セブンスターズマジックバトル『ラプソディ』5 怪しい冒険者風の
一回戦が終わり、待機部屋へ戻る。
しかしそこでいきなり例の二人に引き留められた。
「おいおまえぇ、ヨナタンになにしやがった」
「不意打ちをしたのではないのか」
いかつい一号、エグモントと優勝候補ローラント・テラグリエンのご登場だ。
試合で勝っただけなのに、怒っている。
どうでもいいので無視だ。腹が減っているし。
ということで再び残っている料理を皿に盛り、手に取って席に着く。
やっぱりタダメシ、最高。
「また食べるのか、君は」
「ベルノルトさん」
「見ていたよ。さすがは本家招待枠だ」
それには反論したい。本家に招かれたのは、仕事のためだ。
「すさまじい魔法だった。あのグロート先輩を圧倒するだなんて」
「いきなり殺す気で撃ってきたから、つい。殺意を向けられるとどうにも」
「そ、そうなのか?」
「ええ、すぐに無力化しないと危険ですからね。習慣が身についているんですよ」
「いったいどんな生活をすればそんなことに……」
呆れられてしまった。
「それはいいとして、魔力弾を撃つ速さが尋常ではなかった」
「俺を分析ですか?」
「あ、いや、そんなつもりでは」
「いえ、構いませんよ。本戦で戦うかもしれませんからね」
「本戦!?」
冗談を言うと、彼は飛び上がった。
「僕などが本戦だなんて……いや、そんなことはいい! それよりも君の魔法は最速とされる雷魔法を超えていた。どういうからくりなんだ」
ベルノルトさんは知りたがりみたいだ。
「そうですね。速さにおいては雷がベスト。誰もがそう思っている」
「??」
「だからこそ、それを超えられた時、対処できなくなる」
ヨナタン君は初撃を防がれ、焦った。精神の乱れで術式の構築が遅くなり、俺に腕を撃ち抜かれたのだ。
「魔法の強さは精神の強さ、とおじ……先々代が言ってましたよ、たぶん」
「精神の強さ……つまり、グロート先輩は、精神が乱れた……」
「はい」
ベルノルトさんはハッとした様子になり、それからあごに手を当ててぶつぶつつぶやきながらどこかに行ってしまった。
「どうしたんだ?」
気になるものの、まだ食事の途中だ。
それからまた時が過ぎ、二回戦が始まる。
俺の次の相手は、魔法騎士階級の家柄出身で、細身の痩せた少年だった。
炎魔法の使い手でけっこう手強かったけど、なんとか倒し、三回戦進出。
これで今日は終了だ。
明後日に予選準決勝が始まる。
ちなみにベルノルトさんも二回戦を突破。
試合を見ていたが、なかなかにいやらしい立ち回りをしていて、相手を翻弄していた。
お互いに健闘をたたえて予選会場をあとにする。
外では、ミューズさんやディジアさんとイリアさん、アミールにリーア、テイラー夫妻が待っていてくれた。
「やりましたね、シント」
「強かったー!」
二人は嬉しそう。彼女たちが笑顔だから、俺も嬉しい。
「でもさあ、あっという間すぎてなにがなんだか」
「さすがです、シントさん」
「二人ともありがとう。でもまだ二回戦だし、それに欲しいのは勝ちじゃなくて情報なんだよね」
待機部屋では、注目選手の情報を得た。
しかしそれ以外は特にない。
「他の会場に行きましょ。アリステラやヴィクトリアがどうなったか知りたいし」
「ええ、行きましょう」
まずは合流してからにしよう。
他の予選会場もそんなに遠くはない。すぐにたどり着く。
『少女の部』予選会場前では、カサンドラがいて、ずーんとしている。
ヴィクトリアはすごく楽しそう。
なにがあったのだろうか。
「カサンドラ」
「ああ、シントかい?」
「どうしたの。なんか沈んでいるけど」
「ヴィクトリアがさ、ルールをなに一つ理解できてなくて……」
あやうく反則負けしそうだったらしい。
カサンドラは同じ説明を十回以上する羽目になったそうだ。
「余裕で勝ったんだぞ! 褒めてほしいんだぞ」
「うん、おめでとう」
「ふふーん」
なんつードヤ顔だ。いやもうこれドヤ顔を超えたウルトラドヤ顔だな。
「そっちはどうなったのさ」
「いい情報はいまのところないかな。なにか知っている人はいなかった」
「あ、そっちかい? 試合のことを聞きたかったさ」
「とりあえず勝ったよ」
ヴィクトリアは二回戦を突破。アリステラはどうなったかな。
「こっちも怪しい人間は見なかったよ。強いて言えば、冒険者風の連中がいたくらいかねえ」
「冒険者風?」
「ここは魔法士ばかりだろ? 気になったからさ、近づいて会話を聞いてみたのさ」
さすがはカサンドラ。
