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四百八十二夜、じいじの高校生生活 170 お母さんの家へ 37 義父 7

今日は、じいじの番です。

 眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?

「・・・・・・」

 そうだねえ、じゃあ、じいじが子供の頃のお話をしようかねえ。


 まだ、高校生の頃のことだけれど・・・

 じいじが散歩から帰ってくると、朝ご飯の用意が出来ていた。テーブルの上には、じいじがおばあちゃんと一緒に朝ご飯を食べる時にたまに出てくる、薄っぺらくて、真っ白い塩気が浮いてくるような安物の塩シャケとは別物の、ぷっくりと肉厚で滴るような脂が浮いた、一目で上等だと分かるようなシャケが乗っている。角皿の上に鎮座しているそのシャケはいかにもおいしそうだ。

 そして、お味噌汁はいつもの家で使っている白っぽいお味噌汁ではなくて、赤茶色くてとろんとしていて、いかにもおいしそうな香りがしている。そして具には、きちんとさいころのように刻まれて、それぞれの角が立っているお豆腐に、細長く刻まれた油揚げに、彩りとしてネギが散らしてある。

 毎朝じいじは納豆に生卵を混ぜて、ネギがあればねぎを散らしてご飯にぶっかけて、かき混ぜご飯を掻き込んでいたのだけれど、お母さんは、ちゃんと知ってて納豆も用意がしてある。いつもの納豆は防水紙か杉の極薄板で、巻き包みした上を商品名が印刷してある薄黄色い化粧紙で包装してあるものなのだけれど、用意してあるものは、わら包み○戸納豆だった。

「うわ、どれだけ高級品なんだ! いつも食べてるの? んなわけないよね。」

 少し大きめの小鉢の中に生卵が入っている。これで卵を割ってかき混ぜ、ご飯にかけて食べればいいわけだよね。なんて上品、何とも優雅。じいじはいつもは小ぶりの丼みたいに大きな茶碗に、ご飯をいっぱいに盛って、納豆と生卵をぐりぐりとかき混ぜて、上からしょうゆをかけてがぶがぶ食べていたのに。

 その他には、旅館みたいに味付け海苔がついて、おばあちゃん用にか、別に厚焼き玉子が添えられてある。もちろん、お漬物にも抜かりはない。白菜漬けとたくあんが添えてある。

 これ、いったい何時起きで用意をしたのだろうか。それともとんでもなく手際がいいのか。毎日の食事自体がこれほどではなくても、かなり手をかけているのは間違いないだろう。

 ひょっとしてお母さんは、義父との歳の差婚に何か思うところがあって、自分にできる精一杯の努力をしているのではないのだろうか。義父に対してだけではなくて、その後ろに控えている血縁の有象無象に対して特に。だとしたら、大変なことこの上ない。じいじ自身も、こちらに同居しなかったことが大正解だったのではないかって思ってしまう。

 しかし、聞いた話ではお母さんの方から結婚を迫った事実はないようなのだが。これは、どこかの時点で、事実が逆転してしまってはいないのか? じいじは嫌な汗が背中を流れるのを密かに感じていた、なんてね。


 おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。

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