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――6月9日――


青柳あおやぎ高校は今日もいつもと変わらない。

僕はいつもと同じ授業を受け、いつものように終わりのチャイムを待っていた。


いや、今日はいつも以上にチャイムが鳴るのを待っている。

放課後にやりたいことがあるからだ。


――今の僕が抱えてるこの問題を解決するため、その第一歩を踏み出す。


時計を見るとあと数秒。

チャイムが鳴るまで担任の話は終わらない。

たまには早く切り上げたらいいのに。


チャイムが鳴った。


「来週から始まる中間テストに向けて各自勉強に励むように。それではこれで終礼は以上とします」


ふう~やっと終わった。

さてと、友次を連れて二組にいくか。


「ねえ奈海なみちゃん! 今日も柳士りゅうしくんと一緒に帰るの?」


友次のやつ、終礼でも寝てやがるのな。


「ちょっと、奈海ちゃん?」


あ、いけねえ。今の僕は奈海だった。

危うく無視するところだった。奈海の印象を悪くするわけにはいかない。


話し方には気を付けて……


「やあ遠野目とおのめさん! 今日はいい天気だったね。どうしたの?」


「え? やっぱり、今日の奈海ちゃん少し変だよ? 何か悩み事でもあるの?」


まずい、言葉選びをミスった!


「え、ええ!? そうかな!? いつもと同じだと思うけどなあ、あは、あはははは」


「そう? ならよかった。普段の奈海ちゃん、私のこと彩里さいりって呼ぶのに今日は苗字で呼ぶんだもん。何か心に大きな傷が出来ちゃったのかと思ったよ~」


ある意味当たってる。これが女の勘か?

でもまあ普通に接してれば入れ替わってることはバレないだろう。


「最近よく眠れなくてね。今夜たくさん寝たら明日には復活すると思う。だから心配ないぜ!」


「心配ないぜ?」


「ああ、いや! 心配ないわよ、おほ、おほほほほ」


「奈海ちゃん、今日は早めに寝てね」


「おう。いや、うん、わかったわよ! それじゃあね、遠野目彩里ちゃん!」


僕は急いでその場を離れた。

まったく、会話一つに油断もすきもねえな。


友次は廊下側の端の一番前の席で寝ていた。


「おい友次。起きろよいくぞ」


「んあ? もう終わり?」


「とっくに終わってるよ。っておい、それ提出用のプリントだろ?」


身体を起こした友次の机にはさっきの終礼で回収したプリントがあった。

項目のほぼすべてが空欄で、書かれているのは座河川友次(ざかせんゆうじ)という名前とクラス番号の3だけだ。


「これ提出せなあかんの!? んーまあええわ! 明日に出しとけば問題ないやろ!」


友次はプリントを机にしまう。


「それならほら、さっさと二組に行くぞ」


立ち上がった友次の恰好は、いつものようにブレザーの下からブラウスが全開に出ていた。



◇◇◇



二組をのぞく。

奈海と百々は……ああ、いたいた。


窓側の一番後ろ。

本来の僕の席に奈海が座り、その横に百々は立っていた。


「奈海、昨日のホットサンドはどうだった?」


声をかけられた。

二組の戦国渚(せんごくなぎさ)だった。


「やっほー渚っち。ホットサンドもすごい美味しかったよ」


「そうか。手合いが終わったら私も食べてみよう」


「それがいいよ。剣道の試合頑張ってね」


「ありがとう。ところで、その手はどうした?」


「ああこれ?」


僕は肌色のシップが巻かれた右手を前に出す。


「ちょっと手首をね。明日には取れると思うから心配しないで」


「それなら安心だ。柳士も右手首にシップを巻いていたけど、もしかして昨日もまた柳士とやり合ったのか?」


「うーん、まあそんなとこかな」


「そうか」


渚は席で顔を伏せている柳士を見た。


「柳士の鈍いところには私も呆れてはいる。奈海のもどかしくなる気持ちも分かるが、大事なことは自分で気が付かないと後が続かない。私が出来るのはそのきっかけを作ることぐらいだが、奈海が諦めない限り私は協力しようと思っている。だから、奈海も上手くいかないからといって、すぐに柳士に手をあげるのは控えたほうがいい。二人の問題に口をはさむつもりはないが、今のままだといつか柳士を病院送りにしてしまうぞ」


鈍いところ? 奈海の気持ち? どういう意味だ?

よくわかんねえけど、すぐに手を出す奈海にそれはいけないって注意する渚っちはいいやつだ。


「おっと、こうしてはおれん。手合いの日が近いのでな、私はもういく。奈海、落ち着いたらまた遊びにいこう」


「おうそうだな。楽しみにしてるぜ」


教室を出ようとしていた渚は振り向いて僕を見る。

少し戸惑ったような表情だ。


あ、いっけね! 素で話しちまった!


「ま、またね! 渚っち!」


僕はオーバーに手を振る。

渚は笑顔で応えると、ポニーテールを揺らしながら教室を後にした。


渚っちとは中学が同じで僕とも奈海とも仲が良かった。

中三のときはクラスがみんな同じだったこともあってよく遊んでいた。


今日、僕は奈海として初めての学校生活を送ってみたが、渚っちほど絡みやすい人はいなかった。


理由はそれだけじゃないと思うけど、話すとすぐに気が緩んでしまう。

話しかたを意識するのって難しいな。


とりあえず、奈海のとこにいくか。

って友次?


友次は廊下に顔だけを出して渚を目で追っていた。


「なあ奈海、渚っちと付き合うにはどうしたらええやろか」


また始まった。

友次は今、渚に恋をしている。


「前にもいっただろ? 渚っちは強い男にしか惹かれねえって。付き合いたいなら剣道で手合いを申し込んで勝つしかない」


けど、それは無理に等しい。


渚は体格に恵まれている。

170を超えた身長に、竹刀を軽々と振るう筋肉。それに、ブラウスの第一と第二ボタンが閉まらない程の豊満な胸。

奈海とは天と地だ。


一方で友次は、身長は165、ブラウスはMサイズだけどSでも着れる体格。筋肉もないし竹刀は握ったこともない。


「有段者なら初心者相手に手加減くらいしてくれるやろか?」


「するわけねえだろ。手加減して勝つところのどこに惚れる要素があるんだよ。ほら、馬鹿なこといってないでいくぞ」


「ああ……俺の渚っち……」


友次は親友枠

渚は友達枠


入れ替わりを知ってるかなどで距離感を出して、キャラ間の繋がりの濃さを意識して書いてく予定です。

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