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永遠の渡し守  作者: 智康
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第1章 変化

状況は断続的に変化する

我々は常に変化の中に身を置いています。朝に目覚めてから、夜に眠りにつくまで、周囲の環境は急き立てられているかのように、変化を続けています。我々を取り巻く世界は主観的には、五感の感覚と思考・感情といった内面の現象で構成されています。これらの事物で構成された主観的な世界を状況と呼ぶことにして、変化の説明に移りたいと思います。

 状況の変化では、今よりも一瞬前に存在した状況が消え、新しい状況が現れます。以下、一瞬前の状況を前の状況と呼ぶことにします。今この時に、前の状況の消滅と新しい状況の出現が一度に起きます。このため、新しい状況が現れたから前の状況が消えるのでもないし、前の状況が消えたから、新しい状況が現れるのでもありません。前の状況が消えると共に、新しい状況が現れるのです。このイメージに合うのは、前の状況の上に新しい状況が重ねられるという変化の仕組みでしょう。「パラパラ漫画」のイメージです。前の状況は新しい状況が重ねられると消えて、新しい状況との違いが感じられるということです。

 このパラパラ漫画のイメージでは、状況は絶え間なく変化するのではなく、断続的に変化することになります。このことは、次のように説明できます。

 まず、状況が絶え間なく変化していると仮定してみます。この仮定では前の状況と今の状況とには「間」が存在しません。「間」とは前の状況と今の状況との区別であり、この区別により状況の変化が感じ取れます。だから、状況が絶え間なく変化すると仮定すると、状況が変化しないことになります。これは状況が変化するとの前提に矛盾します。したがって、状況は、絶え間なくではなく、断続的に変化すると結論できます。今の状況は前の状況が消えた状態と今この時に新しく現れた状況との重ね合わせになります。前の状況が消えた状態を前の状況の残像と、今この時に新しく現れた状況を新しい状況と呼ぶことにすると、今の状況内では、前の状況から新しい状況への変化が起きることになります。

 状況が断続的に変化するということは状況の静止と変化は交互に起きるということです。状況が変化する時は、それまで静止していた状況に新たな状況が加わり、静止していた状況が状況の残像となります。次の変化が起きるまで、前の状況の残像と新しい状況の重ね合わせは続くので、この重ね合わせにより生じる、前の状況から新しい状況への変化が継続して感じられます。つまり、実際には状況は静止しているにもかかわらず、状況の変化が感じられるのです。

 もちろん、人生で最初に体験する状況も前の状況の残像と新しい状況で構成されています。

無から新しい状況が現れた時の状況が人生で最初に体験する状況であると仮定してみます。無は感じられないので、この状況は新しく出現した状況のみで構成されることになります。通常の状況では、前の状況の残像と新しく現れた状況の重ね合わせが存在し、この重ね合わせに変化を感じるので、新しく現れた状況のみで構成された状況では変化は感じられません。この状況は静止している状況です。この場合の静止している状況は感じられません。状況の静止は同じ状況の継続で、これを感じるには、状況内に変化する事物が存在しなければなりませんが、この場合は静止している状況内にはこのような事物は存在しないからです。だから、無から新しい状況が現れてもこれは感じられません。人生で最初に体験される状況が感じられないことはないので、無から新しい状況が現れた時の状況が人生で最初に体験する状況であるという仮定が間違いということになります。だから、人生で最初に体験する状況には、これよりも前に存在した状況が残像として含まれるということになります。これは今の生よりも前に生が存在したことを意味します。我々には前世が存在したということになります。

 

  状況の変化における注意の役割

 今この時に、前の状況の在り方は今存在するという在り方から一つ前に存在したという在り方に変わります。そして、前の状況はそのままで今存在するという在り方をしていたのが、今この時に前の状況から前の状況の残像へと変化します。だから、前の状況の残像化が前の状況の在り方の変化であり、前の状況の残像は前の状況が一つ前に存在したことを表します。

