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超巨大ミッション 11 出発せし強者たち

 静かな夜――


 帝都学術院を出て夕食を終えた後、施設内の訓練場で軽く運動をし、体の調子を確かめる。

 特に問題は見当たらない。いつも通りだ。

 汗をかいたのでお風呂をいただき、さっぱりしてから割り当てられた部屋へと戻った。

 

「ん? フラン?」


 どうしてかフランが部屋の中にいる。

 ディジアさんとイリアさんが対面にいて、なにやらおしゃべりをしているようだった。


「遅いわよ」


 そう言われましても。


「子ども二人を置いて出かけるだなんて」


 赤みがかった金髪をかきあげて、不機嫌な様子だ。


「シント、フランは用があるようですよ」

「聞きたいことがあるんだって」


 そういえば昨日、あとで来るとかなんとか言っていたような。

 結局昨日の夜は来なかったので、忘れていた。


「聞きたいことって?」

「……あなた、エリザになにか言われた?」


 皇女殿下? なんの話だ?


「なにかって、なに?」

「例えば、今後のこととか」

「いや、特にはなにも。なんでそんなことを聞くの」


 フランは少し黙り込み、形の良いあごに手を当てている。

 いつもとはなにかが違う。そんな雰囲気だ。


「いいこと? 変なこと言われても無視するのよ?」


 変なことってなんだよ。


「あの子はね、昔から悪知恵がすごいんだから。ある意味ではアイシアお姉さま以上にね。だからぜーったいなにか企んでるに違いないわよ」


 はあ。なにがなにやら、わかりませんけど。

 

「エリザベス様がなにを言ってこようと、俺は仕事を遂行するだけだよ。そのために来たわけだし」

「ならいいけど」

「フランこそ、平気? 今回の相手はたぶんとんでもないと思う」

「わたしの方は別に。どんなに大きくても叩き斬るだけよ。あとついでに燃やすわ」


 あいかわらずのご様子。頼もしいとは思う。


「あなたこそ、余計なことは考えないほうがいいんじゃなくて?」

「うん?」

「二人から聞いたわ。遺跡を調べようとしているみたいじゃない」

「そうだね」

「調べてどうするわけ?」


 まだたいしたことは言えない。ただ、どうしても気になるんだ。

 ドレスラー氏から得た情報で、ますます疑問が強まった。


「少し気になる話を聞いた。もしかしたら、【神格】が関わっているかも」

「……なんですって?」


 聞いたことをざっと話してみる。

 フランはなんとも言えないような複雑な顔となった。

 

