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カノンソング  作者: 黒十二色
カノン進行
19/48

第19話 氷を溶かせ レンジ篇

「お」


 高校生になったレンジは、本屋のレジ前で、昔の友達と再会した。


「よう、エーイチ」


 ジャージにサンダル姿で漫画雑誌を持っていたレンジ。


 対して、友人のエーイチは、優秀な高校の制服姿で、なにやら、やたら難しそうな本を買おうとしていた。いわゆる学術書というやつである。


 会計を済ませ、店を出た二人は、街を歩きながら久しぶりの会話を交わす。


「しかし、レンジ、久しぶりだな」


「ああ、中学卒業以来になるか」


「そんなことないだろ、冷たい奴だな。二ヶ月前に会ったじゃないか」


「そうだっけ」


「そうだぞ。あ、中学といえば、オレたちの中学がな、取り壊されることになったらしいぞ」


「へぇ、そうなのか」


「おい、結構大きな問題だぞ、もっと濃い反応をしろよ」


「だって、もう卒業しちゃったら関係ないし」


「レンジ、お前なぁ……」


「何だよ」


「まぁいい。お前はそういう奴だ……。しかしレンジ……。また恋人新しくしたのか?」


「なぜわかる?」


「服装が変わりすぎだ」


「相変わらず鋭い洞察力だ。インテリメガネは言うことが違う」


「ふっ、まあな。レンジとは大違いだろ」


「だがエーイチよ。女の子をモノみたいな言い方するなよ、失礼だぞ」


「……モノみたいに扱ってるのは、お前の方なんじゃないのか?」


「んなことはない」


「どうだか。そもそも、何でそんなにとっかえひっかえする必要があるんだ?」


「俺だって、付き合ってるときはさ、一生一緒にいるつもりでいるぞ。でも、なんでか、いっつも、すぐに別れる流れになっちまうんだよな」


「なあ、レンジ」


「なんだよ」


「やっぱり、あかりのこと引きずってるのか?」


「そ、そんなわけ、あるかよ」


「いくら告白する前に希望が潰えたからってなぁ」


「違うって言ってんだろ!」


「いやぁさ、あの時は俺も驚いたんだよ。あかりはレンジのこと好きなんだろうなって思ってたから」


「うるせえな……」


「まさかいきなり『フィアンセです』と紹介されるとは思わなかったよな」


「そうだな」


「しかも金持ちでいけ好かないけどイケメンでラブラブ」


「そうだなぁ。ラブラブだったなぁ」


「お前は、良いピエロだったよ」


「ケンカ売ってんのか? このメガネ野郎」


「やっぱ引きずってんじゃねえか」


「別にだし……」


「レンジはさ、将来何になりたいとか、あるか?」


「無えよ」


「サッカーは?」


「あきらめた」


「よく言ってた芸能界入りは」


「もういいや」


「どうやって生活していくんだ」


「ヒモにでもなるかな」


「お前の場合、ヒモになるって選択肢もリアルだから困る」


「何でお前が困るんだよ、俺の人生だろ」


「何を言ってんだ、世間体というものがあってだな、オレの昔からの友達がヒモやってますなんてことになってみろ、オレという存在の価値が暴落だ」


「……じゃあ、俺を友達なんて言わなけりゃいいんじゃねえか?」


「レンジ、あいにくオレはしつこいぞ。お前と同じだ。絶対にお前を見放したりはしないからな」


「そんなこと宣言されてもなぁ」


「オレはお前をライバルだと思ってるんだ。しっかりしてもらわないと困る」


「困るったってなぁ」


 エーイチはやれやれと溜息を吐いて、


「要するにだな、オレを何度も絶望させたあのポテンシャルを見せてみろ。そのまま居たら、一生氷付けだ」


「そうか、そうだな。わかった……」


「おお、わかってくれたか!」


「本当に、心の底から好きだと思える女の子さがすよ! 俺! がんばる!」


「え……。そっちを最優先なの? 人生設計とかじゃなくて? せめて夢をかなえる、とかじゃなくて?」


「もう二股とかしない!」


「当然のことだろそれ。今まで何股かけてたんだよ」


「えーと」


「いや、もう、何でもないよ……」




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