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超巨大ミッション 6 最強メンバー

 今回の依頼は、かなりの高難度になりそうだ。

 人選の発表とは言うが、等級の高い順ならばすでに決まっている。

 ただ、ちょっとだけ異例というか、向こうからの指名があったのだけれど、それは最後にしておこう。


「まずはアリステラ、カサンドラ。そしてラナとダイアナ」

「やるさ」

「当然」


 二人はウチのエースで柱だ。もちろん連れて行く。


「帝都なら案内できるよー。それに調査ならわたしたちの出番だもん」

「が、がんばり、ます!」


 等級の高さに加え、調査能力が抜群の二人だ。連れていかないわけがない。


「それともう一人」

「シント? 五人までじゃないの?」


 ラナが首をかしげた。

 

「ごめん、説明し忘れた。実は向こうから指名があってね」


 特別に一人、指名依頼となる。


「是が非でもガディスさんに来てほしいって」

「おれか」


 一か月ほど前に新加入したガディス・ダーレストさんに名指しの依頼が来たのだ。


「まさか帝室の依頼とはな」


 さすがに全員がどよめく。

 彼は冒険者になったばかりだから、等級は一番下のブロンズ級シングル。

 だが、等級以前に伝説の傭兵として名が轟いていたから、とうぜんかもしれない。


「どうしますか? 俺の方から断りを入れてもいいですが」

「いや、行こう。おまえに恥をかかせるわけにはいかん」


 決まったな。


「メリアム、すまないが少しの間ミコを頼めるか?」

「ええ、もちろんですわ、小父さま。ミリアも喜ぶでしょうしね」


 ガディスさんの娘のミコちゃんと、メリアムさんの娘のミリアちゃんはほぼ同い年で仲が良い。いつも一緒に遊んでる。


「というわけで、俺、カサンドラ、アリステラ、ラナ、ダイアナ、それとガディスさんで行くよ。なのでリーア、本部マスターを頼む」

「うわっ、きた!」

「副マスターなんだから、とうぜんでしょ」

「そうなんだけど、うん、緊張してきたわ。姐さんたちも、グイネ姐さんもいないなんて」


 いつもは度胸の塊なのだが、今日は妙にしおらしい。


「なんとかなるさ」

「……任せた。でも評判落としたら説教」

「ちょっ……重圧かけないでよ!」


 ここでようやく笑いが起きる。

 少しは緊張がほぐれたか。


「ミューズさんの話をよく聞いてやればだいじょうぶ。それと、困ったらテイラー夫妻を頼ってくれ。テイラー夫妻、リーアの補佐を頼みます」

「お、おう」

「まあ、やるしかないわよね」


 俺たちがいなくても回るかどうか、楽しみでもある。


「く~~、お供できないとは」

「クロードは働きすぎニャ」


 残念そうなクロードさんに、それをたしなめるクロエさん。


「いいえ、クロードさん。状況次第では全員招集になります。あなたの力はその時に」

「……! わかりました!」


 予定では十日間。しかし、延びる可能性も充分にある。そして、超巨大モンスターの正体と目的次第では、全員であたらねばならないだろう。


「行くメンバーは準備をおねがいします。残るメンバーも心の――」


 と、隣にいたディジアさんがそでを引っ張ってくる。


「わたくしたちは?」

「行くし」


 いや、五名までなんだけど。


「今回は残ったほうが」

「いやです」

「だめ」

「しかし」

「シントが心配なのです」

「また無茶するかもしれないし」


 思いつきで言っているわけではなさそう。

 どうしようか。

 連れていくべきか、いかざるべきか。

 戦力としては申し分ない。今回の人選だと純粋な魔法士は俺一人だ。後方からの援護が足りないとは思う。


「シントー、連れてったら?」

「ラナ」

「……わたしもそれがいいと思う」

「アリステラまで」


 二人はなにかを予感している?


「あたしも賛成だねえ。最近のあんたは先に行きすぎな気もするし」


 カサンドラが真面目な口調で言った。

 先に行きすぎとはまた、なんて返したらいいかわからない言葉だ。


「シント、空、飛べる、から、追いつけるの、二人だけ」


 たしかにそうかも。


「わかりました。なんとかしましょう」

「ええ、おねがいします」

「やったー!」


 置いていったらいったで、心配がある。

 最悪、空間の移動で帰せばいいわけだし。でもあれだな。ディジアさんも空間の移動ができるからすぐに戻って来てしまうか。


「じゃあ、改めておねがい。全員招集もあり得るから、そのつもりで」


 全員がうなずき、この場は解散となった。

 依頼に臨むメンバーはさっそく準備を始めるだろう。

 

