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四百七十三夜、ばあばの洋裁学園生活 170 母の職場復帰 6 初日 2

今日は、ばあばの番です。

 眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?

「・・・・・・」

 そうだねえ、じゃあ、ばあばが子供の頃のお話をしようかねえ。


 まだ、洋裁学園の頃のことだけれど・・・

 ばあばのお母さんは、職場復帰した初日に定期の在庫調べをすることになったよ。本当は、在庫調べをする際には数量確認する人と、それを書き取る人とのペアで進めるほうが間違いが少なくなる。それに万が一、何かの悪意から不正が起きていた場合には、それを見逃すことが少なくなるようだ。それからどうしても帳簿の数量を確認する必要が生じたときに、二人いれば一人が事務所まで走っていって帳簿の数値を確かめに行かれるからね。

 企業というものは、どれだけ人間関係が良好に見えて、事実そうであったとしても、不正を疑うことを無視するわけにはいかない。会社内部以外からの悪意が襲ってくるかもしれないからだ。

 人間は、基本的には優しくて、意図的に悪い事から離れようと考えたり、他人を陥れようなどとは考えない。こういうふうに人間の性質を考えるのが『人間性善観』、全く反対の性質を持っていると考えるのが『人間性悪観』。

 日本人においては割とほかの民族が流入してきていないことがあって、仲間意識が強くて、『人間性善観』に基づいて生きている人が多い気がする。これも先の大戦までのことらしくて、多くの民は自分たちが騙されたと感じているのか、大戦後には心が荒んで見えるようになってきた。それに、これまで戦争で大きく負けたことがなかったにもかかわらず、今回の負け方がひどすぎたのか、日本古来からの価値の喪失感が酷い。

 そんな、こんな、ことから、田舎のように誰もが顔見知りで、家に鍵を掛けなくても安心していられるような世の中は失われてしまった。倉庫の中に保管してあるとはいえ、気を抜いていてぼんやりしていては、ひどい目に合うかもしれない。出来るだけ目を通すことが必要なので、在庫調べは二重の意味で必要不可欠だと言える。

 今回の在庫調べを社長の姪と、この春に入社した女子社員との二人で始めたらしいけれど、まだ終わってはいない。他の仕事が忙しくなったので途中で止めたのではなくて、どうやら他の理由があったようだ。お母さんが倉庫で働くおじさんから聞きかじったところでは、社長の姪が何を勘違いしたのか、女子社員に当たり散らした結果、在庫調べが停まってしまったようだ。


 おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。

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