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超巨大ミッション 27 今度はこっちの番

 俺たち三人による複合型広範囲魔法≪魔法剣爆マジックソード≫は、想像以上に効果を発揮した。

 中心部から広がる波動は、黄獣の塔を蹴散らし、モンスターの個々を破壊する。


 ラグナで同じ魔法を使用したが、あの時は手加減した。

 今は全力だ。

 爆心地に近いモンスターはバラバラになり、遠いモノも吹っ飛んだ。

 千匹近くはいたと思うが、そのほとんどを行動不能にする。


 奴らは俺たちを――いや、ディジアさんとイリアさんを甘く見過ぎなのだ。

 黒と白の魔力により衝撃。属性がないのに色が着くのは、あまりにも強い威力という証左だろう。


「まだ終わりではありません。残りを仕留めます」


 ≪領域障壁エリアシールド≫を展開。モンスターを俺たちとともに閉じ込める。

 一匹たりとも逃がすつもりはない。


 距離をとって一匹ずつ殺す。

 高度を落とし、顔面に気をつけながら、動いている黄獣を丹念に潰した。

 こいつら、喋れないのかな。断末魔を聞けないのが残念だ。


「逃げようとしませんね」


 残ったやつらは俺たちを感じ取るや否や、飛びかかろうとする。


「知性がないようです」

「動きがなんか気持ち悪いよ」


 俺も心からそう思う。

 こんな奴らに村人たちがやられたかと思うと、途方もない、熱くて黒いものが腹の底からわき上がってくようだった。


 あっちから来てくれるおかげで、手間がおおいにはかどる。

 一時間くらい経ったか。黄獣は全滅した。


 不確定要素がないのなら、空を飛べる俺たちの敵にはなりえない。

 これは、言ってみれば害虫駆除。いや、害虫にすら失礼かも。

 言い直そう。()()()()()


「次のステップに行きます。二人とも、油断のないよう」

「はい」

「うん」


 薄汚いモンスターなんぞには興味もなければ、余韻にひたることもない。

 俺たちはすぐさま、アルテト村へ針路をとった。



 ★★★★★★



 ほどなくして到着した村の上空。

 戦いはすでに始まっている。


「増援が来ていたのか?」


 明らかに敵の数が多い。

 とはいえ、押しているのはこちらだろう。

 