 あっという間に会議室は静かになり、俺とディジアさんとイリアさんだけになる。


「シント、帝都とはなんなのですか?」

「この国の首都で、皇帝陛下が住んでいます」

「こうていへいかって、ヒト?」


 そういえば二人はなにも知らない。


「人ですね。しかも一番偉い」

「へー、偉いんだ。でも変な名前だね」

「『コウテイ・ヘイカ』とは聞き慣れない名です。それと言いにくいです」


 思わず苦笑してしまった。


「いえ、本当の名前は『ランスロート・オーギスケル・チャールズ』。ランスロート三世とも言いますね」

「……長いです」

「長いよ」


 うん、そうなんだけど。


「この世界でもっとも古い街ですから、歴史も長く、名所がたくさんありますよ」


 行ったことはないんだけど、話にはよく聞くし、俺が読んだ本の中にもいっぱい出てくるから、行ったことがあるような気になってしまう。

 帝国中の名だたる貴族が別宅を持ち、中央には宮殿があるはずだ。

 想像していると、少しだけわくわくしてくるのであった。


「それと、流行の最先端でもあるので、ここでは見られないモノもあるでしょう」

「では……」

「お菓子も?」


 やっぱりそれだよな。


「ええ、おそらくは」


 二人の目が輝いている。

 仕事で行くのだけれど、しかたないか。

 俺は俺で帝都での食事が楽しみなのであった。



 ★★★★★★



 そして五日後――


 選抜したメンバーたちには抱えている案件を片付けてもらい、憂いのない状態での出発となった。

 みんなが仕事をこなしている間、俺は俺でいろいろと準備を行う。キャンプのためのテント、調理器具、ロレーヌ伯爵から医薬品を多めに融通してもらう。

 それと、忘れちゃいけないのは食材。できる限り大量に用意する。これは決して俺が食べたいわけじゃない。冒険者として、プロとして必要なものなのだ。そう、決して自分のためじゃない。

 今回の仕事は未知数。備えあれば患いなしってことだね。


 今回は割と急ぎだから蒸気機関車は使わず、≪空間ノ移動(ジャンプ)≫の魔法にて移動を行う。

 帝都に住んでいたというラナの記憶を頼りに、瞬間移動。

 有名な観光名所である『三尖塔さんせんとう』前へと到着する。


「おー、これが三尖塔」


 そびえ立つ白亜の塔が三つ。かつては身分の高い者を幽閉していたとか。

 一目見ただけで歴史の重さを感じさせる重厚な施設だ。

 現在は博物館となっていて、多くの旅行者でにぎわっている。


「こうも一瞬だと、旅という感じはまったくしないな」


 全身に武器をフル装備したガディスさんが呆れと感心を同時に発動させていた。


「ガディスさんは帝都に来たことがあるんでしたっけ」

「ああ、そうだ。だが長居したことはない」


 たいした感慨はなさそう。


「でもこの空気、懐かしいよ」

「ラナは住んでたんだよね」

「追われる前まではここに家があったんだー」


 彼女と彼女の父親であるウィリアムさんは、スパイだった。

 帝国のスパイとしてガラル公国に潜り込み、そこでもスパイとして雇われていたという。

 二重スパイというあまりに危険な仕事を、よくやっていたものだ。

 実際、それがバレて追われ、逃げた先であるダレンガルトの町で俺と出会ったわけ。


「行ってみる?」

「いいよ。もうないし」


 ちょっと寂しそう。


「……」


 ふとダイアナに目を向ける。

 彼女は顔を覆うマジックゴーグル越しに、三尖塔を見つめていた。


「ダイアナ?」


 彼女はガラル公国の元公女だ。帝都へは来たことがあるのだろう。もしかして、思い出深い場所なのかな。


「あ、うん、ごめん、なさい」

「どうしたの?」

「窓に、子どもが二人」


 え?

 窓って、どの窓?


 三尖塔にはたくさんの窓がある。

 ほとんどが閉まっているはずだが。


「ううん、なんでも、ないの」

「……それ、ほんとに人?」

「アリステラ、やめておくれ。夏ならともかく……」


 カサンドラが体をぶるっとさせた。そういや彼女は怖い話が苦手なんだっけ。


「あー、でもここって皇族の人たちが政変とかで幽閉されてるし、死んでるもん。()()って噂あるよ?」


 そーなんだ。

 たしかに皇族ともなれば強力な【才能】を持つ人も多いだろうし、死後によくない魔力を残してしまい、ゴーストと化してしまうことだってあるだろう。

 とはいえ出たとしても吹き飛ばすだけだが。


「大きな街なのに、フォールンとはずいぶんと違うのですね」

「なんか静かっていうか、空気がきれいな感じするー」


 ディジアさんとイリアさんは周囲を珍しげに見ていた。

 二人の言う通りで、空気もそうだが、魔力も澄んでいる気がする。


「シント、集合場所に向かうのかい?」

「ああ、そうしよう」


 観光は終わってからでいい。

 いまは指定された場所へ行こうと思う。

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