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好きな人に逢いたい  作者: 谷兼天慈
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第4話

 わたしはゲクトの「フラフラしてんじゃね~オマエラ」を毎回聞いている。

 そのお悩み相談コーナーで、以前直接電話で話したことがあるんだよね、友達にいつも傷付けられてるんだーってことを。

「で、君は友達のこと嫌いなの?」

「いえ、嫌いじゃないです、好きです」

「じゃあ、話は簡単だね。嫌いなら別れればいいし、好きなら相手に傷付いたんだよって言う」

「えぇぇー、それが言えないから困ってるんじゃないですかー」

「別に言う必要はないよ」

「え、今言えばって」

「あのね、よく考えてごらん。君は相手の言葉で傷付いた。何でもない相手になら別に何も言う必要はないよ。だって一時的な繋がりってだけでしょ。そういう相手とケンカするのはバカのすることだからね。どーでもいい相手とそんな無駄なことする必要はない」

「…………」

「けれどね、君は相手のことが好きなわけだよね。ずっと付き合っていきたいと思っているわけだよね。そしたらやっぱり自分の正直な気持ちは伝えなくちゃね。それで相手に嫌われてしまってもいいじゃない」

「イヤですよー嫌われるのはー」

「それがいけないんだよ」

(む……)

 あの時、なんでかわたしは亜矢と話している気分になったものだった。

 なんか、わたしの言うことにいちいち突っかかってくるっていう感じ。

「嫌われることを怖がってちゃ人と付き合うなんて出来ないよ。嫌われたくないのなら人を好きにならなければいい。人に近づかなければいい。一人でずっと生きていけばいいんだ」

「……………」

「けれどね、いいかい? 人は一人では生きていけないんだよ。僕もね、もっと若い頃は傷付くのが怖くて必要以上に人と関わるのをやめようとした時期があったんだ」

「え、ゲクトさんが?」

「そうだよ」

 あの時は驚いた。

 ゲクトって、いつも人と一緒にいて一人でいるってことないって聞いてたし、それはそれは淋しがり屋で、どうにかすると誰かと一緒じゃないと寝れないとか───まあ、それはただの噂だったんだけどね。

「僕は確かに淋しがり屋だったね。けれどね、我も強いところがあってね。自分の思うとおりにならないとかんしゃくを起こしたりもした。淋しがり屋で誰かと一緒にいたいけれど、一緒にいると相手のことが気になってしかたなくなって、それに対してイライラしてくる───そんな繰り返しでね。自分も傷付くけれど相手も傷付けてしまって。それで対人恐怖症みたいな感じになったんだよ」

「そうだったんですか」

「うん、そうなんだ。けれど、ある人との出会いで僕は考えを少し変えることにした。自分はいったい誰のために、そして何のために生きているんだろうって」

「誰のために。何のために?」

「最初はね、自分のために生きているんだって思ったよ。普通はそう思うものだと思う。けれどね、その人は自分のために生きてる人じゃなかったんだ」

「自分のためじゃない、んですか?」

「うん、そうなんだ。でも最終的には自分のために生きてるっていうことらしいんだけど」

「なんかよくわかんないです」

 わたしは頭よくない。

 何だか頭が混乱したんだよね。

「それはね。大好きな人のために生きるってことなんだよ」

「大好きな人……」

「そう。人ってね、自分のことだけ考えてるとそんなに強くはなれないんだよ。よっぽど自分に自信がないとね。けれど、大好きな人のことを考えると勇気や元気もらえるじゃない。それと同じで、この人のために自分は頑張ろうって思うと、不思議と頑張れるものなんだよね。だから、大好きな人のために生きる───大好きな人の笑顔を見たいがために、大好きな人の楽しそうな姿を守りたいがために生きてれば強く生きることができるんだよ」

「…………」

「でね、その時、僕は気付いたんだ。他人なんか関係ないんだって」

「他人は関係ない?」

「うん、そうだよ。他人なんか関係ない。自分と好きな人のことだけ考えてればいいんだからね。そのためには自分の気持ちをしっかりと持つってこと。自分の気持ちさえしっかり持っていれば、一人でいようが大勢といようが関係ないんだなって。そう思った瞬間、僕は自分に自信が持てたんだ。でね、不思議なものでね、自分に自信持てれるようになると、自分の気持ちが正直に話せるようになったんだ」

「自信を持つと、ですか?」

「そうだよ。自信だよ。自信を持つんだよ、君もね」

 そうだ。

 真人の言う通りで、ゲクトは自信を掴んだからこそ、自分の気持ちをはっきり他人に言えて、あんなに堂々として生きていけるんだ。

 わたしはどうだろう。

 やっぱり自信が持てれないような気がする。

 どうすれば自信って持てれるんだろうな。

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