表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
539/606

ナイトオブザナイト 15 闇に迫る

 来た道を急いで進み、カジノへと戻る。

 途中、倒れていた警備員を助け起こし、事情を聞いてみた。


 彼らは冒険者風の男が突然ドアから現れ、攻撃をしてきたという。

 大きなケガがなかったのは幸運だと思う。殺されていてもおかしくはなかったわけだし。


 ほんとうに憲兵隊を呼ばれてもめんどうが増えるだけなので、さっさと退散しよう。

 ランパートはもういない。いまごろはもう追いつけないところに行ったはずだ。

 悔しいけれど、地団駄を踏んでいる余裕はない。


 鉄網のリングがあるところへ戻ると、驚きの光景が待っていた。

 ダグマさん、グレイメンさん、クロードさん、そしてアミールが一人の男を取り囲んでいる。

 その周りには数十人もの男たちが倒れており、みんな気絶していた。


「みんな、これはいったい」

「おう、ハイマス」

「戻ったね」


 囲まれているのはダンダースだった。彼は両膝を床につき、両手を挙げている。

 

「ダンダースを囲んでいるのはいいとして、他の人たちはなぜ気絶を」

「ああ……その、なんだ」


 ダグマさんの歯切れが悪い。


「戦っていたら、その、ヒートアップしてしまって。鉄網は倒れましたし」

「見物人も巻き込んでの乱戦になってしまったんだよ」


 グレイメンさんは気まずそうな顔だ。

 よく見るとみんなボロボロ。アミールは無事だが、苦笑いの顔だ。


「見物していた人たちもずいぶんと熱くなったようで、大乱闘でした」

「なるほど」


 何十人もの男たちが入り乱れる大殴り合いとなったらしい。


「そっちはどうだった?」

「まんまと逃げられました。すみません」

「謝ることじゃないが……ハイマスが逃がしただなんて、とんでもねえヤツだ」

「同感です」


 いや、俺の落ち度だ。目の前まで迫りながら、してやられた。


「ですが、代わりにいろいろとわかりました」

「さすがだね。ところで、この男はどうするんだい?」

「せっかくですし、尋問しましょうか」


 ランパートには逃げられたが、副官は捕らえた。しかも二度目だ。


「また置いていかれましたね」

「また、だと? おまえは誰だ。妙な黒兜」

「お忘れですか? トライアド山で会ったでしょう。ダンダースさん」

「……げっ」


 ぎょっとするダンダース。


「僕のことは覚えていないようですが」

「悪いな。男の顔を覚えるのは特に苦手だ。お坊ちゃん」


 ほんとは覚えてるんじゃないのかな。

 あの時もクロードさんのことをお坊ちゃんと呼んでたし。


「あなたはどうして生きているのですか?」


 聞いてみる。

 ダンダースは露骨に嫌な顔をした。


「ずいぶんだな。おれが生きてちゃ悪いか」

「いえ、そうではなく。饗団は失敗した者を許さないはずだ」

「まあな。トライアド山から逃げたあと、おれは足を洗い、そこら辺の町でぶらぶら気楽に暮らしていたんだが……」


 追われてるヤツが気楽にぶらぶら暮らすなよ。


「しばらくしていきなり隊長が来て、仕事だと言われた。しかたなく一緒に来たのさ」


 この人、主体性がないっていうか、ダメな大人なのでは?


「ここへはなんの仕事で?」

「ただの警護だよ。隊長の」

「警護なのに、なんで賭け試合に出る」

「隊長が退屈だから出ろと言ってきた」


 アホなの? 


「王者になったら、自由にしてやると言われたからな」

「そういうことでしたか。で、他には? 饗団はなにをしようと?」

「そこまでは知らんさ。隊長の【才能】が必要らしいが、たいしたことは知らん」


 以前と同じく、けっこうしゃべってくれる。

 

「知ってることを全て話したら、解放しますけど」

「ハイマス!?」

「逃がすというのですか?」


 うなずく。

 こいつは打算的な人間だ。

 いままでの言動を見るかぎり、死にたくないんだと思う。


「ほんとうか?」

「ええ、ほんとうです」

「なにが知りたい?」

「まずはランパートの【才能】を教えてください」

「それはマナー違反だ。プライバシーってヤツだな」

「知らないだけでは?」

「そうとも言う」


 ダメだな、こりゃ。まともな情報があるとは思えない。


「だが、決行日は明日だと言っていた。それまで隊長を守るのがおれの任務だった」


 決行日、か。明日はメインの競技である『成人男子の部』だ。

 少しばかり読めてきた。

 

「あなたは闇賭博に関わっていたのですか?」

「そいつは関係ない。貴族どもがやっていたことだ。金が要るんだと」

「なにに?」

「なんのことかは知らんが、終わった後だろうって隊長が言ってたな」

「……」


 そうかー……

 思い描いていたことが、現実になりそうだ。

 前にふと頭をよぎった最悪の状況。テラグリエン家はほんとうにやる気なのだろうか。


 だとしたら、タイミングはいつだ?

