏れ侍であったか。いざ尋常に勝負!」
「来い!」
「わが一刀受けてみよ! でやあああああ!」
「来たか……秘太刀、流水!」
「なに? ぐわあああああああああ!」
ばたり、と倒れたのは、無論、尿漏れ侍ではない。
尿漏れ侍は刀を納めながら、
「貴殿の一刀、なかなかに見事な一刀であったぞ。だが……」
倒れ伏した相手を見下ろしながら、
「惜しい! これほどの剣才、いずれは達人の域に至ろうものを……死に急いだか。惜しい!」
そう言って今度はため息を漏らす、我らが尿漏れ侍であった。