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光を求めて 4 海中探索

 天気は快晴。

 浜辺に吹く強い風のせいで寒さは感じるものの、明るくていい感じだ。


 間近にある半島を見下ろす形で、宙に浮遊している俺たちは、海中へ入る準備を始めた。


「作戦通りに行きます。心の準備はいいですか?」

「もちろんです。行きましょう」

「はやくはやく」


 わくわくしているのは俺だけじゃないようだ。


「ではいきます。≪全方位障壁オールシールド≫」


 ぎりぎりまで範囲を広げた全方位シールドは三人でも十分に動けるスペースがある。

 飛翔の魔法を解いてもらい、魔力の球に包まれたまま、海中へと侵入。


「思ったよりも浅い」


 下を見れば、すぐに底が見えた。

 

「透明度もすごい」


 太陽の光が差し込んで、海の中はとても明るかった。

 沈みゆく俺たちの上方を、魚の群れが横切っていく。


「お魚がたくさんいます」

「海の中って、すごい」


 白い砂地の海底に到着。

 小さいカニとかエビみたいな生き物が逃げて行った。

 さあ、ここからが本番だ。


「ディジアさん、イリアさん、おねがいします」

「やってみましょう」

「こっちもいいよ」


 俺たちが知恵を出し合って考えた魔法による海中遊覧。

 まずは俺が障壁による密閉空間を作り出し、海底まで行く。

 その後、ディジアさんが後方へ炸裂を呼び起こす≪闇発破ダークプロード≫を撃ち、反発で推進力を確保。

 イリアさんは光剣を操ってもらい、舵取りや櫂代わりとし、方向転換とブレーキを担う。


 問題の呼吸についてだが、これはまあ、強引というか、なんというか、あらかじめ用意しておいたでかい袋に空気を入れておき、それを≪次元ノ断裂(ディメンション)≫にたくさん収納してある。

 空気が薄くなり次第、順次解放していくというプランだ。


「いきます。≪闇発破ダークプロード≫」

「うわっ!?」

「うっひゃー!」


 勢いが強すぎる。

 そのまま真っすぐ進むつもりが、あまりの推進力にごろごろと回転して突き進んだ。


「イリアさん! ブレーキ! ブレーキ!」

「目が回るー! えーい!」


 シールド越しにぶすっと光剣を海底に突き刺す。

 でも転がる。

 岩壁に当たってようやく止まった。


「二人とも、だいじょうぶですか?」

「だいじょうぶです。すみません、強すぎました」

「ディジアったら、ぶっ放しすぎ」


 ちょっと加減をミスったみたいだ。


「向きを変えましょう。発光体が入った場所は近いはずだ」


 岩壁に到達したのは、不幸中の幸いだろう。

 このまま沿っていけば、わかりやすく探索できる。


 と、いうわけで探索を開始。

 陸の上とは別世界のようだ。


 ディジアさんとイリアさんはすぐにコツを掴み、力を調整している。

 ゆっくりと進み、ときおり空気を足しながら、海中遊覧を満喫した。


 いや、満喫してどうする。

 探すのは発光体だ。


 しかしながら、青い海と上から差す光。色鮮やかな魚たちや、岩に群生する生き物たち。幻想的な風景は見てて飽きない。


 それから一時間くらい、海の中を探索。

 気になるものは、いまのところなかった。

 だが、終点と思わしき岩壁に囲まれた箇所へたどり着いた時、ようやく意味のありそうなものを発見する。


「横穴、か」

「入れるのでは?」

「あそこに行くの?」


 岩壁ぽっかり空いた穴だ。

 海底洞窟ってところかな。

 少々危険だが、行くしかないだろう。≪空間ノ移動(ジャンプ)≫という手段があるから、危ない時はすぐに戻る。


「ディジアさん、最小限の出力で魔法を。慎重に進みましょう」


 ゆっくりと横穴の中へ。

 少し進むとゆるやかな登坂になっていた。


「さすがに暗いか。イリアさん、もう一本光剣を出してくれませんか」

「おっけー」


 イリアさんの剣魔法は攻撃するだけじゃない。光源にもなる。

 明かりに照らされたとたん、魚たちが脇を通り過ぎていく。

 

「なにあれ。すごいうねうねしてたよ」


 たしかに。

 蛇みたいな魚がいた。

 それとも海の中に住む蛇なのか。


 そのまま進んでいく。

 すると――


「地上に出る?」


 海面が見えた。

 どうやら、海底洞穴は地上につながっていたようだ。

 シールドを維持しつつ、海から上がる。

 暗いからなにも見えない。


「まだ洞窟内みたいですね。≪照明之灯(ライトトーチ)≫」


 シールドを解き、今度は照明の魔法を使う。

 周りに見えるのは、普通の洞窟だ。

 だけど、妙に蒸し暑い。空気がまとわりついてくるようだった。


「光のタマはいなさそうです」

「うーん、ここじゃないってこと?」


 二人は口をとがらせている。

 

