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セブンスターズマジックバトル『ラプソディ』8 ウチの子です

 いよいよ始まる七星武界魔錬闘覇しちせいぶかいまれんとうは本戦。

 『幼年の部』に参加する子どもたちが審判に連れられて入場を開始する。


 俺はというと、待機室の大窓から観戦だ。もちろん最前列に陣取らせていただく。

 ディジアさんとイリアさん、楽しんでくれるといいな。


『それではみなさん! ご注目ください! 我が国の未来を担う子どもたちの入場だ! がんばれー! ちびっこ魔法士!』


 実況につられる形で観客席から、がんばれー、と大きな声援が上がる。

 俺は俺で魔法を発動。使うのは≪地獄耳ヘルズイヤー≫だ。ディジアさんとイリアさんに意識を絞り、余計な音を聞かないようにする。これが存外難しいのだが、二人の様子が知りたいから、やる。


 50人程の子どもたちが二つの集団に分かれ、お互いの距離をとって向き合う。

 開始と同時に撃ちあって、転んだりしたらアウト。全員やられたほうの負けとなる。


「ディジア、普通に戦っちゃいけないんだよね?」

「ええ、シントもそう言っていました」


 二人がなにかしゃべっているな。


「でもどうしよう。わたしの剣たち使ったら死ぬかも」

「わたくしもです。撃ったら爆裂四散しそうで」


 なんつー物騒な会話だ。

 なんとか手加減してほしいものだが。


「すごく小さくして撃つしかないのでは? 眉間をねらうのです」

「みけん、って眉毛と眉毛の間だよね。むずかしそう」

「そうですね」

「じゃあアレやろうかな」

「わたくしも試したいことがあります」


 アレとか試したいことってなんだろう。新魔法かな。

 ますます目が離せなくなりそうだ。


 そして、審判の合図とともに、合戦が始まった。

 ものすごくドキドキしてくる。


 子どもたちが次々と魔法を発射。各属性の基本となる魔法だ。たとえば≪ファイアボール≫だったり≪アースブロック≫だったりと、難しい魔法は見当たらない。威力も低すぎるし、当たったとしても怪我はないだろう。


 ディジアさんとイリアさんはその場から動かず、首をかしげたり、少し身を低くするだけで飛来する魔法を全て回避している。


「ではいきます。≪暗黒球ダークボール≫」

「いっくよー。≪光輝反剣りふれくてっど≫」


 え、なにその魔法。

 ディジアさんから放たれた黒い球がゆっくりと宙を進む。

 イリアさんの小さな光剣は空を飛び回り、敵軍が撃った魔法を撃ち落とし……ていない!?


 なんだコレは。予想の遥か上じゃないか。

 イリアさんの新しい光剣は、対面にいる子どもが撃ったものをそのまま跳ね返した。


 そして、ディジアさんの黒い球は――


「≪炸裂バースト≫」


 右の手を握りしめる仕草とともに、暗黒球が数十に分かたれる。

 一つ一つが極小の魔力弾。それが十人の眉間を正確に撃つ。


 一気にバタバタと子どもたちが倒れ、涙目で額を押さえている。

 素晴らしい。感動で手が震えた。


『おお! なんだいまのはあああああ! とんでもないちびっこがいるぞお!』


 実況の驚きはそのまま観客の驚きだ。

 上空に設置され魔法の映像ヴィジョンがディジアさんとイリアさんをアップで映し出す。

 会場中から拍手が巻き起こった。

 ふふ、最高の瞬間だな!


「なにあれ……すごい魔法だわ」

「うちの子がやられた……どうなっている」

「どこの子だ?」

「そういえばさっきマリア様と話してたな」


 どこの子だって?

 決まってる。()()()()()()