 このように、前の状況の残像は前の状況が一つ前に存在したことを表すので、これと新しい状況の重ね合わせには、前の状況から新しい状況への変化が生じることになります。このことから類推すると、前の状況が消える変化、すなわち、前の状況の残像化では、前の状況が一つ前に存在したことを表す、前の状況の残像とただ現れたままを感じられる前の状況の残像の重ね合わせに生じることになります。以下、前の状況が一つ前に現れたことを表す、前の状況の残像を単身の前の状況の残像と、ただ現れたままの姿を感じられる前の状況の残像を現れたままの前の状況の残像と呼ぶことにします。そうすると、前の状況の残像化は単身の前の状況の残像から現れたままの前の状況の残像の方向に起きることなります。2つの前の状況の残像が生じることには、注意が既に存在する事物に対しては、今の事物ではなく、前の事物に向くということが関係していると、僕は考えています。 

 既に存在する事物に注意が向けられる場合、注意は今の事物に向くことはありません。今の事物に注意が向くとしたら、今の事物は注意が向けられる事物ですが、注意が向けられる事物に注意が向けられるのは、事物に注意が向けられる時よりも後のことだからです。このことから、既に存在する事物に注意が向けられる場合、注意が向けられるのは、今この時の事物ではなく、その前の事物ということになります。

 既に存在する事物に注意が向けられる場合、事物に注意が向けられるということは、その事物の存在が感じられるということなので、注意の向けられる、前の事物は、存在を感じられる、前の事物ということになります。

 前の事物が消える、すなわち、残像になる変化(事物の移動などに伴う)では、前の事物は存在しません。注意が向けられる、前の事物は今は存在しないけれども、その存在は感じられます。前の事物が今は存在しないという状態は前の事物が消えている状態です。しかし、前の事物が今は存在しないけれども、その存在は感じられるという状態は、前の事物が消えたという状態です。前の事物が存在したのは、今よりも一つ前であり、その存在が感じられつつ、今は存在しないということは、前の事物が今この時に消えたということだからです。前の事物が消える変化が前の事物の残像化なので、前の事物が消えた状態は前の事物の残像化を含みます。注意が向けられ、存在が感じられる、前の事物は前の事物の残像化の始点となり、前の事物が今は存在しない状態が終点となります。前の事物が今は存在しない状態は前の事物の残像です。前の事物が消えた状態では、前の事物に注意が向けられつつ、前の事物の残像が現れたままを感じられるということになります。注意が向けられ、存在を感じられる、前の事物が今は存在しないということなので、前の事物が消えた状態は注意が向けられる、前の事物の残像ということになります。

 以上のことを今の状況に当てはめてみると、注意の向けられる、前の状況の残像は、単身の前の状況の残像でもあり、現れたままの前の状況の残像でもあるということになります。この前の状況の残像は、前の状況の残像化の始点となる、前の状況を含むということから、単身の前の状況の残像だとも言えるし、現れたままを感じられる、前の状況の残像でもあることから、現れたままの前の状況の残像だとも言えます。注意の向けられる、前の状況の残像はそれ自体で、2つの前の状況の残像が重ね合わさった状態で、内部では前の状況の残像化が起きるということになります。

 

  今の状況の構成

 今の状況が、前の状況の残像2つと新しい状況で構成されるとすると、この状況内では前の状況から前の状況の残像と新しい状況の混在した状況への変化が生じることになります。では、さらに、前の状況が前の状況の残像2つと新しい状況1つの混在した状況、すなわち、今の状況に変化することは考えられないのでしょうか。

 今の状況にさらに、前の状況の残像が重ね合わされ、前の状況から今の状況への変化が生じるとすると、この前の状況の残像は今の状況内の新しい状況1つと前の状況の残像2つとそれぞれ重ね合わさり、それぞれ前の状況から新しい状況への変化と2つの前の状況の残像化が生じます。