「まだわかりませんよ。捜してみましょう」


 お次は洞窟探索となりそうだ。

 とはいえ、見るかぎりじゃなにもなさそうなんだけど。

 いちおう警戒しつつ、道なりに進んでみた。


 危険は感じない。

 生き物もあまり見かけないしで、自然と会話が弾んだ。

 それからまた体感で一時間くらい歩き、気になるものは発見できずにいた。


「ん、出口か」


 奥の方に『外』があった。

 少しばかり暗いけど、間違いなく外だ。

 結局、洞窟は地上につながっており、海底から行く必要はなかったってことか。

 なんとなく残念に思いながら、外に出る。

 

「……?」

「よく見えませんね」

「なにこのもやもや」


 外に出て、異常に気づいた。

 霧だ。

 かなり濃い霧が発生している。


「ここはどこだ?」


 海中へ入った場所と、そこから進んだ方角。それと洞窟内での歩み。

 たぶん、俺たちは東に進んでいたと思う。

 少なくともオウラスワンプから離れた。だとすると、ここは半島ではない?


「まいったな。ぜんぜん見えない」


 霧が深すぎて、数メートル先しか見えなかった。

 どこかの森の中だとは思うが、場所はわからない。

 まずは俺たちがどこらへんの地上に出たのか、それを確認しよう。


「ちょっと行ってきます。すぐに戻りますので」


 返事を待つ前に、上空へと飛翔する。

 魔法で作り出した黒の翼をはためかせ、真っすぐに上へ。

 やはり空も霧が濃い。


 ……

 …………

 ………………


 霧が晴れないな。

 ずっと上に行けば、さすがに下を見渡せると考えたのだが。


「あれ?」


 おかしくないか。

 いま俺は、上空へ飛び続けたはずなのに。


「なんで降下をしてるんだ」


 背筋に寒気が走った。

 上へ飛び続けたはずなのに、気がつけば地表が見える。

 ディジアさんとイリアさんがそこにいて、見上げていた。


「シント、どうでしたか?」

「いえ……」

「どうしたの?」

「すみません、もう一度」


 再び上空へ。

 しかし、結果は同じだ。


「二人とも、俺の代わりに上へ飛んでくれませんか?」

「ええ、いいですよ」

「ほんとにどうしたの?」

「とにかくおねがいします。速度はあまり出さずに、ゆっくりで」


 首をかしげつつ、二人は飛んでいった。

 しかし。


「……どういうことでしょう」

「あれー? なんで戻って来たの?」


 やはりだ。俺だけじゃない。降りて来た二人は怪訝な顔つきで、腕を組み、形の良いあごに手を当てている。


「わたしたち、上に行ったのに」

「でも、下に向かって? 変です、シント」


 まずいな。

 ありえないことが起こってる。


「錯覚か? 霧のせい……かも」


 なぜかはわからないが、方向感覚が狂っている。

 どうしようかな。洞窟を通って戻ってもいいが。


「霧と言えば、この前に聞きましたね」


 ディジアさんがそんなことを言う。

 記憶をたどると、たしかに聞いた覚えがあった。


「酒場で聞いた話か」


 半島の先にあるという小島の町『ストンロウル』だ。

 霧が深くて、行くのが難しいとか言っていた。

 

 俺たちが海中へ入った場所は、半島の岬近く。

 そこから東に進んだのなら、いつの間にか島にたどり着いていてもおかしくはない。

 海底洞窟は島につながっていたと考えるのが自然だ。


「一度戻ったほうがいいかも」


 ここがどこなのか確定しないのが、不安すぎる。

 探索を続けたいところだが、霧が邪魔すぎるのだ。


 とりあえずディジアさんとイリアさんも一度戻ることに異論はないようで、さっそく来た道を戻ろうとした。

 霧をかき分けるようにして、進む。

 進むのだが――


「なんだ?」

「シント?」

「待ってください。おかしい」


 すぐ背後にあったはずの、洞窟への入り口がない。

 代わりに現れたのは、木々がまばらに生える林だ。

 急に嫌な予感が募りまくる。


「ますますありえないぞ。どうなってる」

「どうくつ、ないね」

「道を間違えたのでしょうか」


 そんなはずない。俺たちのすぐ後ろに斜面があって、くだったところに洞窟への入り口があったはずだ。

 なんなんだこれ。上空へも行けないし、なにが起こっている。


「まさかとは思うけれど、この霧が原因か?」


 思いつくのは、魔法での攻撃。

 俺たちを包み込む濃密な霧自体が魔法によるものかもしれない。

 あるいは、以前に出会ったモイーズさんやランパートのような他に類を見ない異能である可能性だってある。


「つまり、閉じ込められた?」


 だめだ。可能性を挙げたらきりがない。

 と、ここで異変が起きた。

 少し離れた位置から人の悲鳴のようなものが聞こえたのだ。


「いまのって」

「悲鳴に聞こえましたが」

「行きたくないけど、行くしかないでしょうね」


 ここにいたってどうしようもない。

 危険は承知だけど、行ってみることにした。

 

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