 勝負はもはや決したといっていい。

 相手方の子どもたちはどんどん数を減らしていき、すぐに最後の一人となる。

 しかし、残った一人に注目して、おかしいと思った。


 身長が170センチ近くはあるだろう。9歳から12歳の子どもしか出られないはずだ。反則じゃないのか。

 まあ……ふふふ……ディジアさんとイリアさんの相手になどならないが。


「≪闇弾ダークショット≫」

「≪ちっちゃいデューテ≫!」

「う、うわーーーーーーー!」


 狙いすました二つの魔法が、体の大きな子を倒す。

 彼はがんばって障壁を張ろうとしたが、間に合わなかった。


『決まったーーーーーーーーー! 『幼年の部』は東軍の勝利で終ぅぅぅぅぅぅ了ぉぉぉぉぉぉ!!』


 歓声、というよりはざわめきの方が大きいだろう。

 ディジアさんとイリアさんの魔法はそれだけの強さがあった。

 熟練の魔法士ならば、二人がどれだけすごいかわかったはず。


『それにしても、なんという魔法でしょうか! 二人だけレベルが違い、ちょっ……と一方的でしたが、みんな頑張った! 私、感動です!』


 怪我をした子どもは誰もいない。せいぜいコブができるくらいだ。

 それからまた全員で整列し、叔母上から参加賞のメダルがかけられた。


「マリア、いっぱい倒しました」

「やったよ!」

「そうねー、ほんとあなたたち、レベチすぎますわー」


 叔母上は今まで見たことのないような乾いた笑いを浮かべていた。

 拍手の嵐が渦巻き、『幼年の部』は終了。

 盛り上がりは上々で、俺も手が痛くなるまで拍手した。


 戦いを終えた二人が戻ってくる。

 全力で祝福するしかない。


「やりましたね! 素晴らしい魔法でしたよ!」

「練習しましたから」

「うまくいった」

「いやもうほんとすごいですよ。分裂に反射。あんなものをいつの間に……」


 あれ? なんだか視界が少しぼやけてきた。

 俺、もしかして泣いてるの?


「よくここまでの成長を」

「まだまだです。上には上がいるとシントはいつも言ってます」

「ていうかシントに追いつかなきゃ」


 これでもまだ満足しないとは。

 もうだめだ。感動で動けそうにない――


「ハイマス……完全に父親になってるな。なんか震えてるし」

「娘好きすぎ問題発生ね。ディジアとイリア、お嫁にいけないんじゃないの、コレ」


 テイラー夫妻がそんなことを言う。

 二人をお嫁だって?

 ああ、そんなことあるわけない。もしも将来そんなことになったら、俺はたぶんしぬ。



 ★★★★★★



 気を取り直し。

 ディジアさんとイリアさん、そしてテイラー夫妻には観客席に戻ってもらい、俺は次の場所に向かう。


 これから行われる『少女の部』の選手待機室にはヴィクトリアが入っているはずだ。

 門番に来訪を告げ、通してもらう。各選手は一人だけ付き添いを連れてこれるルールだから、問題なし。

 中に入ると、貴族らしいおじさんが、おまえなら優勝できる、だの、我が家の名を知らしめよ、とか自分の娘の言っていた。

 女の子たちも大変だと思う。


「ヴィクトリア」

「シント、待ってたんだぞ」

「調子は?」

「普通なんだぞ」


 昨日までみたいに空回りはしてなさそうだけど。


「ここにいるやつら、全部倒すんだ。優勝するんだぞ」

「全部は倒さなくていいさ」


 訂正しよう。意気込みすぎてる。

 でも、そのくらいがちょうどいいか。ヴィクトリアとまともに戦える少女は、まずいない。ハンデとしてはいいと思う。


「相手は殺さないこと。いいね?」

「だいじょうぶ」

「手足を折ったりしないこと。いける?」

「それもだいじょうぶ」

「殴ったり蹴ったりはだめだ。わかってるよね?」

「注文が多いんだぞ」

「じゃあこれで最後だ。ぶっちぎりで勝て」

「――! やってやるんだぞ!」


 気合十分。

 改めて周囲を見てみる。


「一人だけとんでもないのがいるな」


 凄まじい魔力。ヴィクトリアと同等の体格を持ち、めっちゃ足長い。

 鼻が高くて、可愛いというよりは美人って感じの女の子がいる。


 優雅な衣装に縫い付けられた紋章は熊を模した意匠だ。

 テラグリエン家の人間なんだと思う。

 『少年の部・ハイクラス』に出ているローラント・テラグリエンと顔立ちが見ているから、妹さんかな。


 念のため、対戦表を確認してみた。

 名前は『ルイーサ・テラグリエン』。当たりだ。

 注視すべき選手だと思う。

 

「ヴィクトリア、準備運動は?」

「いつでもやれるんだぞ」


 いい返事だ。

 冒険者として活躍する彼女は、こと戦いになると真面目だ。

 

『それでは時間とあいなりました! これより『少女の部』本戦を開始いたします! 一回戦、選手入場でーーーーーーーーーーす!!』


 外からの声がここまで聞こえる。

 『幼年の部』はいわば余興だったから、いまからが本番だ。


『まずは第九ブロック通過! ヘルツォーク伯爵家の才媛が登場だ! ダニエラ・ヘルツォーク選手ーーーーー!』


 西側出入り口から、小柄だけどすばしっこそうな少女が入場。

 そして。


『対するは第十六ブロック通過! はるばるドラグリアから来た竜人娘! ヴィクトリア・ドラグリア選手! ラグナにとっては複雑な国からやってきた魔法士だああああああ!』


 複雑て。それ言っていいのか。叔父上が頭抱えてそう。


「さあ、ヴィクトリア、かましてやれ」

「負けない」


 ディジアさんとイリアさんの時とは少し違うドキドキが胸に訪れる。

 でも、考えることは同じだ。

 ヴィクトリアには魔法戦を楽しんでほしいと思う。


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