不審な人たち
「ね、キミは迷子かな?どこから来たの?」
見下ろす様な不快な笑みを浮かべながら、男達が近づいてくる。
思わず身の危険を感じてケンタは座りながら後ずさった。
「一緒に行こっかぁ、大丈夫だよ。うん、大丈夫。」
一瞬で髪の毛を掴まれ、立つ高さまで引き上げられる。
「おー、いいじゃん。売れそうだわ」
「あ、味見したい!」
「こんなとこにラッキーだねぇ」
思い思いに口にするが痛さでそれどころではない。思わず殴ろうとするが大人の腕の力に勝てるはずもなく、されるがままになっていた。瞬間、理不尽な力で投げ飛ばされた。
「い、痛い…」
「袋あったっけ?入れて運んじまおう」
「あるよ兄貴!今日は久しぶり美味い酒が飲めるね」
「毎日飲んでるじゃねえか」
がっはっはと笑いながら慣れた手つきで袋が用意される。
痛みと恐怖で声も出ない。
そうだ、レンガを収納していた。スキルを発動してレンガを握りしめる。
「お、スキル持ちか。何のスキルだ?」
「高く売れるかな!」
「まあこんなとこにいるガキなんて大したスキルじゃねえだろうが、ないよりはマシだな」
「く、来るな!」
「ボーズ、俺は火魔法中のスキル持ちだ。あまり余計な手間かけたくねえ、大人しく捕まっておけ。まあ悪い様にしねえからよ。」
火魔法中と言えば王都の騎士団が持っていてもおかしくないスキルだ。何でこんな奴が…。怖さで思わずレンガを投げる。
「おおっとぉ!危ないねえ、悪い事するのはこの手かい?」
鈍い痛みが手に入る。蹴りを入れられていた。手から波打つ様に激痛が起こり明らかに折れた色をした指がそこにあった。
「うんぐぅぅぅぅう!!」
「逆らうからだ、大人しくしろや」
「あんま怪我させると売れにくくなるからなぁ」
涙と痛みが止まらない。頭から袋が被せられる。抵抗する間もなく担ぎ上げられた。
ダメだ、何でこんな事に。何をやってもうまくいかない。理不尽と闘う事もできない。
絶望とこれまでの悲惨さとこの先の更に暗い未来がケンタから抗う力を奪い去った。ただ泣いて今が過ぎるしかなかった。今を我慢すれば。この後も今を我慢すれば。その先も。そうしても何も変わらない事も分かっていた。選択肢のない未来にケンタは今に集中して、そしてただ今が過ぎ去る事を待つしかできなかった。
無気力で何も見えない中、男達の声がする方に意識を向けた。奴隷として売る前にどうのこうの。聞いてられない話をしている。こいつらも僕のスキルが使えるものだったらあっという間に蹴散らせただろうに…
ケンタはスキルを使ったままだった事に気づいていなかった。
『対象は容量を超えるため入りません』
『対象を収納しますか?』
声がして初めて気がついたのだ。