第46話 番外編 レンジくんのこと パパ篇
健一という男の部下に、不思議な力を持っている男がいた。
レンジという名で、健一の娘エリカの同級生だった時もあった。
レンジは、何の力も無い健一とは違い、霊感と呼ばれるような力を持っていて、それが原因で、しばしば事件に巻き込まれることがあったという。
一般人で、特殊な力を何も持っていない健一にとって、レンジの話はとても面白いものだった。
公園で巨大な猫と格闘した話。
よくない霊からバレンタインのチョコをもらった話。
夢の中で、海底の砂に刺さったビンとカンから、私の娘にお礼を言ってくれと言われた話。
洪水の日に、電話ボックスに命を助けられた話。
ほかにも、まるで鶴の恩返しのように、様々な霊に恩返しされた話をたくさん聞かせてくれた。
そして、赤い箱と、死にかけの街の話。
話すレンジの瞳は輝いていて、健一は、世界には悪霊ばかりでなく、良い霊も存在するのだと納得することができた。
わが国に古来より伝わる思想の中に、付喪神思想というものがある。
森羅万象、全てのモノに、魂が宿り、まるで人間のような意思をもつことがある、というものだ。
この世界に、「形」を持って生まれた瞬間から「命」を持ち、そして、「意味」を失ったとき「死」を迎える。
「全てが生きているんすよ」
頼りになる部下は、そう言った。
全て。
――「願い」さえ「時間」さえ「宇宙」さえ、全て、生きている。
迷いのない目で彼は言い切った。
健一はその言葉に、人間という身であっても、決められた枠をあっさり飛び超えて飛び出すことのできる無限の可能性を見た気がした。
「しかし……だからといって、この男に娘はやらん! エリカは、もっと普通の男と結婚して幸せになってもらうのだ。つまり――!」
「ちょっと、どういうこと、パパ」
「もともとエリカが子供の頃から、こいつだけはダメだと思ってたんだ。そりゃあ優しいところもあるが、不良だし、女たらしで浮気者だ。頭だって良くない!」
「レンジだって昔のままじゃない!」
「とにかくダメだ! 父さんは、レンジくんとの結婚には絶対大反対だ!」
「何でよ! パパのバカ!」
「反対ったら反対だ! 孫が霊媒体質になったらどうする!」