 どうやって【神格】の所有者と渡り合うつもりなんだ。


 いや、待てよ。

 実はすでに欠片ピースはそろっていて、俺が見逃しているだけかもしれない。


 モンスター料理によって、力を取り込んだ魔法士。

 闇賭博で動く莫大な金。

 決行日は大会最終日。


「そういえばクロードさん、前に軍が入り込んでいると言っていましたね?」

「ええ、そうです」


 異様に多い警備の理由は察しがつく。

 それはどうでもいい。

 一番大きな問題を、奴らはどう解決するつもりなんだ。


「ハイマス?」

「すみません。戻って落ち着いて考えたいので、帰りましょう」

(おなかすいた)

(お水が欲しいです)


 そうだ。言われたら腹が減ってきた。


「憲兵隊が駆けつける前に行きましょうか」

「憲兵隊……?」

「どういうことなんです?」


 首をかしげる男性陣。

 

「あとで説明します。≪空間ノ移動(ジャンプ)≫」


 魔法を発動し、移動を敢行。

 一瞬でホテルに戻る。

 場所はみんなが集まるホテルの共有スペースだ。


「あ、戻って来た」

「遅かったねえ」

「って、なんで上半身が裸なわけ?」


 アニャさんが夫であるダグマさんをいぶかしむ。


「これはだな、その、決闘を」

「決闘……?」

「クロードもニャ」

「お父さん、なんで半裸です?」

「なにしてたの」

「ちょっと喧嘩を……」

「そうそう、成り行きで賭け試合に出たんだよ」


 クロードさんもグレイメンさんも問い詰められてたじたじ。


「シン……じゃなかった。アーニーズさんは普通ね」

「俺は別になにも」


 と言ったところで、ディジアさんとイリアさんが人の姿になる。


「シントは水着を着た女性がたくさんいるところに入りました」

「うん、そう。変な部屋だったよ」


 ディジアさんとイリアさんがとてつもないことを言う。

 いやいや、おかしいでしょ。あれはランパートを追っていたからであってですね。


「うわ! やっぱり!」


 アニャさんが半ば怒りながらそんなことを言った。


「あー……だから男だけ」

「違いますよ、ミューズさん。俺たちは別に」

「アーニーズ、あんた、仕事してたんだよねえ?」


 カサンドラの迫力が怖すぎる。

 どんどん勘違いが積み重なってしまう気がした。


「とにかく説明を。なにがあったかを話します。それと、みんなの話も」


 このままだと話が進まない。

 強引に行かせてもらおうか。


 詳細を話す。

 派手に喧嘩をした三人は、怒られてた。途中、助けを求めるような視線を向けられたが、口をつむぐ。苦情はあとで受けよう。


 カサンドラたちが襲撃したアジトはダミーで、たいしたものはなかったそうだ。

 アリステラが率いた隊は、怪しげな男たちと遭遇。倒したがなにも知らない下っ端という話。

 ただ一つ、気になることを言っていたという。


「……口封じに来たと思われた」

「ンーフ、アリステラの言う通りであると証言します。本会場の建設に関係していた者であると、補足します」


 本会場だって?

 

「アンヘル嬢、ここでいま話されたことを書き加えてください」

「あ、はい。それと、言われた通りまとめておきましたので、読んでください」

「ありがとうございます」


 紙の束を受け取り、今日は解散とする。

 みんなが引き上げる中、残ったのはディジアさんとイリアさん、アミールとアンヘル嬢だった。


「どうしたのですか?」

「アーニーズさんはこれから考えをまとめるんでしょ?」

「ええ、そうです」

「僕も一緒におねがいします」


 それはいいんだけど、もう夜も遅い。

 ディジアさんとイリアさんは俺に寄りかかってもう寝そうだし、どうしたものか。


「眠れなくなっても知りませんよ?」

「だいじょうぶです。夜型人間なので」

「僕も平気です。それに、アーニーズさんの食事を用意しないと」


 む。

 してやられたな。

 じゃあお願いしようか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