四百四十一夜、ばあばの洋裁学園生活 154 お母さんの入院 42 快気祝い 4
今日は、ばあばの番です。
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?
「・・・・・・」
そうだねえ、じゃあ、ばあばが子供の頃のお話をしようかねえ。
まだ、洋裁学園の頃のことだけれど・・・
家族用?の小部屋に案内されたばあばたちは、メニューの選択をお母さんに任せて、料理が運ばれてくるのを愉しみに待っていた。
ばあばには料理の名前を聞いたくらいでは、どんな料理なのか、おいしいのか、どんな素材で調理されているのか、味付けはどうなのかなどが、さっぱり分からなかった。
聞いたことがない料理の名前なのだけれど、どんな料理が運ばれてくるのか、お母さんの選択には不安はないものの、期待だけを胸に抱いてじっと待っているのは、かなりの辛抱が強制されたさ。
お母さんに料理の概要を聞いては見たものの、「お愉しみに待ってなさい」ってことで、教えてもらえなかった。メニューには材料や調理方法などが簡単に書き込まれているらしいので、それをこっそり読んでみようって思ったのだけれど、お母さんに取り上げられてしまって、見せてもらえなかった。
これはもう本格的に「お愉しみ、お愉しみ!」ってことになってしまったんだよね。
しばらくして、最初に運ばれてきたのが、竹で編まれた蒸し籠に収まっている小籠包という名前のもので、ふたを開けると湯気が立ち上っていた。それは小さなお饅頭みたいな形で、頭のてっぺんが少し摘まんで捻じってあるようだ、そんな形をしていた。
お母さんは黙ってみんなの取り椀に一つづつ取り分けてくれた。見ているとなんだかぶよぶよしているように見える。ばあばには、今でこそ適切にその形が説明できるよ。ちょうど、白いスライムみたいな形をしているってね。
「熱いから気を付けてね」
お母さんから先に注意を受けていたにもかかわらず、お父さんとばあばは、口の中をやけどしそうになる。一瞬慌てたけれど、その後はちゃんと味わうことが出来たよ。
白いスライムの中にはたっぷりとスープが詰まっていた。何とも言えず美味しかったさ。お母さんにはよくわかっていたらしくて、取り皿を使わずに取り椀にしてくれていたから、お父さんもばあばも取り落とさずに済んでいた。お皿だったら危なかったかもしれない。
熱さにびっくりしたことや、とってもおいしかったことなどをお父さんも、ばあばもお母さんに話していた。お母さんは、ふふふって小さく笑っていたさ。次は何が来るのだろうかな、楽しみだ。
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。