 この時、今の状況内でも、前の状況から新しい状況への変化と前の状況の残像化が生じます。このため、前の状況から今の状況への変化の中で、前の状況の残像化が二回続けて起きたり、前の状況の残像化が起きた後に前の状況が新しい状況へ変化するといったことが起きることになります。これらの二段階の変化は一つの状況で完結しないので、今この時の状況内で、これらの変化が起きることはありません。このように、今の状況にさらに前の状況の残像が重ねられて、前の状況から今の状況への変化が起きるとすると、一つの状況では完結しない変化が一つの状況で起きるという矛盾が生じます。したがって、前の状況から今の状況への変化は起きないということになります。これは今の状況に重ね合わされる、前の状況の残像が存在しないことを意味します。

 今の状況が2つの前の状況の残像と1つの新しい状況で構成されることから考えて、前の状況の残像は2つの前の前の状況の残像の残像と1つの前の新しい状況の残像で構成されると考えられます。

 では、今の状況内で、前の状況の残像化が起きる時、前の状況の残像内に存在する、前の前の状況の残像の残像化は起きるのでしょうか。前の前の状況の残像の残像同士が重ね合わさった状態に前の前の状況の残像の残像化が感じられると仮定してみます。

 この仮定では、今の状況において2つの前の状況の残像間と前の状況の残像内でそれぞれ前の前の状況の残像の残像化が起きます。単身の前の状況の残像内で、前の前の状況の残像の残像化が起きた後、2つの前の状況の残像間で前の前の状況の残像の残像化が起きることになります。また、2つの前の状況の残像間で前の前の状況の残像の残像化が起きた後に、現れたままの前の状況の残像内で前の前の状況の残像の残像化が起きることになります。これらの二段階の変化はそれぞれ一つの状況で完結しないので、これらのことは起きません。だとしたら、2つの前の状況の残像間か、2つの前の状況の残像内かのいずれかで前の前の状況の残像の残像化が起きないことになります。今の状況内で、前の状況の残像化が起きる時、それぞれの前の状況の残像に含まれる、前の前の状況の残像の残像が2つ重ね合わさった状態が生じます。だから、今の状況内では、2つの前の状況の残像間で、前の状況の残像化が起きる時、これら2つの前の状況の残像間で、前の前の状況の残像の残像化は必ず起きます。したがって、2つの前の状況の残像内では、それぞれ前の前の状況の残像の残像化は起きないことになります。前の状況の残像化は前の状況の残像に違いがある時に生じます。2つの前の状況の残像内のいずれにも、前の前の状況の残像の残像化が起きないということは、いずれの前の状況の残像内でも、2つある、前の前の状況の残像の残像には違いがないということになります。2つある、前の前の状況の残像の残像に違いがないということは、2つの前の状況の残像はそれぞれ前の前の状況の残像の残像1つと前の新しい状況の残像1つで構成されるということです。

 前の状況の残像が前の前の状況の残像の残像1つと前の新しい状況の残像1つで構成されることから、前の前の状況の残像の残像は、(前の)×3状況(の残像)×3と前の前の新しい状況の残像の残像の重ね合わせです。さらに、(前の)×3状況(の残像)×3は、(前の)×4状況(の残像)×4と(前の)×3新しい状況(の残像)×3の重ね合わせということなります。

 以上のことを繰り返すと、結局の所、前の状況の残像は、…と(前の)×n新しい状況(の残像)×n(n=3~)と(前の)×(n-1)新しい状況(の残像)×(n-1)と…と前の新しい状況の残像の重ね合わせということになります。

 

