表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/648

ファミリアバース 47 最強のブロンズ級・Ⅰ まずは奇襲


 明かりに照らされる大きな建造物。

 新市街の奥まった場所にある倉庫を前に、俺は一度立ち止まった。

 ラナの情報では、ここに『邪魔導(じゃまどう)』という異名を持つ賞金首がいるはずだ。


「≪透視(クリアアイ)≫」


 透視の魔法で倉庫の中を見る。

 壁の向こう側には、おおよそ六十人の悪徒がいた。


 その他に武装していない人間が同じくらいいる。

 彼らは客だ。

 ここは賭博場だという話だから、みんなカードを手に、テーブルを囲んでいるのがわかった。


「二人とも、準備はいい?」


 横に並ぶアリステラとカサンドラに声をかける。


「もちろんさ」

「……問題ない」


 彼女たちはさすがゴールド級冒険者だけあって、緊張していない。

 むしろ魔力がたかぶっているくらいだった。


「狙いはワルダ一家の幹部で頭脳役、ユーテラ。二階にいるのがそうだと思う」


 上階で酒を飲みながらくつろぐ男。黒いローブを身に纏い、彼らの中では一番魔力が大きい。


「シント、ちょっと聞いていいかい?」


 カサンドラが尋ねてくる。


「なんで見える?」

「シントは目が良い」


 俺の代わりにアリステラが答える。

 そういえばマールの農園に行った時、彼女にも同じことを聞かれたな。


「限度があるだろうに。魔法かい?」

「うん、そう。透視できるんだ。ただ使い過ぎると目がめっちゃ痛くなる」

「はー……あんたはなんでもできるんだね」


 それは買い被りだ。なんでもできるのなら、ラグナ家を出ることもなかった。


「魔法士は俺が引き受けるから、手筈通りに頼む」

「……うん」

「任せな」


 みんなで考えた作戦を実行する時だ。

 術式を構築。そして発動。


「≪発破(エクスプロード)≫!」


 属性のない純粋な魔力の炸裂が、倉庫の二階、ユーテラのいる部屋だけを吹き飛ばす。

 魔力の揺らぎを感じ取ったユーテラらしき人物はとっさに障壁で身を守り、外に飛び降りた。


 悪人とはいえ、異名を持つ魔法士だ。これだけで倒せるなんて思っていない。

 炸裂により、賭博場が騒然とする。


 奇襲の第一段階は成功。

 次は――


「行くよ! アリステラ!」

「了解」


 二人が倉庫内に斬りこむ。

 圧倒的な数の差は、奇襲によって補う。

 ユーテラ以外に注意するべき敵はいない。予想外のことが起こらない限りは彼女たちがやってくれるだろう。


 そして俺は賞金首を狙う。

 黒いローブの男が、倉庫の外に降り立ち、こちらに気がついた。


「なにが起こった……貴様は、誰だ?」


 ひょろりとした目の細い男が、聞きながら魔法を発動する。

 空を切り裂いて飛ぶ風の刃は≪ウインドカッター≫。


「≪魔障壁(マジックシールド)≫」


 風の刃を障壁で防ぐ。

 霧散したウインドカッターは、辺りに魔力の残滓(ざんし)を漂わせた。


「あなたがユーテラ?」

「……こちらの質問に答えてもらおう。貴様は誰だ、と聞いている」


 彼は名乗らなかった。お返しというわけではないが、こちらは名乗ろう。

 

「シント・アーナズ。冒険者。賞金首を退治にしにきたんだ」

「……魔法士か」

「ええ、あなたもでしょ?」


 返事はない。代わりにユーテラの魔力が高まる。

 お互いの腕が動いたのは同時だった。


「≪ウインドカッター≫!」

「≪真空之刃(バキウブレイド)≫」


 風には風を。

 途中でぶつかり合う魔法の風。

 ユーテラの放った≪ウインドカッター≫が切り裂かれ、こちらの風刃が彼を襲う。


「くっ! ≪ウインドシールド≫!」


 彼はぎりぎりで障壁を展開したが――


「なにっ!?」


 ≪真空之刃(バキウブレイド)≫がユーテラの障壁を寸断。彼の頬をかすって、背後の残骸をバラバラにした。


「な、なんだ!? 障壁が斬られただと!?」


 魔力の練りが甘い。


「なんだ貴様……今の魔法はなんだ?」

「小手調べだ。あなたの実力はわかったので、ケリをつける」

「なん……だと」


 再び≪ウインドカッター≫を撃ってくる。

 もう遅い。


「≪魔弾(マジックショット)≫」


 魔力弾が≪ウインドカッター≫を弾き、ユーテラの腕に当たった。

 骨の折れる音が聞こえ、彼はうめき声を上げる。


 しかし、さすが異名を持つ魔法士だ。痛みをこらえながら、左手で魔法の発射体勢に入っている。

 

「≪魔弾(マダン)≫」


 挙げた腕を撃ち抜く。

 両手を使用不能にされたユーテラは、肩を落として膝をついた。

 

「速すぎる……どうなっているんだ……」

「最後に魔法を練習したのはいつ?」

「……な、なに?」

「練習をしないから、魔力の練りは甘いし、発動までが遅いんだ。俺が速いんじゃない。あなたが遅すぎるだけ」

「おれが……遅い? はは……」


 泣きそうになりながら乾いた笑いを見せるユーテラに向かって≪衝波(マジックインパクト)≫。

 衝撃波が彼を真上にブッ飛ばして、魔法戦は終了。


「悪事なんかしないで、魔法の練習すればいいのに」


 今度は倉庫の方に目を向けた。

 男の叫び声が聞こえて、やがて静かになる。

 あっちも終わったか。


 少ししてアリステラとカサンドラが出てきた。

 怪我はないみたいだし、返り血すらかぶっていない。


「シント、こっちは終わったさね」

「そっちは?」

「おつかれさま。こっちも終わってるよ」


 倉庫内には六十人くらいの悪徒がいたはずだけど、もう倒したのか。

 強いとは思っていたけど、さらに評価を改めよう。

 彼女たちは相当やる。


「あっちは雑魚ばかり」

「まあ、肩慣らしにはなったさ」


 予想以上の戦果だと思う。

 賞金首ユーテラを≪次元ノ断裂(ディメンション)≫で作った穴に放り込み、回収。再起不能になった男たちも全部穴に入れる。

 誰もいなくなった賭博場を魔法で破壊し、仕事を完了した。


 しかし、思ったより早く終わったな。

 どうしようか。


「シント、なに考えてるの?」

「嫌な予感がするんだけどね」


 嫌な予感? いえ、良い予感です。


「もう一つのアジトも潰しておこう」

「人使いが、荒い」

「いいさ。やろうじゃないか」


 作戦変更。

 一日ずつ力を削いでいき、追い詰める手筈だったけど、今日で敵の両翼をもいでやる。


「やるからには徹底的に。二度と戦いたくないと思わせるように」


 小さい時、おじい様に教わった言葉だ。

 

 次の標的は『皮剥ぎ職人』ダンガズ。

 俺たちは互いにうなずいて、ワルダ一家のアジトに向かう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