不審だった人たち
『対象を収納しますか?』
一瞬意味が分からなかった。痛みと悲しさで情緒はぐちゃぐちゃになっているのだ。できることは少ない。ケンタは肯定の意思をスキルボックスに返した。
ドサって音が後ろでしたんだ。
今日はつまらねえ1日だったが、ふとした時に幸運てのは転がってくるもんだ。
ツラのいいガキが路地裏に転がっていた。持ち帰って楽しんでから売っぱらえば飲み代くらいにはなりそうだ。
ガキは最初にガツンと痛めつければ大人しくなる、慣れたもんだ。
さっさと袋に詰め込んでその場を後にしようとしたんだ。
そしたら音がしたもんで、振り返ったら舎弟が倒れていたんだ。
飲みすぎか?そう思ったら次々と舎弟達が倒れていく。
一瞬何が起こったのか分からなかった。
何か攻撃を受けている!?
そう考えたのと、肩に担いだガキを結びつけるのに時間はかからなかった。
袋の中からは相変わらず痛みに耐える様な泣き声が聞こえる。
怖くなった俺は咄嗟に手に魔力を込めてファイアを出した。無詠唱だったから威力は弱いが、ズタ袋を燃やすには、充分だった。そのまま投げて袋ごとガキが燃えるはずなのを見ていたんだ。
はず、というのは…燃えてなかったんだ。ズタ袋からいつの間にかガキが出てきてこっちを睨んでたんだ。
おまけにガキは俺と同じ火魔法を放ってきた。
紋章がちゃちに見えたからショボいスキルかと思っていたがこいつも火魔法のスキルだったのか?!
慌てて相殺したがよく分からない。
怖さを怒りに置き換えて叫びそうになったんだよ。そして火を拳に纏わせて殴りかかった瞬間だった。
喉が、無くなったんだ。
無くなったというか、ぽっかり穴が空いたというか。とにかく喉に空間ができたのが自分でも分かったんだ。
意識が途切れるのが分かった。空いた穴からヒューヒュー息が漏れる音と、血が吹き出してくるのを感じる。
最後に見たのは泣きながら睨んでるガキと、横に積まれた四角い肉塊だった。