「だけど普通の会話だったんだよ。変なところはなかったさね」
「いや、ありがとう。俺も気をつけてみるよ」
ラグナ公国は冒険者が極端に少ないと聞く。
観光客じゃないのなら、少し怪しい。
それから『成人女子の部』予選会場へと行き、アリステラたちを見つけた。
みんな笑顔だし、結果は聞くまでもないようだ。
「アリステラ」
「……おつ。勝ったけど、そっちは?」
「俺も二回戦を突破したよ」
ウチから出場のメンバーは全員が予選三回戦進出。
しかし次からは強者が多くなる。アリステラとヴィクトリアは優勝を目指していいるようだし、ぜひがんばってほしい。
「三人とも勝つだなんて、ウチってけっこうすごい?」
ミューズさんはだいぶ感心しているようだ。
ラグナの魔法士は強い。先のモンスターウォーズでもそれは証明された。
だが、俺たちも実戦を何度もくぐり抜けた経験があるのだ。
「簡単には負けない」
「ゆーしょぉーーーーーーーー!」
アリステラはともかく、ヴィクトリアはテンションが高すぎる。
周りの人々がなにごとかと見てきた。
これはかなり恥ずかしいぞ。
「今日はもう終わりですから、一度ホテルに戻りましょう。あとは各自自由時間ということでおねがいします」
「情報収集はどうするの?」
「観光をしつつ、会場周辺や、街のどこになにがあるのかを確認しておいてください。もしなにかあっても慎重に。今回を武器を持つと目立ちすぎるので、可能な限り戦わないこと」
みんなに最低限の指示を出し、解散。
俺はホテルに戻るけど、何人かはこのまま街を散策するようだった。
★★★★★★
ホテルに戻り、一息つく。
兜を脱ぎ、机に置いた。
いまのところは、正体を見抜かれていない。
大会だって防具の着用は認められているから、問題ないだろう。
「って、どうしたんですか?」
気づけばディジアさんとイリアさんがすぐ後ろにいた。
「今日はわたくしたちもともに出ます」
「うん、いくいく」
「わかりました」
今夜も情報収集に出る。彼女たちにも手伝ってもらおう。
「夕食後に外へ行きます」
「どこへ向かうのですか?」
「繁華街へ」
昨日は少ししか見て回れなかった。明日は試合がないので、時間を使える。できるかぎり情報を集めようと思う。
「いまのうちに寝ておいたほうがいいかもしれませんよ」
「ですから子どもではないと言っているのに」
「そうだよ。わたしたち、オトナだってば」
最初に見た時はそうだったけど、いまは子ども姿だ。
で、風呂から上がってくると、二人はすかーっと寝ていた。
うん、どこからどうみても子どもだ。
まずは一階へ食事を頼みに行く。
すると、ちょうど戻って来たグレイメンさん一家やクロードさん、クロエさんとメリアムさん親子が戻って来た。
「アーニーズ君、戻ってたのか」
「おかえりなさい、みんな」
「どうだったのニャ」
「みんな勝ちましたよ」
彼らは本会場で行われていた『成人男子の部』の予選を見ていたそうだ。
「予選からかなりの盛り上がりだったよ」
「そんなに?」
「あの彼が出てきた時は特に、でした」
クロードさんの言うあの彼って、誰だろう。
「ボニファティウス・リオンズ。アレはもう優勝確実じゃないかってくらい強かったなあ」
ボニファティウスさんも出ているのか。
「女性人気もそうとうなものでした。彼が出てきた瞬間、会場中から花束が投げられて、実況の方が怒っていましたよ」
たしかにあの人はモテそうな感じだった。物腰は柔らかいし、笑顔が可愛い感じの人だったように思う。
「ところでアーニーズ君、ちょっといいかな」
「どうしました?」
グレイメンさんが真面目な顔つきで、ついてこいと言う。
他のメンバーたちから離れた場所で、話を始めた。
「おれたちはいちおう『少年の部』や『少女の部・ハイクラス』の会場も回ってきたんだけど、少しばかり気になることがあってね」
「なにか見つけたのですか?」
「『少女の部・ハイクラス』の方で、観客席に場違いな風体の輩が見えた」
ローブとフードを身に着けた、冒険者風男だったという。
「なにか様子をうかがっているようにも思えたよ」
「カサンドラも似たようなことを言っていました」
「しばらく見ていたんだけど、突然いなくなったな」
人ごみにまぎれて姿が見えなくなったそうだ。
「心に留めておきましょう。見かけたら調べてみます」
「ああ、こっちもそうしよう」
明日は全ての会場を回るつもりだから、出くわす可能性だってある。
もちろん、ただの観光客という可能性もあるだろうが、どうしてか気になるのだった。




