七十六夜、叔母さん家の日々 16 新しい世界 2
今日は、じいじの番です。
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?
「・・・・・・」
そうだねえ、じゃあ、じいじが子供の頃のお話をしようかねえ。
まだ、小学校の頃のことだけれど・・・
〇カウトの指導者のお兄さんにとって入団式をクリアできないで、入団することが出来ないってのはそれまでに支出しているであろう金品が存在している以上許されないことのように思う。それでなくても入団式の際には父兄が臨席することもあり、ど忘れして次の言葉が出てこない子供のことなど珍しい事ではないのだろう。
年齢の低い人たちの組織から引き続き、当然のように上に上がってきている子供たちにとってはなんでもない事でも、じいじみたいにぼんやりしている子供にとっては大変なプレッシャーだよ。ずらりと並んだシニア〇カウトの面々の前。制服、制帽に、靴下、靴下止めに至るまで指定の服装で、マフラーや、マフラー止めにも規格がある。そんな中で手で掲げられた団旗の端をつかんで三つの誓いを暗唱するのは、じいじにとって重すぎた。
目の前には先輩の〇カウト達が縦横列に並び、その脇には新入りの仲間の父母兄が見ている。たぶん、その時のじいじは顔は真っ青で、ガタガタ震えていたと思うよ。当然ながら、しどろもどろで、誓いの初めから出てこなかったと思う。憶えていない。
「神と国とに誠を・・・」
団旗を捧げ持っていた個人指導をしてくれたお兄さんが、小声で教えてくれたとおりに後について何とか震える声で誓いを言い終わったのがいつだったのか。まったく解らないうちに何もかもが終わっていたよ。そのあと、何があったのか、どうやって帰ってきたのか、すっぽりと記憶が欠け落ちている。
ともかく、そんな状態でじいじの〇カウト活動が始まったよ。
それでも、先輩たちがじいじを軽んじることはなかったよ。同じ時期に入った仲間とも、扱いは同じようだったし、出来ないことを無理強いされることもなかった。
崇高な理想と理念のもとに活動している団体だから、いちいちボーっとした子供一人に振り回されている暇はない程に、することがたくさんあったのだろうね。
じいじにはしばらくの間は何をやっていたのか、どんな活動があったのか、はっきり覚えていない。
最初にはっきりと記憶にあるのはキャンプの思い出なのかな。
キャンプがあったことははっきり覚えている。そこが何処だったのか、どんなことがあったのか、そこには誰がいたのかなどはなぜか憶えていないのだけど、とにかくキャンプがあったよ。
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。
卒業、入学、その他どんな式でも、傍から見てる分には何でもないのでしょうけど、当事者ともなるとまた違った感じ方になるのかと思います。でも、あの状態に置かれたら私にとっては、災難でしかないような・・・




