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セブンスターズマジックバトル『ラプソディ』25 少年の部・ハイクラスの決着

 ≪魔弾球マダンキュウ≫によって作り出される魔力球は九つ。

 淡く輝く球体が俺の周りに出現し、守る。

 マリウス君は目を見開いて驚き、≪アクアビット≫を下げた。

 

『マルセル様! いったいなにが起きているのでしょうか! もはや私、なんにもわからないんですけどーーーーーーーーーーー!!』

『わしもですぞ。互いに球体を出しているのはわかる! しかしながら、これは』

『先ほどは≪アクアボール≫が≪アクアアロー≫を射出したように見えましたが……?』

『おそらくは半自動で動く、移動する砲台! 予想を超えた恐るべき魔法! そしてそれは……マリウス・クロナグラ選手だけではない!』


 大きなどよめきが伝わってくる。

 

「シント……それマジ?」

「動く盾の先を考えた時、これにたどり着きました。君と一緒だ」

「ふふふ……そりゃそうだよね」

「ええ、そうです」


 にらみ合ったのは、わずか数秒。

 互いに、そして同時に腕を上げて、球を動かす。

 五つの≪アクアビット≫と、九つの≪魔弾球マダンキュウ≫が入り乱れた。


 射出される≪アクアアロー≫を回避しつつ、≪魔弾マダン≫を撃つ。

 魔力弾が球に吸い込まれ、反響を始める。


「嘘でしょ! 跳弾っ!?」


 マリウス君の≪アクアビット≫と俺の≪魔弾球マダンキュウ≫は同じように見えて違う。

 続けて≪魔弾≫を連射。

 乱響する魔力弾の数は十。


「守れ! ≪アクアビット≫!」


 遅いし、足りない。≪アクアビット≫は五つしかない。

 十引く五は五。

 五発の弾が、マリウス君の体にめり込んだ。


「その魔法、欠点がありますね」

「……」

「準決勝で見せたあの障壁。≪アクアビット≫の使用中は、発動できないのでは?」


 片膝をつくマリウス君の額に一筋の汗が伝う。


「……さてね。それに、勝ち誇るのはやめてくれ。ボクはまだまだ元気なんだからっ!」


 立ち上がり、≪アクアビット≫をこちらへ飛ばす。

 さっきよりも動きが速い。

 とうぜん、応戦だ。こっちもまだまだ元気なわけだし、とことん付き合おう。


『し、信じられなーーーーーーーーーーーーーい! 目まぐるしすぎるッ! これがっ 新世代の力なのかーーーーーーーー!』

『一時も目が離せませんぞ! 結末までまばたきすらできませんわい!』


 浮遊する魔力球が俺たちの間であわただしく動く。

 

「≪魔弾マダン≫!」

「≪アクアアロー≫の連射だ!」

「≪魔弾マダン≫……≪魔弾マダン≫!」

「まだだ! ボクはまだ!」

「≪魔魔魔魔魔(マダマダマダマダマダ)魔魔魔魔魔(マダマダマダマダマダ)魔魔魔魔魔(マダマダマダマダマダ)魔魔魔魔魔(マダマダマダマダマ)ダン≫!!』

「うぁ……さすがにこれ見えないっ!」


 二十以上の≪魔弾≫が乱響。

 回避することしか考えられなくなったであろうマリウス君は、≪アクアビット≫の制御を乱した。


「≪螺旋魔弾ラセンマダン≫……」


 深呼吸をし、狙いを定める。

 撃ち放たれた鋭い魔力弾が、射線上にある三つの≪アクアビット≫を破壊した。


「なっ……んだそれぇ!」


 彼は≪アクアビット≫を解除し、防御に回った。

 ここでようやく≪絶水流壁ぜっすいりゅうへき≫の登場だ。


 俺の魔力弾は半数が遮断されてしまった。

 だが、手応えありだ。

 マリウス君は荒く息をして、服もボロボロになっている。


「まさか……こんなにも強いなんて、シント、君は」


 マリウス君だって、ものすごく強い。

 今まで見た中でも、叔父上に次ぐ水魔法の使い手。新魔法を発明し、≪絶水流壁ぜっすいりゅうへき≫までをも使う。

 まだなにか切り札があるかな? 

