1.縁結びとは、そっと背中を押すこと。
ここから第1章。
『そんなわけで、今日から動くぞ』
「スマホ越しに言われても、現場の士気は上がらないぞー?」
――翌日になって。
手伝うとは言っても、俺はごく普通な高校生だ。
平日は学校に行っているし、縁のようなニート状態ではないので、自由に時間を作ることなんてできない。そんなわけだから、ひとまずスマホで彼女と通話を繋ぎつつ、適宜指示を仰ぐこととなった。
そうやって俺が通学路を歩いていると、ふいに縁がこう訊いてくる。
『そういえば、尚弥。お前は好きな相手とか、いないのか?』
「は? なんだよ、藪から棒に」
『藪から棒ではないだろ。これは縁結びの試験だぞ』
「あー、たしかに……?」
それは何ともない雑談だった。
しかし縁結びをするのが目的なら、俺も対象になり得るわけだ。そう考えると、この会話も何かしらの突破口になるかもしれない。
そう考えて、俺は――。
「うちの高校に『高峰芽吹』っていう、美人の生徒会長がいるんだけど――」
『あぁ、駄目だ。名前を聞いただけで分かる。縁はない』
「なんでだよ!?」
憧れの相手の名前を口にしたら、即行で否定された。
なんかいま縁結びどころか、一つの恋が潰えたような気がする。そう思いつつ、スマホ越しの相手に抗議しようとすると、少女はため息交じりにこう語るのだった。
『あのな? 縁結びとは、どんな相手ともイチャコラできる……というものではないのだ。その者にはその者に適した相手、というのがいる』
「……と、言いますと?」
『要するに、縁結びとは適した相手と引き合わせる助力、ということだ。縁というのは私みたいな神でないと見えない。だから、私を通じて尚弥が背中を押すんだ』
「………………はぁ……?」
なかなかに要領を得ない話だ。
それでも、なんとか自分なりにかみ砕くとすれば――。
「つまりは、なにか? 俺たちにできるのは『縁に気付かせる』ってことか」
『あぁ、簡単に言えばそうだな。もっとも、相手が素直に聞けば、という問題もあるが――おっと、すまん。いまから数分、答えられなくなるぞ』
「え、なんで――」
どうかしたのだろうか。
俺が訊き返そうとすると、イヤホン越しに聞こえたのは『ドドドドドドドドド!!』という、銃を乱射する効果音だった。どうやら、こんな時でもネトゲをしているらしい。
そんな少女の行く末を案じて、俺はまた大きなため息をついた。
すると、その時だ。
「ん、あれって……生徒会長?」
学校とは反対方向に歩いていく女子生徒の姿を見たのは。
間違いでなければ、その人は先ほどの話に出てきた高峰先輩だった。
「……どうしたんだ?」
この時間に、生徒会長が学校と逆方向へというのはおかしい。
これはなにか、事件の香りがする。
「まぁ、縁結びとは関係ないけど。……行くか!」
俺はそう考えて、彼女の後をつけることにしたのだった……。
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