出発
10歳になった。村から王都へ集団移動がされる日になる。ケンタは腫れぼったい顔をさすりながら人が集まるのを黙って見ていた。ケンタをはじめ10人の子供達と引率として大人が2人。もちろんポポもいる。昨日ポポに殴られた跡はまだ引かない。村の入り口は見送りでごった返していた。
アラウも見送りに来てくれた。
「お兄ちゃん頑張ってね!」
「アラウ…ありがとう」
「よーし、みんな揃ってるな?じゃあ出発するぞー」
引率のやる気のない声に導かれて馬車が徐々に動き出す。
今年は孤児院からは僕とポポだけなので少しというかかなり肩身がせまい。目を合わせると喧嘩になりそうなのでずっと下を向いて王都に着くまで息を潜めることになった。
ポポは馬車の中でも人気者だった。
今日のポポは袖をまくった上着にショートパンツとブーツ。どこから手に入れたのかダガーを腰のベルトに引っかけて健康的な肌を見せて笑っていた。
途中ちらちらとケンタを見ていたが、話しかけるでもなく他の子と話に興じていた。
「俺はきっと剣技のスキルだと思うんだ」
「ポポは剣の扱いが昔から上手かったもんね」
「ポポならどんなスキルでも冒険者として上手くやっていけるよ」
「まあね、どんなスキルでもやってみせるよ。まあ、限度はあるけどね」
ニヤリと笑ってケンタはこちらを見た。
他の人には親切なのに…
嫌な奴だ。