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ナイトオブザナイト 14 ランパートの先にいる者

『おーーーーーーーーーーーーー!? 乱入者ーーーーーーーーーー!』


 実況者が驚きの声を上げる。

 ランパートが先にリング内へ降り立ち、続いて俺も着地。

 中で戦っていた六人は、ぴたりと動きを止めた。


「隊長!?」

「ハイマス!?」

「あー、ダンダース君、こいつら片付けてよ。敵だ」

「みんな、こいつらは捕まえてください。ランパートは俺がやる」


 動き出すランパートを追うがしかし、そこへダンダースが立ちふさがる。


「相手は僕ですよ!」

「ちいっ!」


 クロードさんのカバーが入り、自由になった。ナイスフォローだ。

 ランパートは鉄網を()()()、逃げる。

 いまなにをした? 

 すり抜けたように思える。


「待て!」

「そう言われて待つわけないよねえ!」


 ヤツは人をかき分けるようにして、店の奥へ。

 もちろん追う。

 ランパートが向かった先は、どこかへとつながっているドアだ。

 

 ヤツはそのままドアを開けて、中に入る。

 ここで止まることはできない。


 意を決して踏み込んだ先は、廊下だ。青い照明で照らされた不思議な場所だと思う。

 耳に聞こえるのは、かすかな音楽と歌声。廊下の左右にはいくつもの扉があり、部屋が無数にある。


 ランパートはこちらを振り向いて、舌打ちをした。

 まだ距離はそんな離れていない。

 床を蹴り、全速で走る。


「しつこいねえ! 帰って寝なさいよ!」

「あなたをつかまえたら帰って寝ます!」

「ああ言えばこう言う!」


 やがて、ヤツはドアをくぐった。

 二秒後、続けて入る。

 そこに待ち受けていたのは――


「あーん? なんだあんた?」


 大会で実況の人が使っていたものと同様の拡声魔導具を持つ半裸の男性が一人。

 それと数人の女性。全員が水着姿だ。

 ランパートは、いない。


(ここはいったい)

(変な場所だわ)


 ディジアさんとイリアさんが言うように、とても変な場所だ。

 なにをするところなのか、わからない。


「え……ちょっとこの人……アーニーズ・シントラーじゃない!?」

「ほんとだー! すごーい!」


 女性たちが騒ぎ出す。

 ヤツはどこだ? ここに逃げたはず。


「うっそ! マジで! 誰か呼んだのか? サインくれ!」


 男性も騒ぎ出した。

 この薄暗い部屋では照明が点滅を繰り返し、見づらい。

 切り替えよう。

 

「≪探視サーチアイ≫」


 魔力の流れを視る。

 この国は魔法士だらけだ。であれば、異質なモノを探すまで。

 

「そこか! ≪魔弾マダン≫!」

「くっ!」


 ランパートはでかいソファーの陰に身を潜めていた。

 ソファーに穴が空き、ヤツが飛び出る。

 ナイフをこちらに投擲しつつ、戦おうとはせずにまた逃げた。


 ナイフは寸分たがわず俺の喉元へ迫る。

 落ち着いて魔力弾を放ち、撃ち落とした。

 そしてすぐに追う。


(シント! あっち!)


 背中の古剣イリアさんが右の方に引っ張ってきた。

 右手の方向にヤツの姿がある。

 再びの追いかけっこだが、ランパートは一度だけこちらを振り向き、先にあるドアをくぐった。


 関係者以外立ち入り禁止とある、見るからに怪しいドアだ。

 とうぜん行くしかない。

 誰もいない廊下を進み、ドアの先へ。


「なに?」


 守衛とおぼしき制服姿の男が二人、倒れている。

 ランパートがやったのか。

 ここの関係者ではない?

 

 一本道のすぐ先には地下への階段。

 誰かのいる気配はないから、飛んで降りる。

 

(静か……ですね)

「ええ、不気味なほどに」

(ん! 今度はあっち!)


 今度もまたイリアさんがランパートの姿を捉えた。

 少し距離を離されている。

 

 追いかけようとすると、ヤツはニヤリと笑い、扉の先に入っていった。

 嫌な予感しかしない。

 明らかな罠だ。


 扉の前で止まり、一度息を整えてから≪透視クリアアイ≫を発動。

 魔法に対する対策なのか、壁の先は見えない。


(シント、怪しいです)

(うん、あのヒト、笑ってた)

「ええ、すぐに追いたいんですけど、危険すぎる」


 なんの準備もなく踏み込めば、そこに待つのは死か。

 

「≪地獄耳ヘルズイヤー≫」


 目がダメなら耳だ。

 聴力を強化し、扉の先の音を拾う。


「して、仔細は?」

「は、はい……それが」


 男性の声。数は二人。

 何者だ? ランパートはどこにいる。


「アジトには誰の姿もなく……ただ、金は全て回収いたしました」

「金を置いて逃げたと? なんのつもりだ?」

「理由はわかりません。ただいま、行方を追っております」

「ふん……金が無事なら問題はないが、始末だけはきっちりしておけ。ウィーブル」

「はは! 閣下の御為に」


 閣下だって?

