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ミッションの終わり 1 残された者たち

「エリザ! 合わせて!」

「ええ! いきますわ!」


 【神格】神剣カリバーン。そして【神格】神剣フランベルジュ。

 二つの神器が光と炎を交錯させ、超巨大モンスターの顔面を切り裂く。


「ギュオオオアアアアアアアアアアアア!!」


 山よりも大きな怪物がひるむ。

 超人的な身のこなしと、腕力。そして剣技。

 ここにいる冒険者や騎士たちは二人の姫が見せる神業に見惚れるしかない。


「まったく、やってくれるさ」

「人外」


 見上げるカサンドラとアリステラは、ため息をつくと同時に、感心していた。

 そして改めて【神格】の所有者の恐ろしさを目の当たりにし、誰もが息を呑む。


「あ、グレンザー伯が飛んだね」

「けが人、なのに」


 ラナとダイアナが同時に発見したのは、満身創痍であるはずのグレンザー伯その人だ。

 空中で【神格】神槍ゲイボルグを風車のように振り回す。


「終わりだ! 怪物!」


 超巨大モンスターの脳天に突き立てられた神槍から、衝撃が突き抜ける。

 これで終いだと、全員が思った。

 が、しかし、超巨大モンスターは動くことをやめない。


 狂ったように叫び、前進を開始。

 アリステラが魔法を放つのを契機に、飛び道具を持つ冒険者たちが一斉に矢を放った。

 だが効かない。巨大すぎて、なんの影響もないのだった。


「まだ止まらないってわけ? だったら……」


 さっきよりももっと、とフランヴェルジュが神剣に力を込める。


「お待ちになって、フラン」

「なによ」

「様子が変ですわ」


 超巨大モンスターがぶるぶると震え出す。

 そして、とてつもない衝撃。

 強烈な揺れが地面を割って、戦士達の何人かは危うく飲まれそうになった。

 

 そして、怪物は動かなくなる。

 半壊した頭を力なく垂らし、再び動き出す気配はない。

 おそらくは、死んだ。全員がそう思った。 


「なんとか……なりましたわね……」


 地に倒れ伏す超巨大モンスターを見ながら、大きく息を吐く。

 何度も全滅の憂き目にあったが、これで一段落であった。


「殿下!」

「グレース! 無事でしたのね! それに、グレンザー伯も」


 揺れが収まったあと、グレースやグレンザー伯が駆けつける。


「他のみなさんは?」

「幾人かは……敵に」

「そう……でしたか」


 かなりの激戦だった。むしろこれだけの危機にも関わらず、全滅せずにすんだことが朗報だろう。


「皇女殿下、私はこれより罪人を追う」

「グレンザー伯?」


 『絶倒剣』トレーボルと『爆斧』バンダルは逃げた。

 いまは『大紅蓮』の面々が追っている。

 グレンザー伯はけが人で、本調子ではない。しかし、【神格】の所有者で超人。遅れをとる事はないはず。

 説明を聞いた皇女エリザベスは、目をつむり、すぐに開けた。


「おねがいいたします。あの方たちには背後関係やもろもろの諸事情をお聞きしたいところですわ」

「ええ、是が非でも」


 グレンザー伯は彼らにしてやられた。自ら汚名を雪ぐつもりなのだ。

 同時に、『絶倒剣』トレーボルと『爆斧』バンダルはは謎に包まれた敵の情報を持つ。絶対に逃してはならない罪人だった。


「ですが、お気をつけて。敵は未知数です。どうか、慎重に」

「おや? シント殿のような口ぶりですな」

「グレンザー伯!」


 エリザベスは頬を赤らめた。

 伯爵は皇女殿下の気持ちに気づいているのだ。

 からかわれたエリザベスは、ぷいっと別の方を向くしかない。


「グレース、おまえは生き残ったものたちをまとめ、拠点を用意しておいてくれ。村人たちのこともある。殿下と協議を」

「は、はい。閣下もどうかお気をつけて」

「心配するな。二度は後れをとらん」


 ニコリと笑って、駆け出す。


「殿下、行きましょう」

「待って。フランがいませんわ」

「公女殿下でしたら、あそこに――」


 グレースが指をさしたのは、超巨大モンスターの背だった。

 フランヴェルジュは、話している間に跳んでいってしまったのだ。


「グレース、みなさんを集めて、現況の確認を。フランはわたくしが」

「お待ちください、そんな」

「わたくしは平気ですわ」


 グレースの制止を振り切り、大ジャンプ。

 エリザベスは【神格】神剣カリバーンの所有者だ。普通の人間が止められるはずもない。


 フランは彼女にとって親友であり、気兼ねなく話せる唯一の人間である。

 なんとなく嫌な予感がして、すぐさま後を追った。


「あ、エリザベス、様」

「ダイアナ?」


 すでにシントのギルドのメンバーが上に来ている。


「あなた方も来ていたのですね」

「はい……シントが、あと、ディジアとイリアも、戻って、ません」

「なんですって?」

「きっと、まだ、戦っていると、思います」


 エリザベスは詳しい話を聞いた。

 シントは敵の首魁を追って、ここへ来たはずだという。


「みんなー! こっちにモンスターの死骸!」


 ラナが遠くから手を振る。

 全員が駆け出した。


「これは……なんという有様ですの?」


 光景を見たエリザベスは、目を疑う。

 大型モンスターの死骸が数十体。どれもが話に聞くような怪物とは違う桁外れの大きさだ。

 魔法による破壊の痕跡は、死闘を物語る。


「これを……シントたちが」


 フランは詳しく話さないが、彼女はシントに負けたのだという。

 それは、フランヴェルジュがシントのことを好きだから、全力を出せなかったとばかり思っていた。

 だが、そうではないのだ。


「そういえばみなさん、フランを見ませんでしたか?」

「いや、見てないさ」

「……来てるの?」


 ますます嫌な予感がしたエリザベスは、急に寒気を覚える。


「たぶん、あそこだろう」


 伝説的傭兵ガディス・ダーレストが指し示したのは、モンスターの背にある山だ。

 シントが気にしていた『図書館』と呼ばれる遺跡であることは、ここにいる全員が知らない。

 

「……崩れている。急いで行くぞ」


 ガディス・ダーレストが走り出し、全員がそれに続く。

 そして、そこには崩れ去った山を見て佇むフランの姿があった。


「フラン?」

「……」

「フラン、どうしたというのですか」

「エリザ、あのバカが戻って来ない」


 あのバカ、というのがシントのことだと、すぐにわかった。


「カサンドラ、アリステラ、手伝って。瓦礫をどかすわ」

「ああ、わかってるさ」

「……魔法でぶっとばす」


 シントとディジアとイリアは、まだ中で戦っている。

 ここにいるメンバーは、そう思っている。


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