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三十八夜、ゴム版画と三日月型の木漏れ陽

今日は、じいじの番です。

 眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?

 「・・・・・・」

 そうだねえ、じゃあ、じいじが子供の頃のお話をしようかねえ。


 まだ、小学校の頃のことだけれど・・・

 じいじは成績が良くなかったよ。全く自覚がなかったんだけど、たぶん、いろいろな行事や、クラスのイベントへの態度が消極的だったのかもしれない。友達も、とくに親しい人はいなくて、誘われれば参加するけど、自分から何かをしようとしてなかったかもしれない。自分では普通にしてたつもりでも、周りから見ればどんな風に目に映っていたのだろうね。

 ある日、図画・工作の時間に、ゴムの板に彫刻刀で版画を彫ることになったんだ。

 じいじはシャボン玉を空に飛ばしてるところを彫ったんだよ。下絵から始まり、裏返しに張り付けて、乾いたら彫刻刀で彫って、その頃は、ガリ版用のインクで和紙に絵を写し取っていたよ。何も考えずにそのまま先生に提出してそれで授業は終わった。

 あとで、その版画に賞状がもらえたんだよ。佳作だったか、入賞だったか、とにかく記念品なしの普通の賞状だけだったけどね。それからだよ、多少、図画・工作に自信がついて、好きになったのは。

 それからしばらく経った日の、やはり図画・工作の時間だったよ。その日はそとで小学校周辺の水彩画を描くことになって、みんなで校庭に散らばってスケッチをしてた。

 ふと気が付くと、空は青空なんだけど、ちょっとだけ太陽が雲に隠れたように陽が陰った。

 じいじは学校の横の記念碑がある小さな公園にいたんだ。木々の間にいて、ちょうど木陰で、木漏れ陽がチラチラしてた。じいじの画板の画用紙の上に落ちてる木漏れ陽が三日月になってるのに気が付いたんだよ。周りを見回してみると、地面に映る木漏れ陽が全部三日月になっていた。

 周りでは気が付いているのはじいじだけみたいだったけど。先生も、何も言わなくて、誰も何も言わないので、黙っていた。きっと気が付いている人もいたのだろうけど、知らないふりをしていたんだろうかね。

 あとで聞いたのだけど、それは日蝕っていうんだって。

 たぶんだけど、日蝕って言っても直接太陽を見てしまうと失明してしまうこともあるらしくて、先生たちが教えるのを止めていたのかな。ロウソクの煤をガラスにつけた煤ガラスを通してみても危ないらしくて、万一目に障害が出ると困るので黙っていたのかもしれない。

 それとも、実はみんな知ってて、知らなかったのはじいじ一人だけだった? 注意、説明を聞き逃してたのだろうかね。それとも、聞いていたけど、ボーっとしてて忘れてた?

 どっちにしても、じいじの小学校はそんな感じで過ぎていったわけさ。

 おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。

 

 

 

日蝕の時には、木漏れ陽さえも三日月型だったんですね。金環蝕の時はどんな木漏れ陽になるのかな。皆既日蝕は?

はー、コロナゆらゆらな木漏れ陽なんて、絶対見てみたいよ―――! なるのかな?

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