「まだ完全には解かれていませんね」

「あっちにハンマホウが残ってるよ!」


 イリアさんの指さす先は、超巨大モンスターだ。

 沈黙を続ける動かないモンスターの脇に、ドーム状の障壁じみたものがある。


「あれは」


 目をこらすと、『暴風雨テンペスト』ケルーガーさん率いる一団が、『絶倒剣』『爆斧』と戦っているようだった。

 分が良くない。

 戦っているのは、すでに彼一人だ。


「二人はカサンドラたちのところに加勢を。鎮圧したあとは超巨大モンスターの近くで合流しましょう」

「シント、一人では」

「だいじょうぶ。すぐに片をつけますよ。それに」

「どうしたの?」

「いくら俺だって、言いたいことの一つや二つ、あります」


 彼女たちは頭に?マークを浮かべているようだ。

 『絶倒剣』トレーボルと『爆斧』バンダル。彼らには言いたい放題にさせた。

 今度はこっちの番だ。



 ★★★★★★



 戦場へと近づく。

 ウチのメンバーは特に問題なさそう。ディジアさんとイリアさんが加われば、すぐにでも終わる。

 その他のところは少し苦戦しているようだ。相手が相手だけに、そううまくはいかないってことか。


 目下にいるのは、『絶倒剣』トレーボルと『爆斧』バンダル。そして、片膝をつくかっこうのケルーガーさんだ。


「くそ……伊達にオリハルじゃないってことかよ」

「若いの、おまえはよくやったよ」

「だが、相手が悪い」


 彼は見下ろされている。

 ケルーガーさんはたしかによくやっている。

 反魔法術の領域内で、死なずに済んでいるのだ。


 慎重に、とは言ったが、『絶倒剣』トレーボルと『爆斧』バンダルを前にして引けなかったか。

 飛翔魔法の高度を下げる。

 とうぜん、気づかれるのであった。


「ちっ……来やがったか」

「ふん」


 いったん二人を無視する。


「ケルーガーさん、無茶です」

「わかってるよ……けど、でかい首だ」


 たしかにそうだけど。


「俺がこの人たちを引き受けます。あなたは隙を見て装置を破壊してください」


 『絶倒剣』トレーボルと『爆斧』バンダルの背後には、黒光りする箱が置いてある。

 微かに動いている箱からは、ただならぬ力が発生していた。

 間違いなく、反魔法術の源。


「ところでお二人さん」


 と、声をかけてみる。


「なぜ、このようなことを」

「はっ」

「答える義理はないが」

「俺を嫌っていたのは、演技ですか? 隊を分裂させるための」


 聞いておきたいことだ。


「まあな」

「しかし、貴様は好かん」


 そんなに気に入らないのか。


「ああ、ムカつくぜ」


 やっぱりそーなんだ。


「ずいぶんと涼しい顔してやがんな。やっぱ反魔法は効かねえのか」

「めんどうな若造だ」


 彼らは口こそ笑っているが、目は鋭い。

 奇襲をかける隙はないだろう。


「あなたたちになにかした覚えはないのですが」

「はあ? ふざけんなよ、道楽野郎が」

「貴様は貴族だろう? だからごく短期間でオリハル級になりえた」


 そんなわけない。

 オリハル級という位置は、貴族だからといってなれるものではないだろう。

 それに、俺は貴族でもなんでもない。


「違いますけど」

「じゃあなんで皇女なんかと知り合える?」


 それについては何も言えない。


「遠い遠い遠い親戚なんですよ」

「ではやはり貴族ではないか」


 うん、たしかに。


「貴族が嫌いなのですか?」

「……そいつはどうでもいいこった」


 トレーボルの眼がさらに鋭くなる。

 嫌いなわけではないようだが、様子が変だ。

 どうにも複雑な感情のように思える。


「なあ、おまえ、ほんとうに貴族じゃねえってんならよ、わかるだろうが」


 なんの話だ?


「おれら冒険者がどんだけ等級を上げようが、ボケ貴族よりもたんまり稼ごうが、貴族御用達のレストランには入れねえ。服も仕立てられねえ」

「生まれがいいだけの雑魚が、我らよりも偉そうに街を闊歩する……怒りを覚えてとうぜんだろうに」


 今の社会には、トレーボルが言ったように明確な線引きが存在する。

 貴族ではない者が、一部のサービスを受けられないのはたしかだ。


「生きづらいことも、あるでしょうね」


 【才能】と血統は、帝国において最重要視される。

 何度も見てきたし、俺自身、考えることも多かった。


「おれらは【才能】と実績がある。それこそ、貴族のやつら以上にだ」

「舐められてたまるものか」


 悔しいのか、怒りなのか。根は深そうだ。

 皇女殿下に対して弓を引いたのも、それが原因だろうか。


「つまり、貴族になりたい?」


 聞くと彼らは笑った。ひどくつまらなそうに。


「なるのは貴族じゃねえ。王だ」

「新世界の支配者側に、我らは立つ。貴族は全て死ぬだろうな」


 なんだそれは。面白い冗談だな。

 今度はこっちが笑う番だ。

 

「王になりたい割には、品がない」

「……はあ?」

「なんだと?」

「モンスターと組むなんて、下の下だ。まあでも勝手にやればいいんじゃないですか? 民が誰もついていかないゴミみたいな玉座にぼけっと座っていたらいい」


 どす黒い、と表現できるくらいの魔力が立ち込める。


「あなた方が貴族だったとしても、さっき言っていた店には入れないでしょうね。なにせ、品がないのだし」

「……ぶっ……殺す!」

「後悔するなよ!」


 剣と斧が淡い光を放つ。

 言いたいことは言った。

 あとはやるだけだ。


「全力だ! 死ねえ!」


 すさまじい斬撃。生易しいものではない。

 紙一重で避ける。俺の髪の毛が数本、宙を舞った。


「くらえ!」


 間髪入れず飛び込んでくる『爆斧』。

 振り下ろされる凶悪な斧が迫ってきた。

 

 速い、が、後退はぎりぎり間に合う。

 彼らの強さは、まさにオリハル級。


 こっちは反魔法の領域のせいで、動きが鈍っている。

 だが、お互いに【才能】は使えないから、肉弾戦だ。


「あんまがっかりさせんなよ」

「それでもオリハル級か?」


 まったく、好き勝手言ってくれる。

 だが、いつまでその顔が続くか。


「≪魔錬体マジックボディ≫……」


 時間はかけられない。すぐに決着をつけさせてもらう。


「≪反魔法反魔法アンチドート≫!」


 さあ、ここから反撃といこう。

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