 状況の変遷の起きる仕組み

 2つの前の状況の残像に含まれる、2つの(前の)×n新しい状況(の残像)×nの重ね合わせには(前の)×n新しい状況(の残像)×(n-1)の残像化が生じます。この残像化では、(前の)×n新しい状況(の残像)×nは、(前の)×n新しい状況(の残像)×(n-1)が一つ前に存在したことを表します。そして、残像化は一つだけではありません。n=1以上であれば、(前の)×n新しい状況(の残像)×(n-1)の残像化は起きます。各nの値における、(前の)×n新しい状況(の残像)×(n-1)の残像化が今この時に一度に起きるので、各nの値における、(前の)×n新しい状況(の残像)×nと(前の)×n新しい状況(の残像)×(n-1)の間の残像化一回分の差が今この時に一度に感じられます。(前の)×n新しい状況(の残像)×nと(前の)×n新しい状況(の残像)×(n-1)とでは、残像化を受けた回数が一回だけ違います。だから、この違いが感じられるということは、(前の)×n新しい状況だけでなく、他の状況がn回残像化を受けたものとn-1回残像化を受けたものの違いが感じられるということです。このため、各nの値における、(前の)×n新しい状況(の残像)×nと(前の)×n新しい状況(の残像)×(n-1)の違いが一度に感じられるということは、(前の)×n新しい状況(の残像)×nに(前の)×n新しい状況がn回残像化を受けたことが感じられるということになります。一回の残像化につき、状況は一つ前に存在したという在り方に変わるので、(前の)×n新しい状況(の残像)×nは(前の)×n新しい状況がn個前に存在したことを表すことになります。だから、単身の前の状況の残像内における、(前の)×n新しい状況(の残像)×n(n=2~)と(前の)×(n-1)新しい状況(の残像)×(n-1)の重ね合わせに、(前の)×n新しい状況から(前の)×(n-1)新しい状況への変化がn-1個前に起きたことが生じることになります。さらに、単身の前の状況の残像に含まれる、前の新しい状況の残像と新しい状況の重ね合わせには、前の新しい状況から新しい状況への変化が生じます。

 これらの変化の連鎖は、…→(前の)×n新しい状況→(前の)×(n-1)新しい状況→…→(前の)×2新しい状況→前の新しい状況→新しい状況という、状況の変遷です。 

 n>mとすると、(前の)×n新しい状況(の残像)×nは、(前の)×n新しい状況(の残像)×mよりもn-m回多く残像化を受けていることになります。だから、(前の)×n新しい状況(の残像)×nは、(前の)×n新しい状況(の残像)×mがn-m個前に存在したことを表すとも言えます。このことから、(前の)×n新しい状況(の残像)×nと(前の)×m新しい状況(の残像)×m(1≦m<n)の重ね合わせに状況の変化が感じられそうです。しかし、実際にはそんなことはありません。

 単身の前の状況の残像内で、(前の)×n新しい状況(の残像)×nと(前の)×m新しい状況(の残像)×mの重ね合わせに状況の変化が感じられるとしたら、この状況の変化の後に、2つの前の状況の残像間で(前の)×m新しい状況(の残像)×(m-1)の残像化が起きることになります。この二段階の変化は一つの状況で完結しません。だから、単身の前の状況の残像内で(前の)×n新しい状況(の残像)×nと(前の)×m新しい状況(の残像)×mの重ね合わせに状況の変化が感じられることはありません。 

 現れたままの前の状況の残像内で、(前の)×n新しい状況(の残像)×nと(前の)×m新しい状況(の残像)×mの重ね合わせに状況の変化が感じられるとしたら、この状況の変化は2つの前の状況の残像間で(前の)×n新しい状況(の残像)×(n-1)の残像化が起きた後に起きることになります。この二段階の変化が一つの状況で完結することはありません。だから、現れたままの前の状況の残像内で、(前の)×n新しい状況(の残像)×nと(前の)×m新しい状況(の残像)×mの重ね合わせに状況の変化が感じられることはありません。現れたままの前の状況の残像はやはり、ただ現れたままを感じられるだけということになります。

