四十六夜、叔母さん家の日々 1 蚊帳のお話
今日は、じいじの番です。
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?
「・・・・・・」
そうだねえ、じゃあ、じいじが子供の頃のお話をしようかねえ。
まだ、小学校の頃のことだけれど・・・
一緒に住んでいた祖母が病気になった。その時の病気は何だったのかは忘れてしまったよ。けど、一緒に住んではいられなくて、かといって、一人で暮らしていけるはずもない。
じいじはお母さんの妹(叔母)の家に預けられることになったんだよ。場所はそんなに離れていなくて、隣の隣の町くらいかな。町と言っても、大きな町ではないから、一塊の集落のちょっと大きなもの、程度のものだよ。うーん、また隣の村って言ったほうがいいかな。何しろ、じいじの居た村が小っちゃかったから、それよりは大きかったって言ったほうがいいかもね。後々に合併して、一つになった時、ひとつずつ字になったくらいだから、ほんと、たいしたことなかったよ。
で、その家には二人の子供(従姉弟)がいたよ。じいじは何が何だかわからなかったし、何も考えていなかったから、ホイホイついて行って、預けられてた。
家は農家で、大きな家だったよ。じいちゃん、ばあちゃんがいて、田畑は主にその二人がやってたよ。二人は、別棟の倉庫の二階に暮らしてた。庭には小さな池があって、鯉が泳いでたよ。お風呂とトイレは母屋と別棟の間にあって、食事は主に叔母さんが作って、みんなが一緒に食べてたね。
そんなに長くはいなかったと思うんだけど、よく覚えていないよ。
憶えているのは、夜寝る時に蚊帳をつって、それこそアニメに出てくるブタの蚊取り線香皿を置いてたことかな。蚊帳は家でも使ってたけど、狭い部屋だったから大きなものじゃなかったよ。こちらでは、叔母さんと従姉弟達、それにじいじと布団を四つ敷いて、まだ余裕があるほど大きかったよ。だから蚊帳を吊る時は大騒ぎで、ちょっとしたイベント騒ぎだったよ。布団を敷いて、蚊帳を広げて、四方の角の吊り具を部屋の角の掛け具にかける。それから四辺の吊り具をそれぞれの掛け具にかけて整えると出来上がりだ。
中に入る時はくっついている虫を追うようにバサバサしてからスッと素早く入る。のろのろしてると、蚊が一緒についてはいって、蚊帳の意味がなくなってしまう。蚊以外にも、周りが田んぼだから、いろんな虫が入ってくる。痛いのやら、かゆいのやらいろいろだよ。まだ蚊は蚊取り線香が利くからいいけど、他の虫は堂々と飛び回ってるから気を付けないといけないよ。
寝る時も、寝相が悪くて蚊帳の網にくっついたり、手足を出してたらまず確実に朝には赤く腫れてたよ。そうなると、二、三日は痒くて、掻けば痛くて、芯が硬くて、何時までも痕が残った。
じいじはそれほどでもなかったけど、従姉弟達は寝相が悪く、叔母さんがしょっちゅう布団の上に引っ張り上げていたよ。
殺虫剤も必ずそばに置いてあって、今から思えば、灯油臭かったよ、それで飛んでくる虫を追い払ってたよ。瓶に入ってるものを、太い水鉄砲にタンクのついたような形の噴霧器に入れて、T 字型の取っ手を握って虫に向かってシュッシュって掛けるんだよね。効いてるのか、効いてないのかわからないけど、ないよりはまし? 程度だったと思うよ。
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。
思ったよりも書くことが多いみたいです。書く要領が悪いだけ? ですか。
とりあえず、しばらく続きそうです。よろしくお願いします。




