Sword and Magic of Time 出張版 2 『あまりにも意外な味方?』
「これからやることを決める。みんな、お願いできるかな」
緊張感が漂う中、全員がうなずいた。
「アリステラ、カサンドラ、ダイアナは戻ってきた大御所様を護衛してほしい」
「わかった」
「任せな」
「ミューズさんとアミールは三人のサポートを」
「ええ」
「できる限り頑張ります」
良い返事だ。
「わたしは?」
「ラナには特別にお願いしたいことがある」
そっと耳打ちして内容を伝える。
「その二つを調べればいいんだね?」
「ああ、でも行動は制限されるからニジョウ屋敷内で頼む」
「やってみるよ」
ディジアさんとイリアさんは姿を変えられるから一緒に来てもらう。
二人はまったくのノーマーク。外内の連絡役にもなれる。
「目的の場所まではどのくらいかかりますか?」
「私たちがたどり着いたところまででしたら二時間ほどです。ですがそこから先は」
どこまで続いているかわからない、だな。
一日か二日、あるいはもっとかかるかもしれない。
「思いがけない仕事になったけど、みんなよろしく」
休暇は一時ストップ。
さあ、『Sword and Magic of Time』を始めるとしようか。
★★★★★★
大御所様が戻ったのを確認してから、オユキさんとともにニジョウ屋敷を出て、例の秘密基地へと向かう。
とうぜん監視役もついてくるが、彼らは一定の距離を保ち、近づいてはこない。
俺たちがつけられた腕輪には位置情報を発信する機能があるというから、強い監視は必要ないということだ。
長屋の一室から地下へと入る。
「おい! オユキちゃんよ、いったいどういうこった!」
着くなりサブロウさんが血相を変えて詰め寄った。
「大御所様が連行されたって!」
「サブロウ、説明している暇はありませんわ」
「待った。オユキさん、サブロウさんには手伝ってほしいから話しましょう」
「なんだ、なに言ってる」
手短に話す。
サブロウさんはあまりにも露骨な、嫌な顔をした。
「爆弾……? しかも主上のために魔珠『鳳玉』を探すってのかよ」
「ごめんなさい。全ては私の過失が招いたことですわ」
「~~~~! くっそ! そんな顔されたんじゃな」
サブロウさんは苦い顔をした。
(サブロウはオユキに弱いようですね)
(変なの)
二人の感想には苦笑するしかない。
「で、手伝いってのは?」
「ニジョウ屋敷に行って密かに大御所様を守ってほしい。それと俺の仲間にラナという女の子がいます。彼女とともにニジョウ屋敷の内通者を探していただきたく」
「なんだって?」
「ラナは帝国の元諜報員です。問題はないと思います」
「一気にいろんな情報がきてなにがなにやらだが……大御所様を守れってんなら、異論はねーよ」
話のわかる人だ。
「二人でやれるのか?」
「やるしかありませんわ」
立ち止まっている余裕はない。彼女の言う通り、やるしかないんだ。
「わかった。おれはニジョウ屋敷に行く。気を付けろよ」
「あなたも気をつけてください」
「おれはコウガのサブロウだぜ? 坊主、いらねー心配だ」
サブロウさんがはしごに手をかける。
しかし。
「ん? おい、なんだおっさん」
はしごから誰かが降りてくる。
キナガシを着た涼しげな中年の男性。
くるんと上向いた立派な髭に、赤い髪。
不覚にも固まってしまう。
な、な、なんで?
「邪魔をするのである」
「叔父上!?」
ばかな。
どういうことだ。
「叔父……? 坊主、これは――」
「サブロウ! 離れなさい!」
オユキさんが短剣を取り出して構える。
つられてサブロウさんも剣に手をかけた。
「レディ、待つのである。私はシントに用があるだけだ」
ラグナ公国のトップ。カール・ラグナがいつもの淡々とした口調で言う。
俺たちを尾行していたのか? 大公自ら?