 単身の前の状況の残像に含まれる(前の)×n新しい状況(の残像)×nと現れたままの前の状況の残像に含まれる(前の)×m新しい状況(の残像)×mの重ね合わせには、起きるとしたら、間にn-m-1個の空白を挟んだ、(前の)×n新しい状況(の残像)×mから(前の)×m新しい状況(の残像)×mへの変化が今この時に起きると考えられます。この変化は、間にn-m-1個の空白を挟んだ、(前の)×n新しい状況(の残像)×mから(前の)×m新しい状況(の残像)×mへの変化が単身の前の状況の残像内で起きた後に、この(前の)×m新しい状況(の残像)×m由来の(前の)×m新しい状況(の残像)×(m-1)から現れたままの前の状況の残像に含まれる(前の)×m新しい状況(の残像)×mへの変化が続くという、二段階の変化に相当します。(前の)×m新しい状況(の残像)×(m-1)の残像化は今この時に起きる変化であるので、この二段階の変化は、起きるとしたら、今の状況だけでは完結しません。だから、この二段階の変化に相当する変化が今この時に起きることはありません。よって、単身の前の状況の残像に含まれる(前の)×n新しい状況(の残像)×nと現れたままの前の状況の残像に含まれる(前の)×m新しい状況(の残像)×mの重ね合わせに、間にn-m-1個の空白を挟んだ、(前の)×n新しい状況(の残像)×mから(前の)×n新しい状況(の残像)×nへの変化が今この時に起きることはありません。 

 前の状況の残像が2つ重ね合わさった状態に生じる、間にn-m-1個の空白を挟んだ、(前の)×n新しい状況(の残像)×mから(前の)×m新しい状況(の残像)×mへの変化が、現れたままの前の状況の残像から単身の前の状況の残像への方向に起きるとしたら、この変化は、(前の)×n新しい状況(の残像)×(n-1)の残像化と(前の)×m新しい状況(の残像)×(m-1)の残像化と共に三段階の変化を形成することになります。三段階の変化は一つの状況だけで完結しないので、この場合も、間にn-m-1個の空白を挟んだ、(前の)×n新しい状況(の残像)×mから(前の)×m新しい状況(の残像)×mへの変化が今この時に起きることはないということになります。 

 単身の前の状況の残像に含まれる、各(前の)×n新しい状況(の残像)×nと新しい状況の重ね合わせに(前の)×n新しい状況がn-1個の空白を経て、新しい状況に変化したことが今この時に一度に生じますが、状況の変遷はこれらの変化が差し引きされることで、生じると考えることもできます。

 これは、今のこの状況にn段階の変化が起きることとは異なります。すなわち、…(前の)×n新しい状況が(前の)×(n-1)新しい状況に変化した後、(前の)×(n-1)新しい状況が(前の)×(n-2)新しい状況に変化した後、…前の新しい状況が新しい状況に変化することとは違います。各(前の)×n新しい状況(の残像)×n由来の(前の)×n新しい状況(n=1~)は出現順に時系列上に並べられ、この様子が一度に感じられるということです。

 (前の)×n新しい状況(の残像)×nと(前の)×m新しい状況(の残像)×mの重ね合わせには、(前の)×n新しい状況がn-m-1個の空白を経て、(前の)×m新しい状況に変化したことが生じることになります。この変化は過去に起きた変化であるので、(前の)×m新しい状況(の残像)×(m-1)の残像化と共に、今この時に生じる二段階の変化を形成することはありません。

 やはり、現れたままの前の状況の残像に含まれる、(前の)×n新しい状況(の残像)×nと新しい状況の重ね合わせには、間にn-1個の空白を挟んだ、(前の)×n新しい状況から新しい状況への変化は生じないことになります。この変化は、生じるとすると、2つの前の状況の残像間における、(前の)×n新しい状況(の残像)×(n-1)の残像化と二段階の変化を形成し、この二段階の変化は一つの状況内では生じないからです。