「どういうこと?」

「まだわからない。だから、いま気にしているのは別のことだよ」

「なんの話よ」

「饗団」

「――!」


 【神格】があるところにわいてくる例のヤツラだ。

 そもそも、饗団はモンスターとの関りが深い。突如として動き出した超巨大モンスターと関係があっても不思議ではない。


「帝都の近くで【スタンピード】でも起きたら、まずいことになるしね」

「はあ……頭が痛くなってきたわ。エリザにこのことは?」

「まだ言ってない。確証があるわけじゃないから、うかつなことは言えないよ」

「そう」


 んん? 少し機嫌がよくなったぞ。

 フランは昔からころころ気が変わるから、会話が大変なんだよな。

 しかし、それを言ったらダイアナ意外の四姉妹はみんな同じようなもんだし、いまさらだけど。


「話は変わるけど、アイシアやウルスラやデューテは元気?」

「あいかわらずよ。けど、最近は戦もないし、暇そうにしてるわね」


 聞けば、ヴァルハリアン討滅のあとは海賊も辺境に潜む反政府主義の賊もおとなしいそう。

 それこそ下手に暴れれば四人の【神格】所有者を相手にしなければいけないわけだから、平和にもなるだろう。


「そっちはどうなのよ」


 聞かれて返答に困る。

 いつも通り、と言いたいところだけど、話しておいた方がいいかもしれない。


「他言無用でおねがいしたいんだけど」

「なに? 秘密ってこと?」

「話すんなら、【神格】の所有者だけにしてほしいんだよね」

「……穏やかじゃないわね」


 年が明けてからラグナへ行ったこと、そして起きたことを話す。夜だから手短にした。ディジアさんとイリアさんももう寝る時間だ。


「反魔法の装置ですって? なによそれ」

「おじい様でさえ、動けなかった代物だから、気を付けないと」

「そうだけど……それ、ほんとなの? ラグナで反乱? なにも聞いてないのだけれど」

「そりゃそうだよ。かん口令が敷かれたはずだもの」


 フランは眉間にしわを寄せて、口を閉じた。聞いたことを噛み砕こうとしているのだろう。


「シントは二部門で優勝しました」

「すごかったんだから」


 二人とも、それは言わなくていいことです。


「はあ? あなた、なにしてるのよ。公子に戻ったってこと?」

「それは全力で否定する。仕事で行っただけ」

「ラグナのヒトたちをけちょんけちょんに」

「けちょんけちょん!」


 けちょんけちょんて。いつ覚えたんだそんな言葉。


「ちょっと! かなり話を端折ったわね?」

「だってもうこんな時間だからね」

「まだそんな時間じゃないでしょう」


 いやー、もう寝たいのだが。


「今度話すよ」

「しかたないわね」


 諦めてくれたみたいだ。

 まあ、まだ話したそうだったけど、彼女も眠くなったんだと思う。



 ★★★★★★



 明くる日の朝となる。

 早めに出て、帝都の西大門へと向かった。

 ほぼ同じタイミングで今回の仕事に携わる者達が集まってくる。


 着いた後、数分とたたずにグレンザー伯爵がやってきた。

 背に着けている槍がただならぬ威風を放つと、冒険者たちからどよめきが起きる。


「あれが【神格】神槍ゲイボルグ」


 実物を見るのは初めてだ。

 一言では言い表せない凄まじい力を感じた。


「みな、早いな」


 右手を挙げて、明るく挨拶をしてくる。陰気さの欠片もない人だ。

 兜からこぼれ出るくすんだ金髪がチャームポイントだな。


「紹介しよう。我が家の精鋭たる『大紅蓮だいぐれん』の者たちだ。今回、調査に加わる」

「よろしくお頼み申す」

「よう、よろしくな」

「……馴れあうつもりはない」

「ちぃーっす」


 グレンザー伯のお供らしき四人がそれぞれ挨拶をする。

 全員が槍を持ち、屈強な体格をしている。みんな強そう。


 彼らを中心に冒険者たちが軽い打ち合わせをやっていると、グレースさんがやってくる。

 今回の調査における団長は彼女ということになっていた。


 きびきびとした姿勢でグレースさん立ち止まり、集まった面々を眺める。

 隣にはフランがいて、その背後に……フルフェイスの兜をかぶった女性騎士……が一人、さらに重装の男性騎士が一人。

 最後尾にいるのは巨大な荷物を背負った男性二人だ。武装をしていないところから、彼らはいわゆるポーターというヤツだろう。


「全員そろったか。ではさっそく出発しよう。ミーティングについては宿場町に到着してからとする」


 今から出発すれば、夕方には着くとのことだ。

 本番はそこからだろうと思う。


(シント、なにやら変です)

(変なヒト、いるね)


 ああ、二人はさすがに気づいたか。

 いやもう、なんなのマジで。

 これもツッコミ待ちか?


「とりあえず気にしないでおきましょう」

(ところで、わたくしたちはいつ出ていいのですか?)

(いま出ちゃだめ?)


 ディジアさんとイリアさんは本来なら参加していないことになっている。

 タイミングとしては、宿場町に着いたあとでいいだろう。他の人たちを驚かせたくない。


「今のうちに休んでおいてください」

(わかりました)

(はーい)


 彼女たちは切り札だ。温存しておくのがいい。


「……アーナズ殿。誰と話しているのだ?」


 おっと、グレースさんににらまれてしまった。

 

「すみません、独り言です」

「いまのが……?」


 ますます怪しまれてしまう。

 気をつけないと。


 とにかくもこうして調査団は出発することとなった。

 様々な地域から集められた冒険者たちがおおよそ五十名。帝国軍からはグレンザー伯とグレースさんの隊を合わせて十名。プラスでフランだ。


 豪華なメンバーとはいえ、油断はできない。

 気を引き締めていこう。

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