「オユキちゃん、このおっさん誰よ」
「サブロウ、このお方はラグナの大公よ」
「大……ひょええええええええええ!」
サブロウさんの反応はいたって当たり前だ。
なんでいきなり出てくるの。
「叔父上、俺になんの用かはわかりませんが、今はやめてください。けっこうまずい状況なので」
「ふむ。逢引かとも思ったがそうではないようであるな」
逢引!?
なに言ってんのこの叔父さん。
しかもだ。もしもほんとうに逢引だとしたらその現場に踏み込んだことになるんですけど!
「外に監視がいたはずですが」
「あれは監視であったか。少しばかり眠ってもらったのである」
「えー……」
なんて余計なことを。
「なに、酸欠で気絶しただけだ。なにが起こったかもわからぬであろう」
「は、はあ」
「シント、まずい状況とはなんだ?」
言いたくない。
めんどくさいことになりそう。
「聞いたら帰ってください」
「聞いたあとに考えるのである」
「いえ、マジで、ほんとに帰ってください」
「まずは聞かせてみよ」
これ、帰る気ないな。
「シントさん……」
オユキさんが怯えている。
当然だ。叔父上は【神格】神水ダイダルの所有者。
水の魔法系【神格】をここで使用されたら、こんな狭い地下室など一秒で水没する。
しかたない。
手短に説明する。聞かれたらまずい部分はぼかしたが――
「裏になにかある、ということであるな」
「……」
「大御所とキヨナガ殿の一件、すでに聞き及んでいる。背景もあらかた知っているのでな。人質を取られたか」
バレた。
「これから【神格】探しをするというが、どの【神格】だ?」
「言いたくないんですけど」
「魔珠『鳳玉』であろう」
「知っていたのですか」
「ホーライには伝説がある。それ以外ないのである」
妙に鋭い。
叔父上ってこんな人だったかな。
考えてみれば、六歳から十歳まで一緒に暮らしていながらカール・ラグナのことをほとんど知らない。
いつも忙しそうにしていたし、話す機会もあまりなかった。
「よかろう。私もともに行くのである」
「はあ!?」
「おまえは冒険者をしていると聞いたぞ。仕事ぶりを確かめるのだ」
「なんで!?」
どういうことなんだ。
もうほんとマジで邪魔なんですけど。
「待ってください。叔父上がここにいるなんて知られたら」
「問題はない。影武者を置いてきた」
「影武者……」
「騎士たちには私がいるように振舞えと命じているのでな」
「一人で来たのですか?」
「むしろ足手まといである」
そりゃあそうなんだけど。
やっぱりおかしい。叔父上、アグレッシブすぎる。
オユキさんを見る。
彼女は叔父上から目を離さない。構えたままだ。
「レディよ、そう構えるでない」
「し、しかし」
「保護者としてシントを監督するだけである」
保護者面しやがった!?
追い出しておいてそれはないでしょうよ。
「叔父上、本気なのですね?」
「本気だ」
「話がこじれたら自分でなんとかしてください」
「大公に向かって生意気な口をきくものであるな、甥よ」
「子ども扱いしないでください。あと、ラグナを名乗るなってあなたが言ったんです。だから甥じゃない」
「私のことを叔父と呼んだではないか」
「いちおうの敬意を払っているだけですよ」
けっこうきついことを言ったつもりだが、叔父上は動じなかった。
どこまでもついてくる気だ。
「わかりました。でも邪魔はしないでください」
「よかろう」
「オユキさん、すみません。追い返すのは無理だ」
「……そのようですわね」
出鼻からいきなり予定が狂った。
(味方が増えましたね、シント)
(変な髭のヒトだ)
変な髭の人扱いはどうかと思うが、味方と言えば味方か。
だけど油断はまったくできない。叔父上がなにを考えているのか、警戒しなくては。
こうして俺とオユキさん、ディジアさんとイリアさん。さらに叔父上の五人で挑むこととなった。
この先どうなるか、展開が読めない――