 (前の)×n新しい状況(の残像)×nと(前の)×m新しい状況(の残像)×mの重ね合わせに生じる、(前の)×n新しい状況がn-m-1個の空白を経て、(前の)×m新しい状況に変化したことは、状況が残像化を一回受けるごとに、この状況が一つ前に存在したことを表すという法則下で唯一成立する、(前の)×n新しい状況と(前の)×m新しい状況の関係です。この関係に加え、(前の)×n新しい状況と(前の)×m新しい状況の間で別の関係も成立するのであれば、そこには別の法則が存在することになります。通常、今の状況には、(前の)×n新しい状況と(前の)×m新しい状況の関係を成立させる法則は一つだけであるので、今の状況で成立する、(前の)×n新しい状況と(前の)×m新しい状況の関係も一つだけです。

 今の状況で状況の変遷が起きるということは、果てのない過去から状況が変化し続けてけてきたことを示します。過去に果てのないことは次のように説明できます。

 過去のある時点から状況が出現したとすると、この状況よりも前には状況が存在しないので、この状況には前の状況の残像が存在しません。新しい状況だけが存在するだけで、状況の変化は起きないことになります。つまり、無から静止している状況が出現したことになります。先述したように、状況の静止は同じ状況の継続で、これを感じるには変化する事物が存在しなければなりません。しかし、この静止している状況にはこのような事物は存在しないので、この状況は感じることはできません。無も静止している状況も感じられないので、無に静止している状況が現れても、これは感じられません。過去のある時点から状況が出現したと仮定すると、この状況は感じられないという矛盾が生じることになります。よって、状況は果てのない過去から変化し続けてきたということになります。

 また、無から今の状況が現れるということはありません。

今の状況は2つの前の状況の残像と新しい状況で構成されます。前の状況が残像になるには、残像になる前に、この状況が存在していなければなりません。だから、今の状況が現れる前は無だったということはありません。

 nがある値lよりも大きい(前の)×n新しい状況(の残像)×nに(前の)×n新しい状況がn個前に存在したことが生じないとしたら、すなわち、(前の)×l新しい状況よりも前の新しい状況が存在したことが感じられないとしたら、(前の)×l新しい状況の前は、新しい状況の存在しない状態が存在したということになります。状況の変遷は、(前の)×l新しい状況→…→新しい状況となります。先に書いたように、(前の)×n新しい状況(の残像)×nが(前の)×n新しい状況がn個前に存在したことを表すのは、(前の)×n新しい状況(の残像)×(n-1)の残像化とn>mの全ての(前の)×m新しい状況(の残像)×(m-1)の残像化が今この時に一度に起きるためです。そして、後述するように、新しい状況が存在しない状態は感じられます。感じられるということは、この状態は残像化するということです。だから、(前の)×l新しい状況よりも一つ前に新しい状況の存在しない状態が存在したということは、新しい状況の存在しない状態(の残像)×lの残像化が生じたということです。新しい状況の存在しない状態(の残像)×(l+1)は実際には存在しないにもかかわらず、新しい状況の存在しない状態(の残像)×lの残像化が起きたことになります。nがある値lよりも大きい(前の)×n新しい状況(の残像)×nに(前の)×n新しい状況がn個前に存在したことが生じないと仮定すると、このような矛盾が生じます。だから、単身の前の状況の残像に存在する、(前の)×n新しい状況(の残像)×nのnがある値を超えると、(前の)×n新しい状況(の残像)×nが(前の)×n新しい状況がn個前に存在したことを表さないということはありません。

 今の状況には、果てのない過去から今に至るまでの状況が全て含まれていて、我々は今この時にこれらの全てを感じることになります。我々は習慣的に、記憶にない過去は自分にとって存在しないと考えますが、実はそうではないということになります。体験した過去の出来事は今この時に過去として存在していて、我々はそれを感じているのに、感じている自覚がないのです。


 

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