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三十六夜、台風の思い出

今日はじいじの番です。

 眠れないのかそれは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?

 「・・・・・・」

 そうだねえ、じゃあ、じいじが子供の頃のお話をしようかねえ。


 まだ、小学校の頃のことだけれど・・・

 じいじはこの時期になると気になることがあるんだよ。遠い遠い南の海の上で雲が固まって、台風の子供ができるのが気になって、気になって仕方がないんだよ。

 以前は南の海の上のことは全く分からなかった。大きな台風でもかなり日本にちかずかないとどこに上陸しそうなのかわからなかったからね。大昔は台風が上陸して被害が出て初めてここに台風がいるんだってわかったくらいだったみたいだよ。海で魚を捕るお仕事をしている人たちはそれでも、波が強くなってきたり、雲の流れが速くなってきたりすることでもう少し早く気が付いたみたいだけれど。

 じいじの住んでいる村にも大きな台風が来たことがあってね、それはそれは大変なことになったよ。

 それまではどうということもない毎日だったけど、ニ、三日暑い日が続いてムシムシして、せっかく夏が過ぎてようやく涼しくなってきたのに、って近所の人たちは挨拶してたよ。そのうち雲が出てきて、風が強くなってきた。

 それでおかしいってことになって、近所のラジオがある家に行ってニュースを聞いて、どうやらこっちに台風が来るらしいこと、かなり大きいことなどが解ったんだよ。それから慌てて雨戸を閉めたり外から板を打ち付けたり、外に置いてあった洗濯たらいや物干し竿、飛ばされては困るものなんかをかたずけ始めたんだよ。

 そうこうしているうちに、風がますます強くなってきて、家がギシギシ言い始めた。うちはおばあさんとじいじの二人だけだったから、これ以上どうすることもできないので、もしも家が倒れた時のため?に、布団をありったけ出して、部屋の真ん中に並べて積んでその間に二人して抱き合って座ってたよ。

 外はゴウゴウ風が吹いていて、家はギシギシ音を立てている。そのうち、座ってる床の畳がフワッ、フワッて浮き出して、屋根もなんだか家ごと持ち上げられてるようなことになってきたよ。怖いも何も、何が起きているのかわからなかった。

 おばあさんが、これはダメだから隣に逃げようって言って、二人して道向かいの大きな家に逃げ出したんだよ。その家でも、家はギシギシ言って、電球がゆらゆら揺れ続けていたよ。もちろん、電気は停電してたので、ローソクの光だけしか灯りはなかったから、部屋にいるみんなの顔も、ぼんやり見えるだけ。

 じいじはおばあさんに抱っこされてたけどいつの間にか眠っていたよ。目が覚めたのは、翌日のお昼近くだったかな。

 家に帰ってみると玄関の引き戸のガラスが割れてた。ほかはじいじの気が付いた限りは被害がなかったようだったよ。じいじの家は裏が夏ミカン畑で、生垣にカラタチの木が取り囲んでいたから、多少は風が弱くなったのかもしれない。

 学校も泥水が入り、ちょっと離れた町には海の堤防を越えて海水がはいったって聞いたよ。

 後から聞いた話だけど、この台風が伊勢湾台風だったんだよ、たくさん人が亡くなった。

 おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。

今は、台風が発生した瞬間に、どこら辺に来るのか、どのくらいの被害が出そうか、わかってしまいます。これはすごい事のようですね。日本に来てしまうのは仕方のない事なんでしょうが、被害、ないといいですね。

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