 気になるな。

 ランパートを逃がしたくはないが、状況がいま一つわからない。

 やはり、踏み込むべきか。


「ディジアさん、イリアさん、行きます。いざという時は頼みました」

(はい、任せてください)

(合図して)


 緊張が高まる中、扉を開けて入る。


「……貴様! 何者か!」


 官服を来た貴族らしき男性が一人。年の頃は三十代といったところか。

 そしてもう一人。豪奢な椅子に座り、机に肘を乗せている男がいる。

 服装はそこらのおじさんが着ているような代物だが、目が離せなかった。


 魔力の隠蔽と、隠しきれない巨大な存在感。

 嫌な予感の正体はコレか。


「ふむ。何用かは知らんが、ここは関係者以外立ち入り禁止だ」


 ヒゲのない顔はひたすらに厳。鋭い眼光で俺をにらむ。

 首や肩は異様に太く、歴戦の戦士を思わせる風貌だ。しかし、それでいて気品を漂わせる。

 ただ者じゃない。おじい様に通ずる雰囲気を持っていると思った。


 とりあえず返事はせずに、部屋の中を見る。

 執務室って感じだ。

 抜けられるような裏口はない。隠れられる場所も同じく見当たらない。

 ランパートはどこに行ったんだ。


「曲者め! 成敗してくれよう!」


 いきり立っている方が、ウィーブルと呼ばれた男だろう。

 もう一人は、閣下、と呼ばれていた。

 大貴族だろうと直感する。


「いえ、知り合いを探していたら迷ってしまって。ここに入りませんでした?」

「ふざけるなよ……」

「待て、ウィーブル」

「閣下! しかし!」


 なにかを言いかけるウィーブルに対し、男は右手を挙げて制した。

 黙れ、ということだ。


「アーニーズ・シントラーか」

「俺を知っているので?」

「少年の部・ハイクラスの優勝者がなにゆえここにいるのか」


 この人、まったく動じていないな。

 そうとう偉そうだ。


「ですから、探し人です。ランパートという男がこの部屋に入ったと思うのですが」


 ぶっこんでみる。

 男は眉一つ動かさない。


「知らん。それよりも、出て行け。憲兵を呼ばれたくないならばな」


 憲兵隊か。

 状況はこちらにとって良くないようだ。


「もう一度、聞きます。ランパートという饗団の人間がここの来ませんでした?」

「知らん、と言っている。不法侵入で捕まりたいのか? 優勝者だからといって調子に乗るな」


 饗団の名を出しても動じない、か。

 厄介だな。この男、強すぎる。

 話題を変えてみようか。


「そう言えなあなたはずいぶんと高い位の人のようだ。美食に興味は?」

「美食?」

「ええ、オーギュスト・ランフォーファーという腕のいい料理人を知っていましてね。紹介しましょうか?」

「なんの話か、知らんな」


 これもだめか。

 この男は十中八九、テラグリエン家の当主アンドレアスだ。

 どことなくローザリンデ・テラグリエンや、ローラント・テラグリエンといった姉弟たちに似ている。

 それに、腹の底から警戒を呼び起こす強者の雰囲気。間違いない。

 

 黒幕はこいつだと直感が告げている。

 しかし、尻尾を全くといっていいほど掴ませない。


「そうですか。いまここにいるのですが」


 ≪次元ノ断裂(ディメンション)≫の魔法を用い、異次元の穴から縛られたままのオーギュスト・ランフォーファーを出す。

 気絶したままのオーギュストを床に放った。


「……なっ!? どういうことだ!?」


 ウィーブルが後ずさる。


「これは……いったいなんの魔法……」

「ウィーブル、憲兵を呼べ。我らを狙う刺客かもしれんしな」

「は、はあ……」


 これでも反応なし。

 男はオーギュストをゴミでも見るかのような冷ややかな視線で眺めている。

 ランパートの気配はない。

 どうやって姿を消したかは知らないが、まんまとやられたわけだ。


「わかりましたよ。すぐに去ります。俺の勘違いだったようですね」


 オーギュスト・ランフォーファーを回収し、去る。

 ただ、もう一つ聞きたいことがあったから、扉の前で止まった。


「最後にもう一つ。ラルス・ウルヴァンという人はお知り合いですか?」

「……さあな。聞いたことのない名だ」


 ほんのわずかに眉が動いたのを、俺は見逃さなかった。


「そうですか。それでは失礼」


 部屋を出る。

 悔しいけれど、一筋縄じゃいかない相手だった。


(シント、ぶっ潰さなくていいのですか?)

「それをすると、俺が犯罪者になってしまいます」

(そうですか……)


 ディジアさんがしゅーんとしている。

 叱ったわけじゃないよ? あとでお菓子でも買ってあげよう。


(でも、にげられちゃったね)

「正直、予想できませんでした。ヤツは行動が読めない」


 だが、いくばくかの情報は得られた。

 

「とりあえず戻りましょうか」


 思考を巡らせつつ、メンバーたちの待つ場所へと戻るのだった。

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