六百九十二夜、じいじの高校生生活 275 お母さんの家へ 142 義父 112
今日は、じいじの番です。
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?
「・・・・・・」
そうだねえ、じゃあ、じいじが子供の頃のお話をしようかねえ。
まだ、高校生の頃のことだけれど・・・
「「ただいま~~~」」
台所の裏口を開けて買い物の荷物を入れるとともに、お母さんとじいじは、帰宅の挨拶をする。
「おかえり、映画はゆっくり楽しめたかい。」
おばあちゃんの声が聞こえる。
「子供は、今までよく遊んでいたんだけれどね、今はちょっと眠たくなったのか、おとなしく寝ちゃってるからね。」
「じゃあ、ちょっと時間的には早くなっちゃうけれど、お夕飯の支度に取り掛かっちゃおうかしらね。その間も見ててもらっていい?」
「まだ、今しがた寝付いたところだから、当分は大丈夫じゃないかと思うよ。私はテレビを見ながらそばについているから、ゆっくりでいいから、やってしまいなさいよ。」
「そうね、そうさせてもらうわね。子供の面倒、その間お願いしますね。」
じいじは、おばあちゃんとお母さん達が話している間に、自転車を倉庫の中に仕舞ってしまう。
そうして、映画館に出掛ける時とは逆に小路を辿って、子供部屋?の周りをぐるっと迂回しながら、玄関のある南側の庭の方に歩いていく。
訪れる時には、あまり詳しく眺めてはいなかったのでわからなかったけれど、正面の庭の造りは結構本格的な姿をしていた。お金をたくさん掛けている風には見えなかったのだけれど、それなりには最低限必要な物が備えられていた。
庭木も、まだ新しくて、きれいに手が入ってはいないものの、これから年月が経つごとに姿が整ってくるように感じられることを、一本一本の木々が彷彿とさせている。
決して狭いスペースに混み合っているわけではなくて、年月が経つに従って、木々の種類によって成長が変わることにより、全体の姿形が整ってくるように配置されているように見える。
見た目の奥の三分の一くらいには、こんもりと築山までしつらえてある。玄関から見れば竹垣の奥になるのだけれど、築山の麓には小さな池が置かれている。
飛び石に沿って歩いていくとそれはちゃんとした池で、周りも自然石で囲まれている。池の深さは、ちょうど子供が水遊びしてもいいくらいで、錦鯉を放すのなら空気ポンプで酸素を補充しなければいけないのかもしれない。
池の正面に立って後ろを振り返ってみれば、ちょうど床の間のある、今はじいじとおばあちゃんが休むための客間に使われている部屋のところだと分かる。
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。