 できれば使わせる前に倒したい。


「試合だからと、ボクは勘違いをしてたみたいだ」

「というと?」

「殺す気でやらなきゃ……負ける! それは絶対に嫌なんだ!」


 ≪絶水流壁ぜっすいりゅうへき≫を解除。

 続けて≪アクアウォール≫での水壁。しかも規模がでかい。


 なにをするつもりなのかはわからない。

 だけどみすみすさせるつもりはないのだ。


 側面に回り込み、深く集中するマリウス君めがけて魔力弾を放つ。

 彼は自分の肩を突き出し、そこに当てる。

 苦痛に歪む顔。しかししれでも障壁を張ろうともしない。


「ボクの……勝ちだ! ≪ディープ・シーズ≫!!」


 おいおい。

 ここでそれやるのか。

 

『ちょっ……と待てーーーーーーーーーーー! その魔法はあああああ!』

『まさかの≪ディープ・シーズ≫! 審判団は出入り口を封鎖! はよせんかい!』


 実況と解説がさわぐ。

 ≪ディープ・シーズ≫は火属性でいうところの≪ライジング・サン≫。

 陸に海を作り出す言わば奇跡。最上級の魔法だ。


 マリウス君の周囲からありえないくらいの水が生成されていく。

 このままだとバトルコートは水没してしまう。


 みるみるうちに水は増量し、バトルコートを大きなプールに変えた。

 マリウス君は水の中に消え、浮かんでは来ない。


「さすがにびっくり」


 ≪魔弾球マダンキュウ≫を二つ、足の裏につけて浮遊。

 一から開発し、常に更新を続ける≪魔弾球マダンキュウ≫は汎用性が高いから、いろいろできる。


『瞬く間に水没ーーーーーーーー! ですがっ! アーニーズ・シントラーはものともしない!』

『マリウス・クロナグラ選手は水の中へ潜んだままですぞ! いつまで潜るのか!』


 観客席から声が消えた。

 これからなにが起こるのか、固唾をのんで見守っている。


 こんな水量を一気に吹き飛ばすのは難しい。

 かといって中に入ることもできない。


「ん?」


 ふいに水面が盛り上がる。

 攻撃!?


 急いで回避。下から出てきたのは≪アクアボール≫だ。

 潜ったまま攻撃をしてきたのか。

 厄介なことだ。


 マリウス君は一向に顔を出さないまま、水の中から攻撃をし続けてくる。

 どうにかして呼吸をしているらしい。


『一方的ーーーーーーーーーーー! これはアーニーズ・シントラー! ピンチだぞーーーーーーーーー!』

『これだけの水量はさすがに手を出せんわい! どこかで必ず捕まりますな!』


 必ずしもそうとは限らないけど、たしかに面倒だ。

 マリウス君は水中にずっといそうだし、やるしかないか。


『アーニーズ・シントラー! 止まった! なにをするつもりかーーーーーー!』

『大魔法か、あるいは――』


 使うのは、土の魔法。

 これを川に投げると、いっぱい魚が取れるんだよね。

 ああ、でも初めて川魚をたくさん食べた日の夜は腹痛で死にそうになったっけ。

 イイ思い出だなあ。


「≪巨人之土岩(タイタン・ジ・アース)≫」


 上空にでっかい岩を作り出す。

 それを、勢いをつけて下へ落とそう。


『なあっ!? い……岩!? 巨大な……岩だーーーーーーーーーーー!』

『なんとなんと! 次から次へと……ふぉーっふぉっふぉ!』

『みんなシーーーーーーーーーーーーールド! シールド張ってーーーーー!』

『アレを落とされたら水が溢れますからな! ≪アクアシールド≫!』

『うおおおおおお! ≪ファイアシールド≫!』


 観客席の人々も慌てて障壁を展開。おかげでぶっ放せる。

 

「行け!」


 魔力を込めて、落下開始。

 水面を割り、バトルコートの床に達した大岩は、激烈な衝撃を生み出し、地震となる。

 溢れ出る水が観客席を襲うが――


 本家席から飛び出す、巨大なる炎。

 それと、土でできた異様な傘。

 あれは、おじい様と叔母上か。

 なんにせよ、溢れた分のだいたいはあの二人が処理してくれた。

 

 床は水浸しだけど、もうプールじゃなくなっている。

 バトルコートの中心でマリウス君はひざまずき、四つん這いのかっこうだった。


 ゆっくりと降り立ち、彼の前に立つ。

 手の平を向けて、魔法の発動体勢に入った。


「ハアッ……ハアッ……なんなの、いまのは」

「昔、ああやって魚を取っていたんです」

「ボクは魚っ!?」

「もう戦う元気はなさそうですね」

「……いや、まだだ……まだ、これから……」


 ぶるぶると震え、気絶寸前って感じだ。

 

「こんなに楽しいのに……これで終わりだなんて、あんまりだよ。永遠に……やり続けてたい……」

「それはご免こうむります」


 永遠に魔法戦って、前におじい様が言ってた気がする。

 いやアホか。

 やってられんわ。


「≪衝破ショウハ≫」

「うわっ!」


 衝撃波を受けて、マリウス君は吹き飛んだ。

 しかし、半身を起こし、立とうとする。


「≪衝破ショウハ≫」

「いっ……!?」


 二発目を受けてもなお、立とうとする。


「フゥ……ハァッ……もっとだ……もっと……ほしい!」


 なんか恍惚としてないか?

 これはいけない。そうとうハイになっている。

 とどめだ。


「≪魔衝発破マショウハッパ≫!」

「うわあああああああああああああああああああああああああああ!」


 威力は抑えてある。吹き飛ばす先は、本家専用席。おじい様か叔父上か叔母上なら誰かが受け止めるだろうと思ってのことだ。


『ま、ま、マリウス・クロナグラ選手吹っ飛ぶーーーーーーーーーーーー! なんという無慈悲! なんという冷酷! 刈り取ったーーーーーーー!』


 悲鳴が上がる中、マリウス君を受け止めたのはボニファティウスさんだった。

 かなりのスピードで吹っ飛んだはずが、空中で勢いが殺され、ふわりと落ちる。


『アーニーズ・シントラーの勝利だーーーーーーーーーー! ゆゆゆ優勝はなんとーーーーーーーー! 公国外から来た黒き死神! アーニーズ・シントラーーーーーーーー!』

『歴史に残る名勝負でしたな! クロナグラ選手は大公さまを除けば、まさに我が国最高の水魔法士! ですが! シントラー選手はその全てを受けきり、勝利! カウンターの達人とも呼ぶべき、恐ろしい魔法の使い手でしたぞ!』


 誰も言葉を発しない。盛り上がっているのはごく一部だけだ。


『少年の部・ハイクラス! 勝者はアーニーズ・シントラー! アーニーズ・シントラーだーーーーーーーーーー! ……え? あ、あの? 先々代様?』


 実況席で変化が起こる。

 おじい様がつかつかと歩み寄り、拡声魔導具をひったくるようにとった。


『ジンク・ラグナである』


 一言で全員が黙る。

 

『アーニーズ・シントラーよ、見事であった。会場を水浸しにしたことは目をつむってやろうかのう』


 俺のせいじゃなくね? いや、俺のせいか。


『凄まじき魔法よ。堪能させてもらったわ』


 ここでようやく歓声が上がった。

 おじい様に異を唱える者など、この国にはいない。


『おまえには優勝賞金一千万アーサルを授与する。そしてもう一つ、格別の褒美をやろう』


 格別の褒美?

 まさか【神格】?


『少年の部・ハイクラスでは物足りぬであろうよ。アーニーズ・シントラー、おまえには成人男子の部への本戦出場を褒美として与える』


 はあ?

 なに言ってんの、このジジイ。

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